みちのくの山野草

みちのく花巻の野面から発信。

賢治関連七不思議(千葉恭に関連して、#2)

2017年07月12日 | 賢治に関する不思議
 それでは賢治周縁の誰が、千葉恭が下根子桜の別宅に来ていたということを裏付ける証言をしているかというと、それは賢治の教え子でもあり羅須地人協会の会員でもある平來作である。
 というのはまず、『拡がりゆく賢治宇宙』の中に、賢治が「羅須地人協会時代」に組んでいた楽団のメンバーについては、
   第1ヴァイオリン 伊藤克己
   第2ヴァイオリン 伊藤清
   第2ヴァイオリン 高橋慶吾
   フルート     伊藤忠一
   クラリネツト   伊藤與藏
   オルガン、セロ  宮澤賢治
 時に、マンドリン・平来作、千葉恭、木琴・渡辺要一が加わることがあったようです
               <『拡がりゆく賢治宇宙』(宮沢賢治イーハトーブ館)、79p>
という記載があり、「時に、マンドリン・平来作、千葉恭、木琴・渡辺要一が加わることがあったようです」と推定表現ではあるが〝千葉恭〟の名前がそこにあるのである。つまり、「羅須地人協会時代」に、恭は時に楽団でマンドリンを弾いていたようだということだから、恭が下根子桜の別宅に来ていたということを裏付けている蓋然性が高い記載である。
 
 ところが不思議なことに、この件に関しての『新校本年譜』の記載では、
    しかし音楽をやる者はマンドリン平来作、木琴渡辺要一がおり
             <『新校本宮澤賢治全集第十六巻(下)補遺・資料 年譜篇』(筑摩書房)、314p>
というように、推定の「あったようです」が「おり」と断定表現に変わっているとともに、「千葉恭」の名前のだけがすっぽりと抜け落ちているのだ。そこで、どうして「賢治年譜」には恭だけが抜け落ちているのですかと、イーハトーブ館を訪ねて関係者に訊ねたところ、「それは一人の証言しかないからです」という回答だった。もしそういうことであればそれは尤もなことである。しかしながらそういうことであれば、「マンドリン平来作、木琴渡辺要一」については他の人の証言等があったということになるはずだが、私が調べてみた限りではそのようなものは何一つ見つからなかった。言い方を換えれば、平や渡辺についての裏付けを『新校本年譜』ははたして取れていたのだろうかと私自身は訝るしかなかった。

 そこで私は、自分なりにその裏付けを取ってみようと企てた。すると幸い、ある方から千葉恭の子息の住んでいる場所を教えてもらえた。その人は恭の三男満夫氏であり、同氏に「お父さんはマンドリンを持っていませんでしたか」と訊ねてみたところ、「はい持っていましたよ」という回答であった。さらに恭の長男益雄氏からは、そのマンドリンに関する面白いエピソードまで教えてもらった。したがってこれらの二人の子息の証言から、『拡がりゆく賢治宇宙』の
    時に、マンドリン・平来作、千葉恭
という記載はほぼ間違いな事実であったであろうと、つまり
    千葉恭は下根子桜で結成された楽団の仲間の一員であり、マンドリンを担当していた。
ということについてのかなりの確度の高い裏付けを私は取れたと思ったし、はたして『新校本年譜』の担当者は恭についてのこの裏付けを取ろうとしたのだろうかと、失礼ながらついつい疑ってしまった。

 ところで、そもそも『それは一人の証言しかないからです』と言うところの「一人」とは一体誰のことだろうかと思って調べ回ったところ、それが実は平來作であったのだった。つまり、恭が下根子桜の別宅に来ていたということを裏付ける蓋然性の高い証言を平來作がしていたのであった。

 が、長くなってきたので続きは次回へ。

 続きへ
前へ 
 ”みちのくの山野草”のトップに戻る。

《鈴木 守著作新刊案内》
 前に出版しました『「賢治研究」の更なる発展のために-』の残部が残り少なくなってきましたので、同書を少しスリム化した『賢治の真実と露の濡れ衣』をこの度出版しました。

 本書の購入をご希望なさる方がおられましたならば、葉書か電話にて下記にその旨をご連絡していただければまず本書を郵送いたします。到着後、その代金として440円(小冊子代300円+送料140円)分の郵便切手をお送り下さい。
     〒025-0068 岩手県花巻市下幅21-11 鈴木 守
                 電話 0198-24-9813
 本書は、拙ブログ『宮澤賢治の里より』あるいは『みちのくの山野草』に所収の、
   『「羅須地人協会時代」検証―常識でこそ見えてくる―』
のダイジェスト版でもあります。さらに詳しく知りたい方は拙ブログにてご覧下さい(『「羅須地人協会時代」検証―常識でこそ見えてくる―』はブログ上の出版ゆえ、紙媒体のものはございません)。

《宮澤賢治関連の鈴木 守著作既刊案内》
『「羅須地人協会時代」再検証-「賢治研究」の更なる発展のために-』 (定価 500円、税込み)
『「涙ヲ流サナカッタ」賢治の悔い』 (定価 500円、税込み)
『宮澤賢治と高瀬露』 (定価 1000円、税込み)
『羅須地人協会の真実―賢治昭和二年の上京―』 (定価 1000円、税込み)
『羅須地人協会の終焉-その真実-』 (定価 240円、税込み)
 以上につきましては『宮沢賢治イーハトーブ館』にて販売しております。
『賢治と一緒に暮らした男-千葉恭を尋ねて-』 (在庫なし)

『コラム』 ジャンルのランキング
コメント   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 秋田駒ヶ岳(ヒナウスユキソウ... | トップ | 秋田駒ヶ岳(エゾツツジ、7/7) »
最近の画像もっと見る

コメントを投稿


コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。

あわせて読む

トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL