ヒマローグ

毎日の新聞記事からわが国の教育にまつわる思いを綴る。

不確か、自己本位、身内受け、矮小化

2017-04-22 07:53:16 | 我が国の教育行政と学校の抱える問題

「失敗した危機対応」4月14日
 『ユナイテッド航空を提訴検討』という見出しの記事が掲載されました。同航空が定員オーバーを理由に座席を譲るように求めた乗客に断られ、強制的に引きずり下ろし怪我をさせた事件について報じる記事です。
 記事によると、同航空オスカー・ムニョスCEOに対し辞任を求める声が高まっているそうです。その理由として、『乗客について、同氏は従業員に宛てたメールで「混乱を起こし、けんか腰だった」と中傷した』『同氏の「乗客を振り替えなければならなかったことを謝罪する」という当初のコメントが「謝罪に当たらない」などと批判』が上げられています。
 危機対応における典型的なミスです。同氏の発信はいずれも事件直後に行われています。素早い対応だったといえるかもしれません。しかし、初期対応におけるミスの典型例なのです。
 まず、事実関係を複数のルートで正確に把握する前に発信してしまったことです。被害者が、尾骨骨折、脳しんとう、前歯2本欠損という怪我をしていることを十分に認識していなかったとしか思えません。
 次に、自己本位の視点での判断です。組織の長として最低限必要なのは、常に被害者側、世間の目で事件を見つめる習慣をもつことです。通路を引きずられ、血を流して叫ぶ被害者の映像を見た人々がどのような反応をするか、メディアはどのように報じるか、ネット社会において映像がどのようなスピードで拡散するか、想像した上で発信しなければなりません。
 また、「身内受け」も陥りやすい落とし穴です。組織を率いていくためには、組織の成員の支持が欠かせません。しかしそのことにばかり目が向いてしまうと、成員に阿り、「君らは悪くなかった」といってしまうようになるのです。それが乗客側に原因があるかのようなメールになってしまったのでしょう。
 さらに、矮小化への誘惑という問題が生じます。つまりどう言い繕っても、自分たちの非を認めざるを得ない状況の中で、できるだけ事件を小さく見せ、責任を軽くしたくなるという心理です。そこで、職員による暴行で怪我をさせるという重大事故ではなく、オーバーブッキングと振り替えという瑣事について謝罪するという過ちを犯してしまったのです。
 ムニョス氏は、前任者が不祥事の責任を取って辞任した後、他社から引き抜かれてCEOに就いた方のようです。つまり、本来ならば危機対応にも優れた手腕をお持ちだったはずです。それでもこうしたミスを起こし、傷口を広げてしまったのです。
 私が接してきた多くの校長たちは、そのほとんどがメディアへの対応を求められるような事件を経験していませんでした。校長会の主要ポストを占め、学校経営に自信をもっていて、実際に成果も上げていた校長が、事件への対応で、我を忘れオロオロとしてしまう姿を何回か目にしてきました。校長職にある方々には、今回の事件を自らを省みるよい契機にしてほしいと思います。

 

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