竹取翁と万葉集のお勉強

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万葉集 集歌4164から集歌4168まで

2023年02月16日 | 新訓 万葉集
慕振勇士之名謌一首并短謌
標訓 勇士(ますらを)の名を振(ふ)るはむることを慕(ねが)へる謌一首并(あわ)せて短謌
集歌4164 知智乃實乃 父能美許等 波播蘇葉乃 母能美己等 於保呂可尓 情盡而 念良牟 其子奈礼夜母 大夫夜 無奈之久可在 梓弓 須恵布理於許之 投矢毛知 千尋射和多之 劔刀 許思尓等理波伎 安之比奇能 八峯布美越 左之麻久流 情不障 後代乃 可多利都具倍久 名乎多都倍志母
訓読 ちちの実の 父の命(みこと) ははそ葉の 母の命(みこと) おほろかに 情(こころ)尽(つく)して 思ふらむ その子なれやも 大夫や 空しくあるべき 梓弓 末振り起し 投矢(なげや)持ち 千尋(ちひろ)射わたし 剣大刀 腰に取り佩き あしひきの 八峰(やつを)踏み越え さし任(ま)くる 情(こころ)障(さや)らず 後の代(よ)の 語り継ぐべく 名を立つべしも
私訳 ちちの実の名のような父の命、ははそ葉の名のような母の命、子が親元を離れれば覚束なく心を尽くして心配するでしょう、そのような人の子だからといって、立派な人の上に立つ男である大夫も、この世を空しく生きていいでしょうか。梓弓の末を振り立て投げ矢を持ち、その矢を遥か遠くまで射通し、剣太刀を腰に取って佩いて葦や檜の生える沢山の峯を踏み越えて、朝廷から遣わされた任務を行い、心残りによる心の曇りがないように、後の世に人々に語り継がれるような立派な男としての名を立てるべきでしょう。

反歌
集歌4165 大夫者 名乎之立倍之 後代尓 聞継人毛 可多里都具我祢
訓読 大夫(ますらを)は名をし立つべし後(のち)し代(よ)に聞き継(つ)ぐ人も語り継ぐがね
私訳 立派な人の上に立つ男である大夫は、立派な男としての名を立てるべきでしょう。後の世に、その話を聞き継いだ人々がさらに後の世に語り継ぐように。
右二首、追和山上憶良臣作謌
注訓 右の二首は、追ひて山上憶良臣の作れる謌に和(こた)へたり。

詠霍公鳥并時花謌一首并短謌
標訓 霍公鳥(ほととぎす)に并せて時の花を詠(よ)める謌一首并せて短謌
集歌4166 毎時尓 伊夜目都良之久 八千種尓 草木花左伎 喧鳥乃 音毛更布 耳尓聞 眼尓視其等尓 宇知嘆 之奈要宇良夫礼 之努比都追 有争波之尓 許能久礼罷 四月之立者 欲其母理尓 鳴霍公鳥 従古昔 可多理都藝都流 鴬之 宇都之真子可母 菖蒲 花橘乎 感嬬良我 珠貫麻泥尓 赤根刺 晝波之賣良尓 安之比奇乃 八丘飛超 夜干玉之 夜者須我良尓 暁 月尓向而 徃還 喧等余牟礼杼 何如将飽足
(「感嬬良我」の感は女+感の当字)

訓読 時ごとに いやめづらしく 八千種(やちくさ)に 草木花咲き 鳴く鳥の 声も変らふ 耳に聞き 目に見るごとに うち嘆き 萎えうらぶれ 思(しの)ひつつ 遊(あそ)はしに 木の暗ひ 四月(うづき)し立てば 夜隠りに 鳴く霍公鳥(ほととぎす) いにしへゆ 語り継ぎつる 鴬し 現し真子かも 菖蒲(あやめくさ) 花橘を 娘女(をとめ)らが 玉貫くまでに あかねさす 昼はしめらに あしひきの 八峯(やつを)飛び越え ぬばたまし 夜はすがらに 暁(あかとき)し 月に向ひて 往き還り 鳴き響(とよ)むれど なにか飽き足らむ

私訳 四季ごとに、一層、愛でたくなるさまざまの草木の花が咲き、鳴く鳥の声も変わったかのように耳に聞こえ、目で見るたびに、ため息をついて、心も萎えて侘びしく感じ、物思いにふけり、詩歌に風流を楽しむと、木の下が葉が茂り暗くなる四月になると、夜の闇の中に鳴くホトトギスは、古くから語り継がれてきた鶯の真の子なのだろうか、菖蒲や花橘を娘女たちが薬玉に貫く頃に、茜を刺して夜が明けた昼間は一日中、足を引く険しい、たくさんの峰を飛び越え、漆黒の夜は夜通し鳴き通し、暁の月に向かって、飛び行き飛び還る、その鳴き声を響かせるが、どうして、飽き足ることがあるでしょうか。

反謌二首
集歌4167 毎時 弥米頭良之久 咲花乎 折毛不折毛 見良久之余志毛
訓読 時ごとにいやめづらしく咲く花を折りも折らずも見らくしよしも
私訳 四季毎に、一層、愛でたくなる咲く花を、折ろうと折るまいと、眺めるのは気持ち良いことです。

集歌4168 毎年尓 来喧毛能由恵 霍公鳥 聞婆之努波久 不相日乎於保美
訓読 毎年(としのは)に来鳴くものゆゑ霍公鳥(ほととぎす)聞けば偲(しの)はく逢はぬ日を多み
私訳 毎年に、飛び来て鳴くものだから、ホトトギスを聞くと懐かしく思う。逢えない日々が多いので。
毎年謂之等之乃波
訓読 毎年は之を「等之乃波(としのは)」と云う。
右廿日雖未及時依興預作也
注訓 右は、廿日に未だ時に及らずども、興に依りて預(あらか)じめ作れる

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