<広島に「旅の夜風」が流れ始めた=花も嵐も踏み越えて>

 IOCバッハと日本政府スガによるコロナ玉砕戦法が明らかとなって、ポスト菅が一挙に表面化してきた。神道・神風を信仰する神道政治連盟が、森喜朗内閣以来、継続してきた悪しき清和会政治も、遂に終末を迎えるかもしれない。その確率は90%以上であろう。

昔の演歌「旅の夜風」が広島の方角から聞こえてきた。「花も嵐も踏み越えて」という宏池会設立者・池田勇人の愛唱歌である。「やがて芽が吹く春が来る」かもしれない。自民党政治の振り子の原理である。針が右に触れまくって、人々を顧みなくなって20年の神道政治が、余りにも長すぎた。

 財政は疲弊し、破綻寸前だ。貧困と自殺の日本である。そこにコロナ大恐慌である。そしてコロナ五輪強行というのだから、この世の終わりを告げているのか。

暴政を可能にしてきた3分の2議席、それを実現してきた立役者・公明党創価学会もまた、国民から指弾を受け始めている。

 

<身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ、に気付いた岸田文雄>

 日本国憲法は、自由党総裁の吉田茂内閣の下で誕生した。敗戦下の日本国民の総意を、与野党国会議員が決断したもので、その吉田の愛弟子の池田勇人が、戦前の国家主義を引きずる、米CIAが操る岸信介に対抗して、立ち上げた保守本流宏池会が、いま総決起したのである。

 二度と戦争を繰り返してはならないと決意した、主に霞が関の官僚OBが集まった政治集団である。生き馬の目を抜く永田町環境下、時に遅れをとりがちだが、軍拡を排し、国民生活を重視する政治路線は、自民党内で強い影響力を誇ってきた。喧嘩は苦手だが、政策面では他を寄せ付けなかった。

保守本流・リベラル政治が死滅することはない。改憲軍拡のために、隣国と緊張関係を招来させる岸・安倍の清和会政治は、平和国民にとって、もっとも唾棄すべき路線である。保守本流は、まともな野党の政治路線に近い。およそ隣国から「戦争神社」と弾劾されてきている靖国神社参拝など、ほとんどの宏池会メンバーにとって関心外のことである。

 そんな保守本流・宏池会が、遂に「身を捨てる覚悟」をした。安倍1・5億円事件の解明を、幹事長の二階俊博に突き付けた。身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ、である。

 コロナ五輪・安倍犯罪を掛け合わせると、永田町に激変が走ることになる。宏池会決起に対して、林検察も動かざるを得ない。

<コケにされっぱなしの宏池会が、とうとう怒り出した!>

 傷つき追い詰められた安倍晋三は、さしずめ神風物語の、のた打ち回るヤマタノオロチか。必死で御用雑誌などを動員して、幻でしかない復権を書かせている。実際は心臓が高鳴り、いまにも破裂しそうで、安眠無縁である。

 最近は、ポスト菅後継論を口走って、後継者の菅をはね、両者の関係悪化を暴露した。そして茂木・加藤・下村・岸田の順で4人を後継候補を上げ、キングメーカー気取りである。事情通は「安倍家の後継者の本命は加藤、岸田は最初からなかった。罠にかけ続けた7年8か月、宏池会壊滅作戦も気付かなかった岸田のアホぶりを、安倍自ら口走ったのだ」となる。

 とうとう堪忍の緒が切れた岸田である。1・5億円の宏池会壊滅作戦の使途の解明を、保守本流の意地を政治見せつけた。公然と安倍退治を鮮明にしたことになる。安倍が飛び上がって驚く様子を見て取れる。

 頼みの綱の麻生太郎など、保守本流を裏切った輩に影響力はない。

 

<溝手元国家公安委員長・岸田宏池会会長・上川法務大臣がスクラム>

 清和会政権継続に、すっかり永田町との縁を切断、自公政権を批判してきたジャーナリストだから、宏池会の溝手顕正の存在さえ知らなかったし、無視してきたことを、大いに反省している。

