伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

京アニ事件

2020-09-10 20:31:19 | ノンフィクション
 アニメーション研究家の著者が、京アニ事件からしばらくの自分のマスコミ対応、他の評論家の対応、アニメ界における京都アニメーションの独自性、過去の事件でアニメ(アニメファン:オタク)が受けてきた理不尽な扱いとの比較、被害者実名報道の是非、国内外からの多額の寄付への驚き等について説明し論じた本。
 事件そのものについては、報道を超える情報はありません。タイトルから、事件そのものについて調査して書かれていると期待すると、不満が残ります。事件に対するマスコミ等の対応を論じ、事件を契機としてアニメ界、京都アニメーションの社会における位置づけを語る本として読むべきでしょう。
 京都アニメーションについては、丁寧な仕事と高いクオリティ、従来のアニメファンの好みを外さない可愛らしい造形のヒロインを数多く登場させつつアニメの新しい楽しみ方を提供し人気を拡大してきた、非正規雇用・業務委託(フリーランス)の過酷な労働に依存する業界の中で京都アニメーションは正社員雇用で福利厚生も充実していたなどと持ち上げています。求人情報では期間1年の契約社員雇用で正社員登用ありとされている(122ページ)のが、実際どの程度正社員として登用されるのか、本当にきちんとした労働条件が確保されているのか、それならなぜに事件前から「秘密主義」で社内のことは表に出さない(58ページ、120ページ)のか、疑問に思えますが。


津堅信之 平凡社新書 2020年7月15日発行
コメント
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