静かな劇場 

人が生きる意味を問う。コアな客層に向けた人生劇場。

そらごとたわごと真実あることなし

2012-07-16 12:17:22 | Weblog
親鸞聖人はこのように仰っています。

「煩悩具足の凡夫・火宅無常の世界は、
万のこと皆もってそらごと・たわごと・
真実あることなきに、ただ念仏のみぞ
まことにておわします」(歎異抄)

火宅のような不安な世界に住む、煩悩
にまみれた人間のすべては、そらごと、
たわごとばかりで、真実は一つもない。
ただ弥陀より賜った念仏のみが、まこ
とである。


そらごと・たわごと・真実あることなしの
【煩悩具足の凡夫】が、
そらごと・たわごと・真実あることなしの
【火宅無常の世界】を生きている。
これがこの世の真相だから、

「何のために生きるのか」
「死んだらどうなるか」

こうした、万人とって、最も肝心のことさえも、
誰一人、本当のことが分からない。

分からなくても、人はそれぞれ人生の難度海を
渡っていかねばならない。それは行く先知れぬ
不安な旅路である。

やがては、この難度海の藻屑と消えていく定め
なのだが、その間、頼もしそうな丸太や板切れが
見つかれば、一生懸命すがりつく。
溺れる者には、それが最も逼迫した大事と思え
ても無理はない。

丸太というのは、名門大学という肩書きや学業
成績、専門知識、一流企業というステイタスや、
仕事の業績、社内の評価や地位、
また個人的には、家庭や財産、健康といったもの
を指しての事だ。

こういう丸太や板切れにつかまって、難度の海を、
どうにかこうにか、死ぬまでの日々をしのいでいる
のが私たちである。

だが一切は、聖人の仰るとおり、
「そらごと・たわごと・真実あることなき」世界の
砂上の楼閣であり、やがては覚める幻想である。

ただ、こうした夢幻の現実世界に、
「ひとつだけ間違いなく言えることがあります」
というものがあるとすれば、このことであろう。

それは、
「死」という現実であり、100パーセント確実に
直面する「後生」の問題である。

科学や哲学といえど、「真実あることなき」
凡夫が築いた学問である以上、生きる目的も、
後生も不問にせざるをえない。

だからこそ、親鸞聖人の仰られるとおり、
「念仏のみぞまこと」
つまり、
弥陀の誓願という、難度の海を明るく楽しく渡して
くださる大船がありますよ!だから早く乗せていただき
ましょう!と言っているのだが、

こう言うと、
「恋人ですら、相手の人生の目的とかなぜ生きるか
といった話には立ち入れない」
と思っている人たちからは、
「本当の目的を教えてやろうと出しゃばること
なんて許されることではない」
と、大変な〃お叱り〃を受ける羽目になる。

宮台真司氏に至っては、
「バカヤロー、てめえよりは答えをいっぱい知ってるよ」
なんだそうであるが、
「答えがいっぱいある」ということは、そのどれもが
丸太や板切れ、つまり「そらごと・たわごと」なのでは
なかろうか?

いずれにせよ、皆、煩悩具足の凡夫の言うことだから、
さるべき業縁がくれば、どんなことでも言うであろうし、
何を言われようとまた、別段、驚くことでもない。

ただ、
あちらの人は、「個人の尊厳」という言葉が大好き
らしく、何回も何回も強調していた。
さて、
「煩悩具足の凡夫」の尊厳とは、何を指してのこと
なのだろう?

言葉を変えれば、

欲も多く、瞋り腹立ち、そねみねたむ心多くひまなくして、
臨終の一念に至るまでとどまらずきえずたえない「凡夫の
尊厳」である。

「個人の尊厳」が大好きなのは分かったが、それこそ
煩悩具足の凡夫の考えた「そらごとたわごと」ではなか
ろうか。煩悩自体に尊厳などあろうはずがないからだ。

だが、
そんな「そらごと・たわごと」を言っている人たちにも、
必ずそれが「そらごとたわごと」と明らかに知らされ、
大船に乗託させられる日が来るのである。

そうなさしめる弥陀の本願力の尊厳こそ、讃嘆してもらい
たいもので、煩悩の塊など讃嘆しなくてもよかろう。
一般の人が相手なら、ここまで言う必要も感じないが
真宗の坊主なら、それくらい知っておいてもらいたいもの
である。


親鸞聖人は、〃個人の尊厳〃に踏み込んではならない
から、信じたい人にだけ、聞かせればいいとは
仰っておられない。

「如来二種の廻向を 十方にひとしくひろむべし」
「道俗時衆共同心 唯可信斯高僧説」
「聞思して遅慮することなかれ」 

「全世界にひとしく広めなさい」
「すべての人よ信じなさい」
「遅慮してはなりませんよ」
と、相当〃踏み込んで〃仰っておられる。


もちろん、だからと言って、相手の都合おかまいなし、
を推奨するものではありません。念のため。

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