みちのくの山野草

みちのく花巻の野面から発信。

「自分の生命など、いつでもくれてやる」?

2020-01-27 16:00:00 | 『宮沢賢治の声 啜り泣きと狂気』より
〈『宮沢賢治の声 啜り泣きと狂気』(綱澤 満昭著、海風社)の表紙〉  では今回は最後の章「徴兵を巡る問題」からである。  ここで目を引いたのは、次の記述であった。  世界が、人類が平和で幸福でなければ、自分の幸福などありうるはずがないという信念を賢治はもっていた。               〈『宮沢賢治の声 啜り泣きと狂気』(綱澤 満昭著、海風社)175p〉  そしてこの記述は、「農民芸術概論綱 . . . 本文を読む
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「贈与の精神」

2020-01-26 16:00:00 | 『宮沢賢治の声 啜り泣きと狂気』より
〈『宮沢賢治の声 啜り泣きと狂気』(綱澤 満昭著、海風社)の表紙〉  さて、懸案の「真の贈与」に付いての私の理解はなかなか深まらないが、『宮沢賢治の声 啜り泣きと狂気』の章「童話について」の中でもまた、「贈与」に関して次のようなことが論じられていた。  山男の日常は、全面的に自然に依存している。作為的に自然に挑戦したり、改変したりはしない。一木一石にいたるまで、それぞれの中に神が宿り、その神との交 . . . 本文を読む
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賢治は案外ダブルスタンダードだった?

2020-01-25 16:00:00 | 『宮沢賢治の声 啜り泣きと狂気』より
〈『宮沢賢治の声 啜り泣きと狂気』(綱澤 満昭著、海風社)の表紙〉  では今度は「家・父親・宗教」からである。そこでは例えば、  父政次郎は、暴君ではないが、賢治にしてみればなにかにつけて、煩わしい存在であった。政治家であり、篤信家であった父親からの圧力は、賢治にとっては目に見えない暴力であった。この目に見えない暴力というものは、物理的暴力と違って、陰湿で重くのしかかるものであった。単なる暴力的父 . . . 本文を読む
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『贈与の霊』の探求を私は諦めた

2020-01-24 16:00:00 | 『宮沢賢治の声 啜り泣きと狂気』より
〈『宮沢賢治の声 啜り泣きと狂気』(綱澤 満昭著、海風社)の表紙〉  さて、先の〝「宇宙に『贈与の霊』がみちている」?〟において引用されていた次の記述、  「宮沢賢治という人は、そのような贈与者、しかも稀に見る純粋さで、このような贈与の精神を生きた人であったのだろう、と私は考えるのです。宮沢賢治はずいぶん若い頃から、自分をとりまいている自然や、素朴な人々の心の働きや、あるいはそれらすべてを包み込ん . . . 本文を読む
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農や農民へのかかわりと賢治の体質

2020-01-23 16:00:00 | 『宮沢賢治の声 啜り泣きと狂気』より
〈『宮沢賢治の声 啜り泣きと狂気』(綱澤 満昭著、海風社)の表紙〉  そして「東北・縄文・鬼」は次のように続き、  農や農民へのかかわりは、根源的に賢治の体質に合わなかったのかもしれない。精力的に、献身的に努力した、例の肥料設計の問題にしたって、この化学肥料というものは、土そのものを死にいたらしめ、自然のバランスを崩してしまうものである。化学肥料などを使用することを賢治は心から期待していたわけでは . . . 本文を読む
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「真の贈与≒真の農への犠牲」?

2020-01-22 16:00:00 | 『宮沢賢治の声 啜り泣きと狂気』より
〈『宮沢賢治の声 啜り泣きと狂気』(綱澤 満昭著、海風社)の表紙〉  では今回は、新たな章「東北・縄文・鬼」からである。  そこにはこんなことが述べてあったので、頷いたり、首を傾げながら読み進めた。  死の直前まで、文字通り生命を賭して農民援助に向かったのは、厳寒と土地制度の矛盾をしりめに、ぬくぬくと栄華を享受してきた宮沢一族への憤怒があった。しかもその憤怒を持ちながら、父親の保護を受けて生きる自 . . . 本文を読む
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昭和8年9月20日の面談

2020-01-21 16:00:00 | 『宮沢賢治の声 啜り泣きと狂気』より
〈『宮沢賢治の声 啜り泣きと狂気』(綱澤 満昭著、海風社)の表紙〉  ではここからは、新しい章「山男への思い」に入ろう。すると早速こんなことが述べてあったので興味をひかれた。  賢治はこの山男を客観視するのではなく、一体となって、全身で溶け込み、その心性を自分のものとする。賢治自身が山男であり、縄文人なのである。  ところが、賢治の現実世界においては、死の直前まで、農業、農民のことが気がかりであっ . . . 本文を読む
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「所詮、農民にはなれはしない」

2020-01-20 16:00:00 | 『宮沢賢治の声 啜り泣きと狂気』より
〈『宮沢賢治の声 啜り泣きと狂気』(綱澤 満昭著、海風社)の表紙〉  では、今回で「農への突入と悲哀」という章については終えたい。  そこにはこんなことが最後に述べられていた。  粗衣粗食に耐え、自分の肉体を限界まで酷使し、自虐の道を歩む。「農民のなかへ」「農村のなかへ」と懸命に努力する賢治であるが、ムラは冷たく、彼を農民とも、仲間とも思ってはいない。…投稿者略…  賢治が「本統の百姓」になろうと . . . 本文を読む
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「宇宙に『贈与の霊』がみちている」?

