先日掲載した、「福島原発事故現場収束へのボランティア組織結成・・・旧日本原子力研究所で勤務していた27人のグループ」の専門家集団は以下の様な分析をしています。一つの客観的な分析と思いますのでご参考までにお送りいたします。
I. 原子炉の状態と現在の対応
(1) 炉心の発熱量:現在の発熱量は、原子炉の全力運転時の熱出力(600万KW)の1/1000程度と想定され、この熱を水の蒸発で奪うには、毎日100トン規模を要する。
このほか、1~4号機の使用済燃料プールに格納されている核燃料も、膨大な放射能を有し発熱を続けており、炉心と同様に不断の冷却が不可欠である。
(2) 燃料の発熱期間:燃料の発熱(崩壊熱)は、1~数年で自然に収まるものではなく、例えば、1年後でも現在の3/10程度はあり、引続き冷却の継続を要する。
(3) 現在の注入水の行先:1、3号機では、注入した水のほとんどが蒸発している。2号機では、容器の損傷部から高濃度の放射能を含む水が炉外に漏出している。
(4) 炉内情報の不足:炉内の状態に関する情報は、いくつかの発表が行われているものの、それらの測定・計算・検証の手段・方法など、根拠・信頼度はほとんど知ることができず、また、現在行われている作業についても、詳細情報が得られないため、適確な判断が困難である。
本メンバーによる推定においても、燃料の破損・溶融の状況と程度、圧力容器・格納容器・配管・接合部の破損や腐食の進行状況、再度の水素爆発の可能性、水に含まれる放射能の程度等について、見方に相当の幅がある。
例えば、炉内水の放射能濃度が極度に高い場合には、強烈な放射線のため、遮蔽によっても冷却装置の運用が困難ではないかとの危惧を有する者もあり、信頼できる炉内情報の取得は、今後の対策の選択や有効性にもかかわってくる。
こうしたことから、放射線を防護しつつ原子炉建屋内に立入り、可能な限り実態を把握するとともに、作業性を確保する措置を最優先すべきとの強い意見が出されている(現在、東電では、その試みに着手しつつある)。
(5) 原子炉容器のリスク:初期に一時的に大量の海水が注入されたが、原子炉圧力容器、格納容器等に海水を注入した先例はなく、残留している微量の海水成分によっても、溶接部等での応力腐食割れや腐食加速のリスクがあり、その評価・対策の重要性・緊急性が指摘されている。
(6) バックアップ及び保全対策の例:不測の事態が発生しても、大量の放射能放出を防ぎ得るようなバックアップ対策に緊急に着手すべきことが、強く指摘されている。
例えば、原子炉全体に対する水密格納施設、原子炉建屋修復、周辺土壌の除染、原子炉周囲への防壁・屋根の設置、海への漏出防止壁の構築、大量の放射性水の貯蔵対策、廃棄物集積センター、可能な限りの燃料の取出・遮蔽容器への保管、等。
その効果、工法・工期、二次災害防止策等、綿密な専門的検討が必要となる。
(7) 最終処理に至るまでの手順と期間:事故後、最終処理に至る一般的な基本手順とおおよその期間について、例えば、次のような想定例がある。
① 事故の安定化に1年
② 施設の除染・機器撤去に数年
③ 長期管理施設の整備に数年
④ 長期管理の実施に10年
⑤ 解体撤去に10年
実際に本事故の最終処理がどのような方法をとるか、どの程度の期間を要するかは、現状では即断できず、当面の対策の進捗を見つつ明確化することとなろう。この場合、TMI事故後の処理・処分や外国における原爆実験後の処理事例等も参考にすることができるであろう。
いずれにせよ、そのスキームは、復興計画に大きく影響する
==以上は今回この専門家集団が作成した文書のほんの一部の抜粋です==