詩人PIKKIのひとこと日記&詩

すっかりブログを放任中だった。
詩と辛らつ日記を・・

掲示板で母についての質問があったので・・

2009年06月19日 | Weblog
  母の思いで

脳梗塞のあと
動脈瘤破裂手術で
痴呆症で寝たきりの母を
ベッドから車椅子でソファーへと運んで
朝食を食べさせてあげてからの出勤だった
すぐ側にポータブルトイレを置いて

でも時々仕事から帰ると
ポータブルトイレに座ることも不可能になって
下半身裸で寝転んで
わんわんと泣いている母がいた
母を抱き起こしながら
わんわんと泣いている自分がいた

休みの日には
できるだけ運動をしようと
お手玉やボールを使っての
キャッチボールだった
昔ソフトボールの選手だったという母を
「補欠じゃなくてバケツだったんだろう母さん」と言って
思いっきりぶつけられたこともあったっけ

運動に疲れると
ぼくの大好きな
宮澤賢治の童話や詩や
アイヌ民族のユーカラを一緒に読んだあと
「これはどうだった?」と聞くと
いつもきょとんとした顔をしてた母
でも好き嫌いははっきりしていた母だったので
たぶん気にいっていたんだと思う

会社からの上司の見舞いがあった日から
意識不明となって
一週間後に亡くなってしまった母だった
その時の話を聞こうとしたら
その上司はそのすぐ後に
遠くへと転勤になっていた

ぼくの唯一の心残りは
「今年だけは桜を見せてね」との母の頼みに答えてやれなかったこと
仕事が忙しかったり
冷たい雨の続いていた年だった


   笑え

脳梗塞と心臓手術とで
ボケが急速に進行して
寝たきりになった母に
ある日突然
聞かれたことがある
「死んだらどうなるんだべか」

どんな立派なことを言おうと
どんなに立派に振舞おうと
ぼくらは 
身近な自然についてさえ
ほとんどなにひとつ知らない
ちっぽけで傲慢な存在

笑いで誤魔化してでもいいから
その不安に耐えなければならない
自分のためではなく
誰かのために生きなければならない
だからぼくも 
できる限りの力で
母を笑わせてやろうとしたんだ

笑え 笑え 
もっと笑え
もっと大きく口を開けて
笑え 笑え もっと笑え
のどチンコが見えるぐらいに
世界中に笑い声が響くまで

もっと もっと
大きく口を開けて
笑え 笑え もっと笑え
涙のなかなんかで
たった一回きりの人生を送ってはならないから

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