伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

ITSUKI 死神と呼ばれた女

2017-04-24 22:20:55 | 小説
 中2の娘を持つ結婚15年の四十路の人妻斎が、夫を捨て娘も置いて家を出て、歌手志望だが芽が出ない26歳の派遣労働者でエロ本5冊を万引きした青年志田元春と、その友人で外資系製薬会社のエリート社員の薦田潮の2人の年下男と肉体関係を持ち、それに斎の生物学上の父の妻多鶴子が嫌悪感を持ち、多鶴子の娘で斎とは腹違いの妹の朔子が嫉妬し、当初は中立的だった朔子の娘でかつて潮に振られた梢がプライドを傷つけられて逆上し、潮の父親で斎の勤務先の経営者薦田と妻範子嫌悪感を持って斎の行動を阻止しようとし、斎の生物学上の母と斎の友人のアラフォーたちが斎を唆し煽るというような関係で進められる小説。
 四十路の女が一回り年下の男2人を手玉に取り、2人から言い寄られて愛され、かつ2人が友人同士でそれを許容している「妻妾同居」ならぬ公認二股愛人関係という中高年女性の妄想炸裂小説です。こういう小説は、婦人公論とか女性週刊誌に掲載されるものかと思いましたが、これが「週刊文春」に連載されていたというのが驚きです。まぁ、「週刊文春」の読者層を見ると3分の1くらいが中高年女性なんだそうですが…
 斎の生物学上の母の海老原会病院総師長浅妻徳美のキャラクター設定があまりにもエキセントリックで図々しく厚顔無恥で、到底共感できないことはもちろん、こういう人が総師長の立場についてやっていけるはずもなく、荒唐無稽に感じられます。そして朔子の意地悪さ/執念深さ、梢の嫉妬と逆上ぶりが、無理な過剰感があります。引き立て役を悪く描きすぎて、コミカルのレベルを超えて、うんざり感があり、読み味が悪くなっているように思えました。
 終盤で、エンバーミング(遺体保存技術)についての蘊蓄があり、そこだけ少し上品に読める感じですが、通して読むと途中で気が向いてそういう話を入れてみたのねというとってつけた感があります。


中島丈博 文藝春秋 2017年1月15日発行
「週刊文春」2014年4月10日号~2015年4月30日号連載

コメント    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 汚染訴訟 上下 | トップ | 労働法実務解説8 高齢者雇... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

小説」カテゴリの最新記事