魯生のパクパク

占いという もう一つの眼

日本遺産

2015年07月08日 | 京都&ケンミン文化

世界遺産」を書いた後、どうにも腹が収まらず、補足を長々と書いてしまった。
日本のメンタリティ、官僚国家、外交下手・・・長々と書いたが、長過ぎるし、かなり過激になったので、全部カットして、結論だけ言いたい。(これでも長いが)

世界遺産の価値
京都、奈良周辺はどこに行っても、「世界遺産」の文字を目にする。これだけ集中していても、やはり、文化施設や地元の人にとっては、「世界遺産」は誇らしいものだろう。
ましてや、地方の「世界遺産」は、地元の人にはアイデンティティの全てになりかねないほど、大きな存在だ。

『襟裳岬』の「♪何も無い春です」の歌詞に怒った地元だが、逆にもし、知床のように世界遺産にでもなれば、それはもう、命がけで守ろうとするだろう。
俗世の汚れが「何も無い」襟裳岬の人にとっては、「何も無いことの価値」が解らないから、俗世の価値「世界遺産」を欲しがることになるだろう。
「価値」を自ら見いだせない人にとっては、しかるべき霊験あらたかな天上の声が、「汝を、世界遺産とする、以後よろしく守るべし」と告げれば、その日から天の下部に化す。

「世界遺産」は「賞」と同じで、芸術や料理のように、自分で価値が解らない人のための解説書のようなものだ。
料理の美味い不味いは感覚そのもので、状況により人により、感じ方は様々だが、価値の定義を勝手に定めて、「★幾つ」などと発表すれば、自分で味の分からない人ほど、それを食べたがる。同様に、国家や団体が出す「賞」も、「価値」の創出であり、実体とは関係ない。

顕彰には目的がある
人の行いは、賞に関係なく存在し、一生懸命やっている人の価値は皆等しいが、それが人々の求めるモノにマッチすれば、社会的な価値が生まれる。
社会的な価値は、人々の心と直接響き合うものだが、社会維持システムとしての組織が、その資材として利用しようとする時、「賞」なるモノが生まれる。

顕彰は社会組織に有益なものとして、国家や団体の都合で拾い上げられる。国家に都合の良い働きには、勲章があり、商業団体や利益団体に利用されるために、様々な賞がある。
ミッシェランの三つ星店など、タイヤと旅行誌を売るために派生した付加価値であり、各種の芸術賞も、作品を商品化する目安として生まれた付加価値だ。
また、賞を創ること自体で、自らの権威の力にするノーベル賞のようなものもある。

こうした、権威と付加価値創りに長けたヨーロッパは、一神教の地であり、「信じる対象を創造する」体質が備わっている。
オリンピック、ワールドカップ、ノーベル賞、様々な芸術賞・・・そして「世界遺産」

現金なアメリカや中国は、こういうことが得意ではない。アメリカは付加価値より、多くの人が良いと思うモノが良く、中国は為政者の都合に良いものが良い。
日本は、そのどちらでもなく、「私的な興味」か、逆に、日本アカデミー賞のように、おらが村の物まね顕彰だ。いずれにしても、自ら付加価値を創造することができず、物まねや迎合ばかりに、愚直に熱心だ。

日本遺産
日本は、日本本来の「私的な興味」だけに邁進すべきだ。
金を求めたスペインの侵略と戦ったインカが、捕まえたスペイン人の口に、溶かした金を流し込む図がある。「そんなに金が欲しいか」の、怒りが表れている。
ヨーロッパ人の金に対する価値観と、インカの価値観が違ったように、日本人の価値観は欧米人にとっては奇異であり、同時に、垂涎のものでもあるのだ。

「黄金の国ジパング」は、日本人にとっては信仰の対象が、欧米人にとっては欲望の対象でしかないことを表している。
だから、日本人は欧米人の価値観に迎合すべきではない。彼らが興味あるなら、欲しがれば良いが、日本は、彼らと同じ土俵、同じ競売会に参加すべきではない。
「これは売り物ではありません」というスタンスを、付加価値にすれば良いのだ。

売らないと言えば、何としても、「得てしがな見てしがな」が人情だ。
欧米の価値観に迎合して、カモになるより、孤高の姿を強調することで、向こうから近寄ってくる。
欧米の価値観、「世界遺産」で、不毛の争いをしても損をするばかりだ。

今回のトラブルをきっかけに、日本は、一切の世界遺産を返上し、日本は評価も批判もされない、実質上の世界遺産「日本」になれば良い。
世界が躍起になって欲しがる「世界遺産が一つも無い国、日本」になり、自然文化の永世中立国を宣言すれば、絶対的価値を手に入れることができる。

日本各地の、世界遺産に指定された自然や文物の地には、「世界遺産」の石碑があり、今更、返上できないの思いがあるだろうが、「元」、または「脱」の一文字を刻印して、価値があっても参加しませんの記念碑にすれば良い。そして、日本の中で日本独自に価値を顕彰し、日本遺産を創れば良い。

「世界遺産」離脱は、日本の強烈なアピールになる。