RPK2 is an essential receptor-like kinase that transmits the CLV3 signal in Arabidopsis
Kinoshita et al. Development (2010) 137:3911-3920.
doi:10.1242/dev.048199
茎頂分裂組織(SAM)の幹細胞は、ホメオドメイン転写因子WUSCHEL(WUS)とCLAVATA3 (CLV3 )のコードする分泌ペプチドによる負のフィードバックループによって維持されている。茎頂分裂組織において機能しているCLV3ペプチド受容体として、ロイシンリッチリピート(LRR)受容体型キナーゼ(RLK)のCLV1と、LRR受容体のCLV2と膜貫通キナーゼCORYNE(CRN)/SUPPRESSOR OF LLP2(SOL2)から構成される複合体の2種類が知られている。これらのCLV3受容体は相加的に作用していることが機能喪失変異体の解析から明らかにされているが、2つの受容体の二重変異体の表現型はclv3 変異体の表現型に比べると弱いことから、CLV3受容体がCLV1、CLV2-CRN/SOL2以外にも存在することが推測されている。東京大学の澤らは、CLV3シグナル伝達に関与する新規因子を単離することを目的にシロイヌナズナのEMS処理変異体集団から合成CLV3ペプチド(MCLV3)に対する感受性が低下した変異体clv3 peptide insensitive (cli )の選抜を行なった。得られた変異体のうち強いMCLV3抵抗性を示すcli1 変異体について詳細な解析を行なった。cli1 変異体はMCLV3存在下で茎頂分裂組織が活性を維持しており、抽だいが誘導された。また、clv2 変異体やcrn /sol2 変異体と同様にMCLV3存在下での根の伸長抑制を起こさなかった。よって、CLI1 はCLV2 やCRN /SOL2 と同様にMCLV3を介したシュートと根の分裂組織のサイズを制御するシグナルに関与していると考えられる。マップベースクローニングにより、cli1 変異の原因遺伝子は、以前にRCEPTOR-LIKE PROTEIN KINASE 2 (RPK2 )もしくはTOADSTOOL 2 (TOAD2 )として報告されているLRR-RLKをコードする遺伝子At3g02130 に1塩基置換が生じ、翻訳産物のAPT結合部位がアミノ酸置換したものであることがわかった。rpk2 変異体は、MCLV3を添加しない条件では花に形態異常が生じるが、それ以外には際立った変化は示さなかった。RPK2 は花序分裂組織、花分裂組織、花器官原器、根端分裂組織で発現していた。茎頂分裂組織でのRPK2 の発現を詳細に観察すると、周辺部での発現が強く、中央帯での発現は弱かった。RPK2 を35Sプロモーターで過剰発現させた個体は、茎頂分裂組織の発達が遅れ、根端分裂組織が小さくなって根が短くなり、しばしば花に異常が見れるといったCLV3 過剰発現個体やwus 変異体で観察されるものと同じような表現型を示した。RPK2 過剰発現個体の形態異常の程度は、RPK2 の発現量と一致していた。rpk2 変異体茎頂分裂組織でのCLV3 やWUS の発現量は野生型とそれほど大きな差は見られなかった。CLV1、CLV2とRPK2の関係を調べるために、それぞれの単独、二重、三重変異体の茎頂分裂組織の形状を比較した。その結果、変異が多重になるにつれて茎頂分裂組織が肥大し、帯化するものが現れるようになった。また、clv1 clv2 rpk2 三重変異体の表現型はclv3 変異体と似たものになっていた。変異体の花分裂組織の形態異常に関しても、rpk2 はclv1 、clv2 と相加的に作用していた。RPK2 のCLV3-WUS シグナル系における位置について解析したところ、WUS はRPK2 に対して上位に位置していることがわかった。生化学的な解析から、RPK2タンパク質はCLV1複合体やCRN/SOL2-CLV2複合体とは別個にホモオリゴマーを形成することが確認された。以上の結果から、PRK2はCLV3シグナル伝達に関与する第3の経路を構成していると考えられる。PRK2がCLV3ペプチドを受容するかの詳細な解析は行なっていないが、おそらく、CLV3を含む複数のCLEペプチドを受容するものと思われる。