なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

微生物学

2024年02月26日 | ほんの話

 微生物学の本が一冊は必要なので、医学部学生向けの中でも簡単な本を購入した。「戸田新微生物学」は到底読めないし、「標準微生物学」も通読は難しい。

 日本医事新報社の基礎医学Qシリーズは、昔は小さな小冊子だったが、今は学生だったらこのくらいで十分(?)なくらいの本になっていた。フルカラーで見やすい。

新微生物学 (Qシリーズ)

 

 ヒトヘルペスウイルス(human herpesvirus:HHV)は、HHV-1からHHV-8まであり、HHV-6は6Aと6Bの2種類があるので計9種類になる。

 HHV-1は単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)で口唇ヘルペスを、HHV-2は単純ヘルペスウイルス2型(HSV-2)で性器ヘルペスを来す。

 HHV-3は水痘・帯状疱疹ウイルス(HZV)で初感染で水痘、再活性化で帯状疱疹を来す。

 HHV-4はEVウイルスで伝染性単核球症を、HHV-5はサイロメガロウイルス(CMV)でサイトメガロウイルス感染症(網膜炎・肺炎・肝炎など)を来す。

 HHV-6HHV-7は突発性発疹をきたす。HHV-8はカポジ肉腫関連ヘルペスウイルスでカポジ肉腫を来す(こちらはなじみがない)。

 ヘルペスウイルスとしてまとめると、こういうウイルスたちなのかと、わかりやすい。

 

 ヘルペスウイルスは持続感染の中でも、潜伏感染という形をとる。初感染時に急性感染の症状が現れるが、その後はいったん症状が治る。しかしウイルスは体内から排除されず、感染細胞内に核酸の状態で潜んでいる。潜伏時には増殖はしない。

 宿主が強いストレス下におかれたり、免疫機能が低下したりすると、ウイルスが再び増殖を始めて(再活性化)、急性感染時と同様の症状が現れる(回帰発症)。そして再び潜伏し、回帰発症することを繰り返す。

 一度感染したら免疫機能を回避して、宿主の内部に生涯とどまり続ける。MHCクラスⅠ分子の発現を阻止する、樹状細胞が行うMHCクラスⅡ分子への抗原提示を阻害する、免疫応答を調整するサイトカインの合成を阻害する、感染細胞のアポトーシスを阻害する、など多種多様な戦略を駆使して宿主の体内の生涯とどまり続け、「ヘルペスウイルスは免疫回避の芸術家」と形容される。

 

 真菌や原虫なども、まあこのくらい知っていれば、という基本的なことが載っている。

 

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