《驥北の野》(平成29年7月17日撮影)
先に引用した『拡がりゆく賢治宇宙』中に、賢治が「羅須地人協会時代」に編成した楽団のメンバーについては、 第1ヴァイオリン 伊藤克己
第2ヴァイオリン 伊藤清
第2ヴァイオリン 高橋慶吾
フルート 伊藤忠一
クラリネツト 伊藤與藏
オルガン、セロ 宮澤賢治
時に、マンドリン・平来作、千葉恭、木琴・渡辺要一が加わることがあったようです。
<『拡がりゆく賢治宇宙』(宮沢賢治イーハトーブ館)、79p>第2ヴァイオリン 伊藤清
第2ヴァイオリン 高橋慶吾
フルート 伊藤忠一
クラリネツト 伊藤與藏
オルガン、セロ 宮澤賢治
時に、マンドリン・平来作、千葉恭、木琴・渡辺要一が加わることがあったようです。
という記述があるわけだが、幸運なことに、この楽団メンバーの記述を担当したB氏に私は偶々出会うことが叶った。
そして同氏から、「時に、マンドリン・平来作、千葉恭、木琴・渡辺要一が加わることがあったようです」となぜ記述できたのかというと、
あれですか、あれは私が直接平來作本人からお聞きしたことです。
とその根拠を教えてもらった。
だからこのことを敷衍すれば、
千葉恭は「羅須地人協会時代」に下根子桜の別宅に来ていた、ということを裏付ける蓋然性の高い証言を平來作がしていた。
ということが言えるから、それは取りも直さず、次の 〈仮説1〉「羅須地人協会時代」に千葉恭は下根子桜の宮澤家別宅にある期間寝泊まりしていた。
が定立出来るということを教えてくれるし、この〈仮説1〉を裏付けてくれるものとしてはもちろんこの平來作の証言、そして恭の二人の子息のマンドリンに関する証言、さらには先に掲げた【千葉恭の賢治関連文献】がある。その一方で、この仮説の反例は見つからないから、この〈仮説1〉は今後反例が見つからない限りはという「限定付き」の真実となる。つまりこれでやっと、 千葉恭本人のみならず、平來作も恭が下根子桜に寝泊まりしていたということを実質的に言及しているということであり、恭の子息達もそれを傍証している。
ということになる。また一方で、実証的賢治研究家の一人K氏が、下根子桜の宮澤家別宅の隣人で羅須地人協会員の伊藤忠一に対して、「千葉恭について教えてもらえないか」とお願いしたところ、にべもなく「そんな人は知らない」と拒絶されたという。これはまさに、先の宮澤賢治研究の第一人者のお一人A氏が「これまでほとんど無視されていた千葉恭氏」と仰有っていたことと符合するし、さらには、「旧校本年譜」にも『新校本年譜』にも果ては『旧校本全集』にも『新校本全集』にも、千葉恭自身についての記載は一切ないこととも通底していると言えそうだ。
言い換えれば、最初に私は
もしかすると、賢治周縁の人たちは千葉恭について意識的に無視してきた、という可能性が否定できない。
という問題提起をした次第だが、その理由は今の時点では相変わらず解らないままだが、その蓋然性が高いということを改めて思い知らされたし、この「無視」はまことに不思議なことだということも、またである。そしてこのことは、次のことをどうして然るべき賢治研究家は公的には全く検証して来なかったのかということと同値になるのかもしれない。
大正14年頃に千葉恭も澤里武治も共に鎌田旅館に下宿していたのだし、千葉恭が下根子桜の宮澤家の別宅に寝泊まりしていた頃に澤里武治はかなりの回数同別宅を訪れていたはずだから、そのことを二人から直接聞き取っておくべきだったということ。
なぜならば、少しく虫の眼となり、そして鳥の眼になればそうせねばならぬということに容易に気が付くことだと私には思えるからである。以上が、まずは賢治関連の私にとっては七不思議の一つ目である。
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