ヒマローグ

毎日の新聞記事からわが国の教育にまつわる思いを綴る。

1000件でも成果ありなんだけど

2021-10-07 08:16:27 | 我が国の教育行政と学校の抱える問題

「意味ある?」10月2日
 『ジェンダー政策 共産争点化狙う 衆院選公約』という見出しの記事が掲載されました。共産党が、『次期衆院選で政権公約に掲げるジェンダー政策を発表した』ことを報じる記事です。その中にある、『女性に対するあらゆる暴力の根絶と「痴漢ゼロ」も訴えた』という記述が気になりました。
 「痴漢ゼロ」、もちろんとても良いことです。痴漢も少しくらいはいた方がいいんじゃないのなどと反対する人はいないでしょう。もちろん私も賛成です。でも、これが公約という形で打ち出されることには強い違和感を覚えます。
 理由はいくつかあります。まず、絶対に実現不可能であるということです。痴漢の漢は男性を表す漢字ですから、加害者は男性、それも女性を性的関心の対象とする年齢層、15歳から70歳としてみても、5000万人近い「痴漢予備軍」がいることになります。日本では一つの政権が続くのは平均して長くても3年ですから1000日以上、その間電車やバスによる通勤・通学は土日を除いても1500回以上、その全てを痴漢実行可能機会と考えると750億回、その全てにおいて1件の痴漢事件も起こさないなど、神様でもない限り不可能なことは子供でも分かることです。
 次に、どうやってゼロにするかという方法が語られていないことです。全ての男性に手錠をつけさせて乗車させるわけにもいかないでしょうし、一車両に十数人の警察官を配置して監視させるわけにもいきません。すべての電車・バスを全時間男女別とするという方策は、技術的には実現可能かもしれませんが、その負の影響を考慮すると実際には実行できないでしょう。方策を示さず夢物語のような目標だけを掲げるというのはあまりにも無責任です。
 なぜ、こんなことをグダグダと書いているかというと、この「痴漢ゼロ」が、学校に「いじめゼロ」に似ていると思ったからです。いじめをゼロにすることは不可能です。人は集団をつくれば、その中でいじめを繰り返してきたのです。それは、大人か子供かということにも、人種にも、国にも関係なく事実なのです。ですから、できることはいじめの件数を減らすこと、自殺などにつながるいじめの深刻化を防ぐことなのであり、そうした対策にこそ本腰を入れて取り組むべきなのです。
 もし、共産党に限らず公党が「痴漢1000件」という公約を打ち出したとしたら、痴漢を認めるのか、痴漢被害に苦しみPTSDになっている女性の痛みを理解しているのか、という批判が起きるでしょう。私も心情的には分かります。しかし、出来ないことが明白な理想を掲げてお終いではなく、実現可能な数値目標を示し、一定期間後に達成度を検証していくシステムの方が実は望ましいものであると考えるからです。

 

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