goo blog サービス終了のお知らせ 

高齢者になっても、ヒマ・ひま・暇やはり暇

高齢者「さいら」ブログ。リタイヤーから、晴れて高齢者の仲間入り。店名をマイナーチェンジ。内容は以前と同様雑他。

紀伊忍冬酒

2006年10月12日 | 本と音楽の話題
紀伊忍冬酒(2006年10月12日)
 和歌山社会経済研究所の機関誌に載されていた「紀伊忍冬酒」を紹介しよう。正式な表題は「海内無双の紀伊忍冬酒」。最後に「酒」と有るので、その「酒」に惹かれて読んでみた。
 表題の理解できるところから見てみる。「酒」は前述の通り。勿論「紀伊」は現在の和歌山方面の地名。直ちに理解出来たのはこの二つの単語だけ。情けない。恥ずかしいが「海内無双」という言葉は知らなかった。ネットで調べると「天下にならぶものがない」と言う意味である。読み方は「かいだい むそう」。と言うことからして、筆者は相当なご年配かそれとも麻雀の愛好家と想像もしたのであるが、そうでも無さそう。もう一つ意味不明が「忍冬」。これは「スイカズラ」のことだそうだ。読み方は「にんどう」と読む。どうも、昔の人は「かいだい」と言い、「にんどう」と言い、濁音が好きのかなあと有らぬ方向に考えが飛んでしまう。「忍冬」を「スイカズラ」と置き換えると何となく分かった様に思うのが不思議と言えば不思議である。
実は何も分かっていないのである。
 このお酒は紀伊国名所図会にその美味しさが載っているとのこと。「其味辛甘相半して、能く々ゝ胸間をすかせり。薩州の泡盛に比するに、香気一段の風味をまし、いとも佳品なり。」と。徳川御三家の紀伊に対するお世辞かも知れないが、当時、好事家にとっては紀伊国生まれの有名な「美酒」であることは間違い無さそう。さてさて、どんな酒なのであろうか?気になるところである。

 このお酒の詳細は下のHPを見て貰うこととして、一体全体どの様な酒であるのか簡単に触れておこう。著者は実際に文献を開き、酒造会社などで聞き、スイカズラを採集し、試験的にこの忍冬酒らしきものを造った。焼酎に「スイカズラ」他諸々の計11種類の「薬草」の浸出液を入れて、熟成したもの。一読後「さいら」流に言えば「薬用酒」のイメージである。使用する薬草は殆ど漢方薬局で入手可能とか。11種類もの薬草を入れると、何となく相乗効果がありそうだ。ここまでなら、入れるものは違うが、梅酒とかの「果実酒」と同じ様な作り方である。完成品は読んだところその味は「薬用酒」のような感じがしないでもない。
 第一のポイントはその名前から分かる通り「スイカズラ」を中心とした多種類の薬草を使うことである。言い忘れたが、ポイントは使用する焼酎にもあるという。アルコール度数が高い「米焼酎」。これが大切とか。名声を博した理由はこの「米焼酎」にあると筆者は考えている。これが第二のポイントである。そこへ、蒸した「うるち米」とその一部分に「麹」を混ぜたものを入れて概ね2ヶ月間漬け込む。それを濾過して出来上がりである。うるち米と麹を使うところが工程上のポイントのようだ。
 蒸したうるち米と麹を使うことから焼酎のアルコール濃度を更に上げるのかと思ったが、それだけではアルコール発酵はしないそうである。このプロセスは「味醂」の工程だそうだ。と言うことはキット「甘露」であろう。しかし、使用する薬草からは何となく「苦甘い」と連想してしまう。
 ところが、実はこの工程の「酒類に米や米麹を混和することは酒類の製造と見なされ」酒税法違反になるそうである。そこで筆者は家庭用として、「みりん風調味料」、それも業務用として売っている「粉末」が適しているとしている。更に簡便法として「氷砂糖」でも良いが、それは氷砂糖宜しく尖った味だそうだ。
 その歴史と既に紀州では製造されていない状況等にも触れられている。「○○忍冬酒」は他の地域で名産として売られているが紀伊忍冬酒は今となっては知る人は殆ど居ないし、生産方法も確かなところは門外不出のために残っていない「幻のお酒」である。
 社会経済研究所は社会調査とデスクワークがベースと思っていたが、実際にその工程を苦労して実地に(試験的・家庭用ではあるが)復元して造っていることに驚くと共に、このような実戦的な手法はこれからのシンクタンクの生き方があるのかも知れないと思ってしまう。それと同時に、和歌山の産業の地盤沈下が言われる今日、過去の名品を発掘していく上でのこの筆者の手法は、この事例だけでなく、何とか地場産業振興への手立ての一つになればと言う願いがヒシヒシと感じられる。

記事のデータ:
雑誌名:21世紀 わかやま vol.48
    (http://www.wsk.or.jp/book/index-21.html)
記事名:海内無双の紀伊忍冬酒
    (http://www.wsk.or.jp/work/d/kamei/04.html)
著者:亀位 匡宏
発行所:和歌山社会経済研究所
    (http://www.wsk.or.jp/index.html)
発行年月日:2006年3月30日


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

サービス終了に伴い、10月1日にコメント投稿機能を終了させていただく予定です。
ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。