ヒマローグ

毎日の新聞記事からわが国の教育にまつわる思いを綴る。

実績をあげた人にこそ

2024-03-27 08:34:45 | 我が国の教育行政と学校の抱える問題

「学歴過信」3月20日
 『院卒教員 奨学金返還免除 不足解消へ文科省方針』という見出しの記事が掲載されました。『教員確保策を議論している中央教育審議会の教員養成部会は19日、教職に就いた大学院修了者について、奨学金の返還を免除するよう求める案をまとめた』ことを報じる記事です。
 『免除を呼び水に、高い専門知識を持つ大学院生により多く教職に就いてもらうことで、教員不足の解消とともに質の向上につなげる』狙いだそうです。相変わらずだな、というため息が出そうです。
 記事では、『不登校の生徒が急増したり、授業でデジタル端末の活用が広がったりと、多様化する学校現場の課題に対応できる教員の確保も求められている』とあり、文科省がこうしたことについての「専門知識」を大学院生に期待していることが窺われます。的外れだと思います。
 奨学金の返還免除には反対しません。しかし、教員不足の解消を目的とするのであれば、院卒にこだわることなく全ての教員採用者に適応した方が効果があるのは自明の理です。ですから、院卒者にこだわるのは、大学院で学ぶことで「高い専門知識」が得られるという思い込みがあるからだと思われます。
 ここでいう「高い専門知識」とは、どのような学問・分野の知識でもよいわけではなく、教員として有意な知識を指すことは論理的に当然です。そうであるならば、全ての院卒者ではなく、具体的に児童心理学とか、教科教育学とか、教育工学などといった分野を指定するべきでしょう。
 さらに、不登校への対応は、不登校についての知識があれば適切に行えるというような単純なものではありません。子供は文献に書かれているような存在ではありません。一人一人が異なる個性をもち、その何十通りもの個性が複雑に化学反応を起こして、学級内の人間関係が生まれるのです。それを把握し臨機応変に対応するためには、知識だけでなく経験が必要になります。私が拙著で「教員の仕事は職人芸」といったのはそういう意味なのです。
 ですから、大学院で学んだ者が教員として「質」が高いというのはあまりにも学歴偏重な偏った見方です。もし、奨学金の返還免除を呼び水にしたいと考えるならば、教員になってから5年間の業績評価が一定以上の者について免除を申請可能とするというようなシステムにすべきです。
 私は教委勤務時代に「指導力不足教員研修」を担当していましたが、その中にはいわゆる有名大学卒の「高学歴者」や、高い英会話能力資格をもっている者や企業でデジタル端末を日常的に活用する部署に勤務していた者がいました。学級経営も授業も生活指導もできない人たちでしたが。
 院卒に奨学金免除は愚策です。

 

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