詩人PIKKIのひとこと日記&詩

すっかりブログを放任中だった。
詩と辛らつ日記を・・

ナイフ

2009年09月01日 | 日記
雨上がりの
虹が昇ってきた朝には
ナイフだけを握りしめて
旅にでよう

ポケットの中の
ナイフだけを握りしめて
廃線の果てのあの町から
この世界にやってきたみたいに

きみから贈られた
赤い小さな万能ナイフ
スイス国旗が刻まれた
しんやりとしたナイフ

このナイフで
なんどビールの栓を抜き
山小屋のストーブの前で
きみを想いながら 
なんど缶詰を開けたことだろう

きみを見舞った
夕暮れの病室の片隅でも
真っ赤な林檎を片手に
「最後まで切らずに皮をむけるんだよ」

きみの死から 
もう十年も経つというのに
まるでいよいよ
色褪せることのないナイフ

きらり きらきら
まるで
水の中のナイフみたいに
きみの思いで一杯のナイフ

そのナイフだけを片手に帰ろうか
廃線の果てのふるさとへと
ふるさとには
もう誰も待つ人はいないというのに

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