竹取翁と万葉集のお勉強

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後撰和歌集 巻17 歌番号1210から1214まで

2024年05月03日 | 後撰和歌集 現代語訳 巻17
歌番号一二一〇
原文 堂以之良寸
読下 題知らす

原文 与美飛止毛
読下 詠み人も

原文 奈美加寸尓安良奴三奈礼八寸美与之乃幾之尓毛与良寸奈利也者天奈无
和歌 なみかすに あらぬみなれは すみよしの きしにもよらす なりやはてなむ
読下 浪数にあらぬ身なれば住吉の岸にも寄らずなりや果てなん
解釈 数えることの出来ない浪、そのような並みとして者の数には入らない我が身なので、住吉の岸、その言葉の響きではありませんが、住み良しの貴女の許に近づくことなく、この恋は終わってしまうのでしょう。

歌番号一二一一
原文 堂以之良寸
読下 題知らす

原文 与美飛止毛
読下 詠み人も

原文 徒幾毛世寸宇幾己止乃者乃於本可留遠者也久安良之乃加世毛布可奈无
和歌 つきもせす うきことのはの おほかるを はやくあらしの かせもふかなむ
読下 つきもせず憂き言の端の多かるを早く嵐の風も吹かなん
解釈 尽きることなく嫌な人の噂話が多いので、早く木の葉を飛ばすような嵐の風が、嫌な言の葉、その噂話を飛ばすように吹かないものでしょうか。

歌番号一二一二
原文 以止志乃比天加多良比个留於无奈乃毛止尓川可八志个留
布美遠己々呂尓毛安良天於止之多利个留遠三川个天
徒可者之个留
読下 いと忍びて語らひける女の許につかはしける
文を、心にもあらで落したりけるを見つけて、
つかはしける

原文 与美飛止毛
読下 詠み人も

原文 之末加久礼安利曽尓加与不安之多川乃布美遠久安止八奈美毛个多奈无
和歌 しまかくれ ありそにかよふ あしたつの ふみおくあとは なみもけたなむ
読下 島隠れあり磯に通ふ葦田鶴の踏み置く跡は浪も消たなん
解釈 人に見つからないようにと島隠れしている磯に通う葦田鶴が踏む、その言葉ではありませんが、私が貴女に人目を隠して贈った恋の文は、鶴の足跡を浪が消し去るように、人目から消して欲しいものです。

歌番号一二一三
原文 武可之於奈之止己呂尓美也川可部之个留飛止止之己呂
以可尓曽奈止々比遠己世天者部利个礼八川可者之个留
読下 昔同じ所に宮仕へしける人、年ごろ、
いかにぞ、など問ひおこせて侍りければ、つかはしける

原文 以世
読下 伊勢

原文 三者々也久奈幾毛乃々己止奈利尓之遠幾衣世奴毛乃八己々呂奈利个利
和歌 みははやく なきもののこと なりにしを きえせぬものは こころなりけり
読下 身は早くなき物のごとなりにしを消えせぬ物は心なりけり
解釈 我が身は早くもこの世に関心が無いようなものになってしまっていたのですが、それでも消え失せないものは、昔に共に宮仕えした貴女との思い出なのですね。

歌番号一二一四
原文 者良可良乃奈可尓以可奈留己止可安利个无川祢奈良奴
左万尓三衣者部利个礼八
読下 はらからの中に、いかなる事かありけん、常ならぬ
さまに見え侍りければ

原文 与美飛止之良寸
読下 詠み人しらす

原文 武徒万之幾以毛世乃也末乃奈可尓佐部々多川留久毛乃者礼寸毛安留可奈
和歌 むつましき いもせのやまの なかにさへ へたつるくもの はれすもあるかな
読下 むつましき妹背の山の中にさへ隔つる雲の晴れずもあるかな
解釈 仲が良いはずの母を同じくする妹と兄、その言葉の響きのような吉野の妹背の山でさえ間に吉野河を挟み隔てるように、妹と兄とを隔てる雲が晴れて取り払われないこともあるのですね。(心の隔てを取り払いませんか。)
注意 異母の兄妹の恋愛は自由ですが、同母の兄妹の恋愛は忌諱です。この歌はその同母兄妹の恋愛を詠う、非常に特殊なものです。四条宮主殿集に「吉野河せのことよりも妹背山雲のかかるぞ我は悲しき」があり、伊勢物語第四九段「若草」の「初草のなどめずらしき言の葉ぞうらなくものを思ひけるかな」があるように忌諱ですが、日常でもあります。

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