なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

「胃炎の京都分類」

2015年10月11日 | Weblog

 パネルディスカ ッション「胃炎の京都分類を検証する」で分類をまとめた春間先生が、とにかく「胃炎の京都分類」日本メディカルセンターを購入して下さいと言っていたので、とりあえず購入した。地図状発赤が重要とか、鳥肌胃炎は省いてもいいのではと議論されていた。ピロリ菌除菌後の変化をどうとらえるかが問題らしい。

 ワークショップ「機能性上部消化管疾患の病態と新規治療」 ファンである木下芳一先生が司会をされるので出席。木下先生の基調講演を聴いただけで十分だ。まずは器質的疾患の除外が大事で、消化管疾患以外の疾患(虚血性心疾患など)も考慮する必要がある。上腹部痛・腹部膨満感・胸やけがあって、器質的疾患がないと、昔は「胃下垂」とされていて、その後は「慢性胃炎」とされていた。さらにNon-ulcer dyspepsia(NUD)と称された。そこから、上腹部痛・膨満感があるものがFunctional dyspepsia(FD)、胸やけがあるのもがNERD(食道炎の所見がないもの)とされた。NERDにPPIを処方しても20%しか効かない。逆流性食道炎の所見のあるGERDだとPPIの増量(P-CABも)を行うが、NERDの場合は抗うつ薬などを処方して対応するが、なかなか治療は難しい。FDもPPIの処方で20%くらいに効果がある。アコチアミドの効果も20%くらいでやはり治療は難しい。他には、アカラシアなども食道の通過障害を来たす疾患にPOEM(peroral endoscopic myotomy)が行われること、食道の通過障害の検査としてHRM(high resolution manometory)が行われること、好酸球性食道炎の中に筋層内に好酸球浸潤を認めるEoEM(eosinophilic esophageal myositis)があることなどを聴いた。

 {AIHとPBCの最近の進歩」 Acute AIH(A-AIH)は抗核抗体(抗平滑筋抗体も)・IgGが低値で診断が確定しがたい。ステロイドで寛解に至ることが多いが、死亡例や肝移植を要することもある。通常のAIHに比べて、寛解後に再燃しやすい。 トランスアミナーゼが1000を越えたりPTの低下する症例ではステロイドパルス療法を行うが、ステロイドの量については規定がない。(ALTが正常化するものをステロイド著効例、ALTが正常の2倍以上になるものを再燃とする) 通常ステロイドはプレドニン40mg/日か30mg/日を使用する。維持量はプレドニン5-10mg/日。2年寛解を保てば中止も考慮するが、再燃が多い(ガイドライン作成者から維持量の推奨はあるが中止の記載はないと)。再燃例と非再燃例で臨床的な差がない(再燃するかどうかは不明)。臨床的に寛解と判断されても、肝生検すると組織学的には炎症が残っている。AIH-PBC overlap症例はステロイドをウルソを併用する。C型肝炎とAIH併発例はC型肝炎の治療を行う。PBCの30%はウルソが効かない。ウルソ以外の治療薬が待たれるが難しいらしい。ウルソを使用してALTが300未満になれなければ、ベザフィブラートを併用してみる。後は線維化のマーカーの話などがあった。

「H.pylori未感染および除菌後胃癌の治療と病態」 H.pylori未感染胃癌はまれで1%くらい。多くは分化癌で早期癌がの比率が多い。未分化癌は少ないが、その中では進行癌の比率が高い。除菌後胃癌は除菌後平均5年で発症する。診断が困難らしいが、この辺から疲れて聴いてなかった。

「さらなる長期予後を目指した潰瘍性大腸炎治療のエッセンス」 スポンザー付き(弁当付き)のサテライトセミナーだが、90分以上なので、学会の企画に相当する内容になる。1)チオプリン製剤(azathiopurin=イムラン)。寛解維持のkey drugという。ステロイドからの離脱・寛解維持・生物学的製剤と併用、で使用する。ステロイドは寛解維持の働きはなく、粘膜再生遅延をきたす。ステロイドからの離脱を目指して使用するが、いつまで続けるか。中止すると再燃する可能性があり、最低2年は使用する。25mg/日を1~2週間使用して、50mg/日に増量する。25mg/日にアロプリノール50mgを併用すると濃度が上昇するので、25mgのままで使用できる。副作用として白血球減少が特にアジアでは30%と多い。2)サイトメガロウイルス感染。CMV感染を併発するとUCが増悪するとされて、抗ウイルス薬が投与されてきた。組織学的にあるいは血清学的にCMVの再活性化を証明できても、それがそのままCMV disease(つまり臓器障害)とは結びつかない。CMVの再活性化は炎症と免疫抑制で起こるので、まずUCの治療を行うことが優先される。インフルキシマブ(レミケード)はCMV感染を悪化させない。3)粘膜治癒。Mayoの0~1(できれば0)の粘膜治癒を目指す。インフリキシマブ投与2週間後のトラフ値がその後の経過を規定する因子で、30週後の粘膜治癒を規定する因子でもある。インフリキシマブは使用当初に効果がそれほどなさそうでも、遅発有効率19%なので、使用し続けることも重要。UCからの癌・dysplasiaは診断が内視鏡的に難しい。狭窄や高度炎症はcolitic cancerのリスクを高める。

 今回は「腹痛診療の自信がつく本」カイ書林を持っていった。症例がよくまとまっていて、内外ヘルニアの症例も数例入っていて参考になる。好酸球性胃腸炎や血管性浮腫(C1インヒビター欠損症)も含まれている。研修医にお勧めだ。

 

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