ヒマローグ

毎日の新聞記事からわが国の教育にまつわる思いを綴る。

よかった、よかった、では済まない

2017-01-15 08:20:16 | 我が国の教育行政と学校の抱える問題

「よかった、よかった?」1月6日
 『放課後デイ 運営厳格化 厚労省 職員に障害児支援経験』という見出しの記事が掲載されました。ちなみに放課後デイとは、『学童保育を利用しづらい障害児を支援する居場所』のことです。
 記事によると、『テレビを見せるだけでほとんどケアをしない』『実務経験のない大学生のアルバイトに任せる』などサービスの質の低さが問題になっており、『今後は、社会福祉士の資格などが求められる「児童指導員」や保育士、障害福祉経験者の配置を条件とし、職員の半数以上を児童指導員か保育士とする基準も設ける』『支援計画を作る「児童発達支援管理責任者」も~(略)~障害児・者や児童分野での3年以上の経験を必要とするよう改める』という厳格化が進められるそうです。
 ケアの質の向上、大賛成です。障害児という人に接する仕事ではハード面だけでなく、スタッフの能力が重要になります。私がこのブログで再三再四使ってきた言葉、「教育は人にあり」に通じる考え方です。
 とはいえ、今回の厳格化については、私自身の経験から、いくつかの懸念があります。それは、実現可能性の問題と、制度作ってお終い問題です。私が教委に勤務していたときに、スクールカウンセラー(SC)配置が始まりました。この制度は様々な立場の方から歓迎されましたが、実際には、有資格者である臨床心理士の数が少なく、ごく一部の学校に配置されただけでした。その状況は10年経っても、完全には解決されませんでした。多くの学校では、臨床心理士を目指し大学院に通っている院生でお茶を濁したり、一人のSCに複数校を兼任させる巡回型で対応したりしていました。巡回型では十分な望ましい対応が出来ないことは分かっていましたが、背に腹は替えられず、対外的に制度を構築したことを示すためにも、こうした措置がとられたのです。
 SSWや図書館司書などの配置についても、同様な対応がとられました。正規職員ではなく非常勤で人件費を切りつめるというのも行政の常套手段でした。これでは実効性に支障が出るのは避けられません。これが人材不足を無視した実現可能性の問題です。
 もう一つの制度作ってお終い問題とは、実際には人材不足から予期された成果が上がっていないにもかかわらず、所管官庁から制度改革が発表され、幾ばくかの予算化が実現し、通知が出され、制度が動き出し、先進的な施設での成果が公表されると、それで必要な措置は全て完了したかのように誤解し、世間もメディアも関心を失い、中途半端な現状が続いていくという状況を指しています。そして、10年以上経って、思い出したようにメディアが取り上げ、そのときだけ注目を集め、少しだけ前進するもののまたそこで停滞の10年を繰り返すというわけです。私の知人も、つい最近まで、何も資格も経験もないまま、小学校の図書館指導補助員をしていました。今でも、そんな実態なのです。学校教育に関心をもつということは、こうしたからくりを見逃さないということなのです。

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