ヒマローグ

毎日の新聞記事からわが国の教育にまつわる思いを綴る。

誰の一言が決めたのか

2017-08-06 08:09:25 | 我が国の教育行政と学校の抱える問題

「誰が何を発言したか」7月30日
 『父「隠蔽に利用された」』という見出しの記事が掲載されました。記事によると、『取手市立中3年だった中島菜保子さんの自殺を巡り、同市教委が発生当初、自殺の事実を伏せる方針を決め、その方針に基づき調査などを行っていた』ことが明らかになったということです。以前も報じられた内容です。
 今回私が注目したのは、記事の以下の記述です。『自殺を受け同日夜に開いた市教委の臨時会合の議事録によると、ある委員が「突然の思いがけない死、ということを生徒に伝えて、これだけでも十分自殺だと分かってしまう。うわさなどでも分かる」と発言していた』。
 この委員とは誰なのでしょうか。教委の教育委員は、通常5名です。その中の1名は、事務局の長である教育長です。自殺事件当時(2015年)は、まだ教育行政の権限を首長に与える教委改革が行われる前でしたから、教委のトップは教育委員長です。でも実際には、教育長が大きな力をもっているのが普通です。
 教育長は常勤であり、事務局の職員の直接の上司です。職員から、様々な情報が上がってきますし、市長とも日常的に報告・連絡・相談を行い、命令も受けます。さらに、市民の代表である議員と接触する機会も多いです。そして、学校管理職である校長や副校長、教員の人事権をもっているのも教育長です。
 取手市教委の状況は分かりません。しかし、一般論で言えば、臨時教育委員会の開催も、事務局から報告を受けた教育長が教育委員長に「指示」して、招集させたというのが実態でしょう。自殺事件についての情報は教育長が独占し、学校の状況、今後考えられる幾通りかのシミュレーションも、教育長の独壇場です。おそらく、委員会の前に、教育長は教育部長や指導課長といった部下と今後の方針について入念な打ち合わせをしているはずですし、市長から「政治的な思惑」を告げられている可能性もあります。
 それに対し他の委員は、急に呼び出され、時間をかけずに結論を出すことを求められるのです。こうした緊急事態発生のケースでは、多くの場合、教育長が状況説明、他の委員から2,3の質問、その後今後の方針について専門家であり学校をよく知る事務局の見解が求められ、若干の疑問を残しつつも、他の委員が事務局方針に賛同して正式決定という経過をたどるのが普通です。
 つまり、記事では市教委が隠蔽というような表現になっていますが、実際には誰か一人の意見で決まってしまっている可能性を無視できないのです。だからこそ、「自殺だと分かってしまう」とm自殺を公表することに消極的な発言をした人物が誰であったのか知りたいと思うのです。
 教委改革は、いじめ自殺問題に対する教委の対応の鈍さが、そもそもの発端でした。教委改革が適切なのか否かを見直すためにも、この取手市のケースを徹底的に調べ、市長→教育長→他の委員という流れがなかったのかどうかを明らかにする必要があります。もしそうした流れが確認できたり、あるいは今流行の「忖度」があったとしたら、教委改革に疑問符が付くことになるはずです。

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