ヒマローグ

毎日の新聞記事からわが国の教育にまつわる思いを綴る。

文学で人間を知る

2024-05-06 08:14:35 | 我が国の教育行政と学校の抱える問題

「人間観」4月27日
 読者投稿欄に、岡山県M氏の『「もうけ話」には乗りません』と題する投稿が掲載されていました。75歳のM氏はその中で、『私は「人間は欲深い。もうけ話は他人には教えないもの」との強い思いがあります。勧誘の話は一応聞きますが、金銭絡みになると懇意にしている人でも乗りません』と書かれています。
 全く同感です。かつては、特に疑い深いとか人間不信だとかいうのではなく、これが「常識」だったのです。この「常識」の大本には、シビアな人間観があります。人生観があります。こうした人間観や人生観は、生きる知恵として、学校ではなく、家庭や地域での体験を通して身に着けるものだったのです。
 今、学校では、金融教育や情報教育が行われています。私やM氏は、そんな教育を一切受けてこなかったにもかかわらず、うまい話には眉に唾を付けて聞くという習慣を身に着けているお陰で、詐欺やトラブルを回避します。一方、金融教育を受けた若者が、「絶対もうかる投資術」にころりと騙され、情報操作の恐ろしさを学んでいるはずなのに夢物語のような陰謀論にはまってしまうのです。
 成人年齢が18歳からになり、高校生も保護者の同意なく契約を結ぶことができるようになったことを受けて、解約の手続きやクーリングオフ制度などについて学ぶ消費者教育の必要性が叫ばれていますが、そうした○○教育よりも、M氏が言う「人間は欲深い。もうけ話は他人には教えないもの」という人間観を身に付けさせることこそ、被害を防ぐ効果が高いように思えるのです。
 要は、人間とは、人生とは、という物事の根本について学ばせるということです。ところが学校教育には、分かりやすい善人と悪人は登場しますが、普通の人の中にある「悪」については影が薄いという傾向があります。道徳でも、国語の教材でも、あるいは歴史に登場する人物でも、です。
 普通の人に潜む身勝手や残忍さ、狡猾さや自己保身、そんなものをじっくりと味わうことができる文学作品に読み浸る時間に、金融教育や消費者教育、情報教育の一部を割いてみてはどうでしょうか。

 

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