なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

糖尿病の講演会

2015年11月21日 | Weblog

 昨日は当地域の糖尿病講演会があり、座長を頼まれていた。講師は秋田大学大学院内分泌・代謝・老年内科学の成田琢磨先生で、糖尿病腎症の話だだった。透析導入になると平均寿命は7~8年になる(当院はもう少し長い)。糖尿病患者数(HbA1c6.5%以上)は950万人で、糖尿病予備軍は同程度の数だが意識の高まりもあり、少し減少しているという。糖尿病腎症からの導入は16000人で2012年から少し減少している。

 腎機能低下を抑制するには、A 血糖HbA1c<7.0%、B 血圧<130/80mmHg、C 脂質LDL-C<100~120mg/dl、D 禁煙・体重是正。アメリカではコレステロール値によらず45~75歳ではすべてスタチンを処方するそうだ(内服後の検査は内服しているかどうかの確認のため)。

 血圧<130/80mmHg・HbA1c<7.0%・RAS阻害薬投与の治療で、蛋白尿の消失(寛解)を目指すことができる。第3期からの予後は、寛解28.1%、蛋白尿0.5~3g/gCr40.3%、蛋白尿3g/gCr31.6%で、ざっくり言うと1/3ずつになる。第2期でも微量アルブミン尿量を低下させると、腎・心血管イベントによる死亡や入院を低下させることができる。尿蛋白・尿アルブミン以外の腎機能低下予測のサーrゲートマーカーを探しているが、難しいそうだ。抗酸化作用があるBaldoxoloneはeGFRを上がるが、実際に臨床で使用できるかどうか、まだ分からない。第1期の正常アルブミン尿(30mg/gCr)でも、15未満では腎機能が変化しないが、15以上では悪化する。低蛋白食の厳守は実際には難しい。蛋白の中でも、卵白や植物蛋白(豆腐)は腎臓の負担にならない。

 低血糖は心疾患や認知症のリスクになる、高齢者ではHbA1c<8.5%、平均血糖<200mg/dlにして、感染・脱水・昏睡を避ける。血圧も150/90から可能であれば140/90、さらに130/80と段階的にゆっくり下げる。

 DPP4阻害薬は使用するとすぐに効くので、併用するSU薬は最低量にする。SGLT2阻害薬は心血管死を低下させるが、血圧低下が効いている。α-GIはGIPを低下させ(小腸上部)、GLP-1を増加させる(小腸下部)ので、DPP4阻害薬と併用すると血糖のさらに低下させ体重を減量する。

 会場からの質問がすぐに出なかったので、糖尿病腎症と他の腎疾患併発の鑑別について質問した。血尿があったり、網膜症や神経障害(いずれも腎症より早期に発症)がない時は、他の原因があることが考えられるという答えだった(これはテキストに載っているのでお約束の質問)。さらに糖質制限の可否を質問した。腎症がなければいいでしょうということだった。山田悟先生は第2期までは大丈夫としてますがと聞くと、これは賛成しかねるという。その後、循環器科の若い先生が質問してくれたので、何とか形になった。

 最後に、講演前に聞いた腎臓でもわずかに糖新生していることを確認した。腎症が進行すると、使用している薬剤の濃度が上昇することで効きが良くなることとに加えて、腎臓の糖新生が低下することで血糖が改善するという。

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