隅の老人のミステリー読書雑感

ミステリーの読後感や、関連のドラマ・映画など。

2058.儚い羊たちの祝宴

2022年01月02日 | 短編集
儚い羊たちの祝宴
読了日 2021/07/21
著 者 米澤穂信
出版社 新潮社
形 態 文庫
ページ数 329
発行日 2011/07/01
ISBN 978-4-10-128782-9

 

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明けましておめでとうございます。一日遅れましたが、まずは新年のご挨拶を。年々身体と脳の衰えは隠しきれず、至る所にその兆候を示しています。旧年中の失敗を繰り返すことのない新年を送りたいと思っています。 本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

ン読の蔵書を消化の1部というか1冊だ。僕は著者のシリーズ作品“古典部”の1冊と勘違いして買っておいた本だと思いながら読み始めたら違っていた。僕の早とちりや勘違いは例によって例の如しだ。
このくらいの勘違いはまあ許せる範囲だが、時には同じ本を2冊買ってしまうこともあり、そんな余裕はないのに、いや、だからいつも余裕のない生活を送ることになるのか!原因と結果が逆かもしれない。
僕の中ではこの人の本は全部読もうと思う作家と、たまに読んでみたいと思う作家の、二通りの作家が存在する。米澤穂信氏はその後の方の作家だ。
あまり人の読後感や評価を気にしない方なのだが、それでも多少は目や耳に入る情報は、どこかに蓄積されているようで、米澤氏の作品についてもどこか、何かで見聞きしたことが記憶の底にあったらしく、2006年に初めて『犬はどこだ』という作品を読んだ。
今考えるとこの作品はタイトルの面白さが引っかかったのではないか?そんな気がする。犬猫探しを本業とする探偵が、例えば浮気調査の依頼に掛かりきりになっている内に、本業の犬探しが無くなってしまった。
そんな状況が思い浮かぶのだが、本当はどんな話だったか全く思い出せない。
でも、もう一度目を通してみる価値があるかもしれない、などとも思う今日この頃だ。

 

 

 

巻末の千街晶之氏の解説によれば、著者は『氷菓』によって角川書店が主宰する、第5回角川学園小説大賞のヤングミステリー&ホラー部門奨励賞を受賞してデビューとのことだ。その古典部シリーズは、第2作『愚者のエンドロール』を刊行するも、一部読者から高評価を受けるも売り上げは振るわなかったようだ。
だが、シリーズはその後『クドリャフカの順番』、『遠まわりする雛』、『ふたりの距離の概算』、『いまさら翼といわれても』と刊行されており、売り上げも伸ばしているようだ。一般的には読者の評価が高い作品が必ずしも、売上を伸ばすとは限らないが、やはり読者の望む作品が売り上げにつながるということだろう。
僕は売り上げにも評価にも、そのどちらにも属さない読者だ、と思っているが自分が好んで読む作品が、評価とともに売り上げも伸ばしていることが望ましいと思っているのは、矛盾しているか。
僕が好んで読む作品を書く作家が、どんなジャンルに属するかと言うことも、あまり影響されないと思っているが、実はどこか心の内で知らぬ間に区分けしているのだろう。

 

 

書は下表のとおり5編の短編で構成されているが、どれも今まで僕が好んで読んだ作品とは一味も二味も異なる内容で、いずれもなんとも形容しがたい内容のストーリーだ。
どちらかと言えば後味のあまり良くはないといったストーリーで、その最たるものが最終話の「儚い羊たちの晩餐」。簡単に言ってしまえば成金家族の父親の物語だ。と、思って読んでいる内にそう単純なストーリーではなかった。
知識がない癖に見栄っ張りの典型である父親は、一流の料理人の厨娘(ちゅうじょう)を雇った。“御家族の体面を保つために迎えに来てほしい”との書状を出すほどの彼女に対して、さすが一流の料理人だから、自分の足ではこないのだ、と父親は言い運転手をそこに向かわせた。
一切合切その調子で雇った夏と言う名の厨娘に最初に頼んだ料理は、主菜は羊頭肉の薄切りだったが、なんとそれに費やした羊が十二頭党と言うことに、家族は驚くが父親は一流の料理人と言うことだから、と、納得してしまうのだった。
万事その調子で彼女の作る料理には莫大な費用が掛かった。が、その都度前の雇い主を引き合いに出す厨娘が気に入らない彼は今までに作ったことのない料理を作れ、と・・・・。はたしてその結果はいかに?

 

収録作
# タイトル
1 身内に不幸がありまして
2 北の館の罪人
3 山荘秘聞
4 玉野五十鈴の誉れ
5 儚い羊たちの祝宴

 

 

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