ヒマローグ

毎日の新聞記事からわが国の教育にまつわる思いを綴る。

「勝手にイメージ語」

2021-12-01 07:50:04 | 我が国の教育行政と学校の抱える問題

「勝手に想像」11月26日
 『道具は人生のパートナー』という見出しの記事が掲載されました。『民藝の100年』展開催に合わせた料理研究家土井善晴氏へのインタビュー記事です。その中に掲載された写真に添えられたコメントが気になりました。『土鍋で炊いたご飯をおひつに移すと、湯気が辺りに広がった』というものです。
 私はご飯好きです。美味しそうですね。一口頬張り、噛み締めたときの甘味や感触が浮かぶようです。しかし、よく考えてみると、私の頭に浮かんだイメージは勝手な妄想に過ぎないことが分かります。
 普通の炊飯ジャーで炊いたご飯だって、おひつにうつすとき、湯気は広がります。それどころか、冷凍庫で保存しておいた冷や飯をレンジでチンしたご飯でも、やはり湯気は広がります。でも、あまり美味しそうではありません。
 さらに、木の香漂うおひつに移すのではなく、プラスチック製のタッパーに移すときにだって湯気は広がるのです。レンジでチンしたご飯の余りをまたタッパーに、少しも美味しそうではありません。
 私の脳は、土鍋とおひつに反応し、勝手においしいという信号を発したのです。土鍋で炊いても失敗することはあるでしょうし、そのときも湯気は出るのに。私だけでなく、人間の脳は、あるキーワードから勝手にイメージを作り上げる癖があるようです。それは仕方がないことですが、注意も必要です。
 学校の研究報告書や教員の研究紀要などでしばしば目にするのが、こうした「勝手にイメージ語」です。「次々と手を挙げ発言を求める子供たち」、子供の知的好奇心を刺激し内発的動機付けが有効に機能した活気ある学習が展開されているような印象を受けます。
 しかし、実際には「友達の意見に賛成か反対か自分の考えが決まったらきちんと言おう」とされた学級のルールに基づく行動で、指名されると「○○さんの意見に賛成です」という言葉がオウムのように繰り返されるだけ、というケースもあります。
 また、「学習問題が決まると、子供たちは一斉にそれあおれの計画に従って調べ活動を始めた」、これは自ら学ぶ力が定着しているような印象を与えますが、実際には、「まず、意味の分からない言葉は辞書で調べる」という約束事に従って、国語辞典を開き、難しい言葉に線を引いて意味を書き込むということを繰り返しているだけ。その活動が一段落すると、次に何をすればよいか途方に暮れてしまう子供がいるという状況であったということもありました。
 脳が勝手にイメージをしてしまうのは仕方がありません。でも、それを悪用して研究成果を偽って見せるという行為は慎まなければなりません。

 

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