 彼こそ池田勇人や宮澤喜一の後継者だったのだ。護憲リベラルがその真髄のはずである。被爆地・広島県民の心情でもあろう。しかも、国家公安委員長を歴任していた。警察の中枢は、みな彼と同じ東大OBのはずである。学閥がモノを言う永田町と霞が関だから、日本共産党でさえもトップは東大OBだ。日本の政治風土の分かりにくい所だ。

 言いたいことは、溝手の警察人脈は太い。そこから警察・検察の動向も耳に入ってくる。しかも、岸田は、溝手を兄貴分として尊敬してきた。岸田決起に溝手の役割は大きい。今の岸田は、広島の自民党県連の会長だ。派閥の会長として保守本流を代表し、自民党内において広島県連をも代表、いわば二刀流使いという、好位置にある。

 かてて加えて、法相の上川陽子もまた、宏池会メンバーである。溝手・岸田・上川の三羽烏がスクラムを組んでいる政治的意味は、第三者には理解できないだろうが、検察は理解できる、間違いないだろう。

 

<林真琴検事総長も1・5億円事件追及へ始動=安倍捜査にはずみ>

 これまで、ことあるごとに林真琴検事総長を𠮟咤激励をしてきた。正義の検察の復活が、日本国民・主権者に貢献する、全体の奉仕者としての任務を果たす責任があるためである。

 「巨悪を眠らせない検察」の復活に期待をかける民意を代表してきた、そのための叱咤である。吉田茂・池田勇人の遺産である保守本流・宏池会の決起となれば、検察は動くだろう。動かざるを得ない。民意だからである。

 血税である政党助成金の安倍1・5億円重大事件に、ケリをつける場面である。安倍が早期解散にこだわった理由も理解することが出来る。しかし、解散は出来ない。国会閉会と同時に東京地検特捜部は、林の指揮のもとに動くと予見したい。社会部記者の覚醒の時でもある。

 安倍は1・5億円の釈明会見を求める記者団の質問に、普段の口八丁にもかかわらず、沈黙したことも分かってきた。 

 

<自民党本部の元宿・金庫番の官邸注進で判明>

 事情通の指摘で、納得する動きも出てきた。自民党本部の元宿が、先ごろ官邸に飛び込んだというのだ。彼を知らない政治記者がいるかもしれないが、彼こそがミスター金庫番である。

 筆者は、田中角栄の九州遊説に同行した際、彼の存在を知った。大きな黒カバンに万札が詰まっていた。その人物が金庫番として、今では事務総長というのである。

 自民党本部の金のすべてを掌握している人物なのだ。そんな人物が官邸に駆け込んだことが、大いなる謎なのだ。「1・5億円捜査」について、党総裁に報告したはずである。

自民党本部の金庫番それ故に、誰も彼をはじくことは出来なかった。幹事長室の奥島のことも思い出した。彼はとうに引退した。

 

<日米の前トップが仲良く犯罪でお縄も想定されてきた>

 ワシントンの捜査当局も活発に動いている。読売新聞の特派員が報道してきた。トランプ捜査である。為政者は、法律に違反することにためらいがない、という証明なのであろうが、それゆえに近代法は、法の下に平等という崇高な原則を掲げて、為政者を監視するように主権者と検察に求めている。

トランプと安倍が、共に国民を裏切ったことで、捜査線上に浮上してきた。因果応報は世の常なのか。

2021年5月29日記(東芝不買運動の会代表・政治評論家・日本記者クラブ会員)

 

【ニューヨーク=寺口亮一】ワシントン・ポスト(電子版)は25日、トランプ前大統領のビジネスを巡る不正疑惑を捜査してきたニューヨーク州マンハッタン地区検察がトランプ氏や関連企業の幹部を起訴するかどうか決めるため大陪審を招集したと報じた。2年以上かけて証拠を集めてきた検察の捜査は新たな段階に進む。