2020-01-19 16:00:00 | 『宮沢賢治の声 啜り泣きと狂気』より
〈『宮沢賢治の声 啜り泣きと狂気』(綱澤 満昭著、海風社)の表紙〉  さて、そろそろ「農への突入と悲哀」という章は終わりを迎えそうだ。そしてそこには再び「贈与」あるいは「贈与者」という用語が次のように沢山登場してきた。    「もうはたらくな    レーキを投げろ    この半月の曇天と    今朝のはげしい雷雨のために    おれが肥料を設計し    責任のあるみんなの稲が     . . . 本文を読む
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「貧農にとって賢治など知ったことか」?

2020-01-18 16:00:00 | 『宮沢賢治の声 啜り泣きと狂気』より
〈『宮沢賢治の声 啜り泣きと狂気』(綱澤 満昭著、海風社)の表紙〉  そして『宮沢賢治の声 啜り泣きと狂気』は、さらにこう続く。  ムラの素朴さの裏にかくされた知識人を見る冷やかな目のあることを賢治も体感する。…(投稿者略)…  どんなに協力、支援をしても、彼らは彼らだし、自分は自分だ、という心境にならざるをえない。自然の猛威によっておきる残酷さも賢治の責任といわれ、ひどい仕打ちを受ける。ムラ人た . . . 本文を読む
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「賢治もそれに呼応して、歓喜にむせぶ」

2020-01-17 16:00:00 | 『宮沢賢治の声 啜り泣きと狂気』より
〈『宮沢賢治の声 啜り泣きと狂気』(綱澤 満昭著、海風社)の表紙〉 努力はそれなりに報いらられることもあった  「農への突入と悲哀」には、さらにこんなことも述べられていた。  地主ー小作の対立が、そしてまた自然環境がどんなに厳しくとも、賢治はそのなかで、文字通り寝食を忘れて、ムラのため、農民のために全エネルギーを注いだ。  努力はそれなりに報いられることもあった。そのような時、彼の心は歓喜に満ち、 . . . 本文を読む
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肥料と品種の改良は地主にとって喜ばしい

2020-01-16 16:00:00 | 『宮沢賢治の声 啜り泣きと狂気』より
〈『宮沢賢治の声 啜り泣きと狂気』(綱澤 満昭著、海風社)の表紙〉  「農への突入と悲哀」には、こんなことも述べられていた。  稗貫郡の土壌を、彼は研究生として、よく調査、研究していたので、その地に適する肥料、品種を的確に選択することが可能であった。…(投稿者略)…  急進的革命的農村改革が不可能なかぎり、この肥料設計と品種の改良は、現状を改善してゆく唯一の手段ともいえるものであった。  明治以降 . . . 本文を読む
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「執拗に生徒に対して、小作人になれという」

2020-01-15 16:00:00 | 『宮沢賢治の声 啜り泣きと狂気』より
〈『宮沢賢治の声 啜り泣きと狂気』(綱澤 満昭著、海風社)の表紙〉  さて、「農への突入と悲哀」という章には、次のようなことも述べられていて、私は認識の甘さを知らされた。  賢治は執拗に生徒に対して、小作人になれという。単なる農民ではなく、小作人になってはじめて農民の姿が理解できるという。教え子たちも、このあまりにも熱心な小作人への理想に驚いたという。  真人間として生きるには農民になることである . . . 本文を読む
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知識人の帰農には始めから限界がある?

2020-01-14 16:00:00 | 『宮沢賢治の声 啜り泣きと狂気』より
〈『宮沢賢治の声 啜り泣きと狂気』(綱澤 満昭著、海風社)の表紙〉  では次は「農への突入と悲哀」という章からである。そこには、例えば、  近代日本の多くの知識人にとって、帰農ということは、農業、農村に帰るという具体的な行為を含みながらも、それ以上に、観念の世界での、農、自然に寄り添い、そのなかであたたかく眠りたいという願望であり、米づくりの瑞穂の国への幻想的回帰を願うものであった。…(投稿者略) . . . 本文を読む
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「真の贈与」とは

2020-01-13 16:00:00 | 『宮沢賢治の声 啜り泣きと狂気』より
〈『宮沢賢治の声 啜り泣きと狂気』(綱澤 満昭著、海風社)の表紙〉  では、ここからは綱澤 満昭の『宮沢賢治の声 啜り泣きと狂気』から宮澤賢治のことを学んでゆきたい。  「まえがき」を読んでいて、まず目を引いたのが「真の贈与」という言葉だった。その最初の登場は、  賢治の眼光は鋭く、真の贈与とは何かを知っている。したがって、ごまかしの同情を極力嫌う。現実世界の農民との接触の中で、彼は心臓をぶち抜 . . . 本文を読む
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