ヒマローグ

毎日の新聞記事からわが国の教育にまつわる思いを綴る。

善かれと思ってしたことが

2024-05-09 08:38:29 | 我が国の教育行政と学校の抱える問題

「家庭だけの話?」5月1日
 『長時間スマホ 家庭学習が水の泡』という見出しの記事が掲載されました。『スマートフォンやタブレット端末を長時間使う子どもは、家庭学習をいくら頑張っても学力が伸び悩む』という研究結果を報じる記事です。
 かなり衝撃的な内容です。記事によると、『人が何かを学んだり創造したりしているとき、脳内では「思考の脳」と呼ばれる「背外側前頭前野」が働くことが知られている(略)デジタル機器の小さい画面で映像や画像を見ると、この背外側前頭前野の活動が抑制される』『特に動画を見ているときは一点を見つめ、ぼうっとしているときよりも背外側前頭前野の活動が抑えられる』ということだそうです。
 そして細かなデータを示した後に、『スマホ・タブレットの長時間使用は、学力の伸び悩みの直接的な原因になっている』と断じているのです。ここで当然のことながら一つの疑問が浮かびます。学習目的での使用はどうなのか、と。それについても記事では、『使用時間が長くなると偏差値が下がる傾向が見られた。しかも、使用時間が2時間以上になると、家庭学習を3時間以上していても全体の平均に届かなかった』と弊害を指摘しています。
 さらに、『スマホ・タブレットを使ったインターネット接続を習慣化させると、脳の一部の発達が止まってしまうという衝撃的なことも判明した』という記述もありました。私は古いタイプの人間ですから、何となくスマホ・タブレットの「過剰」使用には違和感を覚えていましたが、そんな私でもこの記事の内容にはショックを受けました。と同時に、まさかそこまでひどくはないだろう、と記事の内容を疑いたくなってしまいました。
 それはともかく、この記事を読んで疑問に感じたことがあります。一つはこうした研究結果が、文科省をはじめとする学校関係者に周知されているのか、ということです。万が一、周知が不完全だとしたら、子供に良かれと思ってタブレット端末を使った学習を推進してきたことが、子供の不利益になっているということになりかねません。税金の使い道としても問題ですし、子供の将来にとって取り返しのつかないことになってしまいます。
 次に疑問に感じたのは、記事の中に家庭で~、家庭学習で~という記述が再三出てきますが、学校の授業における使用についての記述がないことです。毎日タブレット端末を使った授業を3時間行っている学校と1時間以下の学校とでは差が生じるのか、といった実験はなされていないようなのです。生物としての人間にとって、タブレット端末を見つめる場所が教室であろうが自宅であろうが変わりはないはず、というのが素人の考えですが、そうした記述はありません。まさか文科省に遠慮したわけではないと思いますが。
 さらに、記事には「映像や画像を見るをみると~」とありますが、その他の使い方の場合の影響については記述がないのです。私は、ほぼ毎日、このブログの原稿をノートパソコンを使って書いています。その間、画面を見つめています。悪影響はないのでしょうか。あるいは、画面上の文章や表・グラフ、年表や系図などを読むという行為に場合はどうなのでしょうか。そうした点が明らかであれば、授業での使い方を工夫することができると思います。
 そして使い方の問題として、時間の長さが問題なのか、連続ということが問題なのか、ということも明確にしてほしいと思いました。毎日連続して2時間使う子供と、10分間使ってはノートにメモし、また10分間使っては、紙に書かれた別の資料を読むというような使い方で合計2時間使っている子供とで差が生じるのか否か、ということです。こうした使い方の問題が明らかになれば、学校における授業における使用法を工夫することができるようになるはずです。
 最後に、研究の対象が「子供」となっていますが、子供だけの問題なのかが不明な点です。小中学生のデータ分析からの結論のようですが、高校生の場合は、大学生は、成人は、さらには高齢者にとっては、とより幅広い調査研究が必要ではないかと感じます。文科省は対象を広げて研究が行えるよう支援を強化してほしいものです。
 あとあまりにも幼稚な疑問で恥ずかしいのですが、画面が小さいことが問題なのかということも気になりました。B4版の大画面なら上記のような弊害はない、なんてことはないのでしょうか。

 

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