《『宮澤賢治幻の恋人』(澤村修治著、河出書房新社)》
吉田 それはほぼ間違いなく、あの石井洋二郎氏があの式辞で警鐘を鳴らしたことが、賢治研究の分野でも例外なく起こっているということの証左だ。
鈴木 私もここまで十年間程、賢治研究の分野で実証的検証をしてきたわけだが、同分野もそれはたしかに例外ではなかった。まさに、石井氏が嘆いているように、
・「本来作動しなければならないはずの批判精神が、知らず知ら . . . 本文を読む
《『宮澤賢治幻の恋人』(澤村修治著、河出書房新社)》
鈴木 さて、そろそろそ「Wikipediaの高瀬露」の検証もそろそろ終わりにしたいのだがいいだろうか。
そもそも今回は何がことの始まりだったのかというと、『ウィキペディア(Wikipedia)』の中の「高瀬露」の項目に対して、Wikipedia側から、
この記事のほとんどまたは全てが唯一の出典にのみ基づいています。
という指摘があると . . . 本文を読む
《『宮澤賢治幻の恋人』(澤村修治著、河出書房新社)》
鈴木 さて、以上で背景を塗りつぶした部分の考察は全て終わったのだが、次の部分がやっぱり気になるんだよな。
また、賢治の詩「最も親しき友らにさへこれを秘して」における
あらゆる詐術の成らざりしより
我を呪ひて殺さんとするか
然らば記せよ
女と思ひて今日までは許しても来つれ
今や生くるも死するも
なんぢが曲 . . . 本文を読む
《『宮澤賢治幻の恋人』(澤村修治著、河出書房新社)》
「押しかけ女房」としての露の行動は、賢治の死後、1939年11月発行の機関誌「イーハトーヴォ」創刊号に掲載された高橋慶吾「賢治先生」や、1943年9月20日刊行の関登久也「宮沢賢治素描」(協栄出版社)における羅須地人協会員の座談会を通じて広く知られるようになった。これに対し、露は「事実でないことが語り継がれている」と発言したほかは何も弁解しな . . . 本文を読む
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鈴木 では今度はこれだ。
「押しかけ女房」としての露の行動は、賢治の死後、1939年11月発行の機関誌「イーハトーヴォ」創刊号に掲載された高橋慶吾「賢治先生」や、1943年9月20日刊行の関登久也「宮沢賢治素描」(協栄出版社)における羅須地人協会員の座談会を通じて広く知られるようになった。これに対し、露は「事実でないことが語り継がれている」 . . . 本文を読む
《『宮澤賢治幻の恋人』(澤村修治著、河出書房新社)》
荒木 そうか、「聖女のさまして近づけるもの」とは実は限りなく伊藤ちゑだったのか。でもさ、待てよ。ならばこの〈悪女〉はちゑとされてしまうのか。
鈴木 いやいや、もちろんそうはならない。たしかに、賢治自身は、「たくらみすべてならずとて」とか「われに土をば送るとも」などと書いてちゑに当て付けたかったということはほぼ間違いないが、拙著でも、
なお、最 . . . 本文を読む
《『宮澤賢治幻の恋人』(澤村修治著、河出書房新社)》
鈴木 では今度は、
の後半、
この露の行動に賢治は怒り、
聖女のさましてちかづけるもの
たくらみすべてならずとて
いまわが像に釘うつとも
云々という詩を「雨ニモマケズ手帳」に記している[15:p.158-159]。 についてだ。
吉田 それではまず[15:p.158-159]について、例のリストの中の該当 . . . 本文を読む
《『宮澤賢治幻の恋人』(澤村修治著、河出書房新社)》
鈴木 では今度はこれ、
やがて1930年10月頃、恋に破れたと悟った露は賢治を恨むようになり、賢治の作り話である「癩病」の噂を周囲に言いふらして歩いた[14:p.158]。この露の行動に賢治は怒り、
聖女のさましてちかづけるもの
たくらみすべてならずとて
いまわが像に釘うつとも
云々という詩を「雨ニモマケズ . . . 本文を読む
《『宮澤賢治幻の恋人』(澤村修治著、河出書房新社)》
鈴木 では今度はこれだが、
困り果てた賢治に対し、父の政次郎は「その苦しみはお前の不注意から求めたことだ。初めて会った時にその人にさあおかけなさいと言っただろう。そこにすでに間違いのもとがあったのだ。女の人に対する時は、歯を出して笑ったり、胸を拡げていたりすべきものではない」と叱責した[13:p.152-158]。
これについては既に一度 . . . 本文を読む
《『宮澤賢治幻の恋人』(澤村修治著、河出書房新社)》
鈴木 では今度は、
賢治は露を追い払うため、顔に灰を塗って面会したこともあり、わざとぼろをまとって乞食のような姿で露の前に現れる、などの努力を繰り返した[10:p.153]。また「私は癩病ですから」と嘘をついたこともあるが、露はこの言葉を聞いて同情し、かえって賢治への執着心を強めた[11:p.153-154]。このことが地元で注目を集め「賢 . . . 本文を読む
《『宮澤賢治幻の恋人』(澤村修治著、河出書房新社)》
鈴木 では今度はこれだ。
賢治は露を追い払うため、顔に灰を塗って面会したこともあり、わざとぼろをまとって乞食のような姿で露の前に現れる、などの努力を繰り返した[10:p.153]。また「私は癩病ですから」と嘘をついたこともあるが、露はこの言葉を聞いて同情し、かえって賢治への執着心を強めた[11:p.153-154]。このことが地元で注目を集 . . . 本文を読む
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鈴木 では今度はこれだ。
露が賢治のために心尽くしのライスカレーを作ると、賢治は「食べる資格がない」と言い張って食べるのを拒み、来客に食べさせたこともあった[8:p.151-152]。このとき露は乱調子にオルガンを弾いて八つ当たりし、賢治を困らせた[9:p.152]。
吉田 まずは、[8:p.151-152]ということだから、「Wikipe . . . 本文を読む
《『宮澤賢治幻の恋人』(澤村修治著、河出書房新社)》
鈴木 では今度は次の部分、
露が帰った直後、「女くさくていかん」と言いながら部屋の窓を開け放したこともあった[6:p.149]。 についてだ。
荒木 これは、鈴木が『本統の賢治と本当の露』の125p以降の〝5.捏造だった森の「下根子桜訪問」〟において明らかにした例のことだべ。
吉田 そうだったな。
森荘已池が一九二七年の秋に「下根子桜」を訪 . . . 本文を読む
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鈴木 では今度はこれだ。
当初、賢治は露を「しっかりした女性だ」と褒め、露が掃除や家事をしてくれるのを「とても助かる」と感謝していたが、情熱的な露からたびたび贈り物をされたり、一日に何度も単身で訪問を受けたりするようになると迷惑がるようになる[5:p.143-146]。露が帰った直後、「女くさくていかん」と言いながら部屋の窓を開け放したこと . . . 本文を読む
《『宮澤賢治幻の恋人』(澤村修治著、河出書房新社)》
鈴木 それでは再開しよっか。まずは、当該個所を再掲する。
1927年初頭、岩手県稗貫郡湯口村(現・花巻市)の宝閑小学校(現在は廃校)の訓導だった頃、農会主催の講習会や、藤原嘉藤治の音楽サロンを通じて宮澤賢治と知り合う[3:p.142]。賢治に好意を持った露は、羅須地人協会の高橋慶吾(もともと花巻バプテスト教会のもとに共に通っていた縁があった) . . . 本文を読む