魯生のパクパク

占いという もう一つの眼

干支の話(5)

2015年07月24日 | 占いばなし

ところで、「干支」は通常、「カンシ」と読むが、「エト」とも読むことを知る人は少ないだろう。逆に、初めから「エト」と憶えて、「カンシ」とは読まない人もいるかも知れない。辞書にも「エト」と書いてあるので、これが正式の読み方と錯覚される。

「干支」を「エト」と読むのは、「飛鳥」を「アスカ」と読み、「日下」を「クサカ」と読むように、本来、別の事柄の呼称を、関係する同類の事柄を表す文字の読み方としたもので、正確ではない。
「干支」は、「十干」と「十二支」の総称、または、既述の「六十干支」のことを指す。
「エト」は、本来「兄弟」のことで、十干十二支に振り当てられた、「陰陽五行」の「陰陽」を、「陰=弟(ト)」、「陽=兄(エ)」と読んだことから、六十干支を「エト」と呼ぶようになった。

正しくは、十干(甲乙丙丁戊己庚辛壬癸)を、五行(木火土金水)の陽と陰に別け、
陽の木「甲」を木の兄「キノエ」、陰の木「乙」を木の弟「キノト」と呼び、以下全ての干が、五行の「エ」と「ト」として呼ばれる。
さらに、十二支に、この陰陽の十干(エト)が配布され六十干支になったことで、六十干支を「エト」と呼ぶようになった。

また、六十干支によって、十二支には必ず、「十干=エト」が付いているので、十二支そのものも「エト」と呼ぶのが一般化したものと思われる。

歓楽街で、警官が若い子に職務質問、「何歳?」と尋ねると、「21歳」と答える。警官はすかさず、「エトは?」と質問する。ここで躊躇すると、年を誤魔化しているのがバレル。逆に、即答されると、今度は警官が「・・・」と、頭の中で計算し始める。
東洋人なら、自分の生まれ年の十二支はほぼ百パーセント知っているが、案外、上や下が何ドシかは知らない。2歳離れると、「ネ、ウシ、トラ・・・」と、指を折らなければ分からない。
こういう時でも、「エト」と言えば、十二支のことだと誰でも分かるから、「ヒツジ年」と答えるが、「キノトノヒツジ歳」などと答える現代人はいないだろう。昔の教養人は、日記に日付として、この干支を書いていた。

近頃は、生まれ歳にもあまり関心が無くなっているが、歳のサバを読むなら、必ず「エト」はチェックしておかなければならない。