社民党 京都府連合 野崎靖仁 副主席語録
社会民主党 中央規律委員 野崎靖仁、55歳。
日々の思いを綴ります。
 



葉室麟、冲方丁、伊東潤、天野純希、富樫倫太郎、乾緑郎、木下昌輝の
7人の作家による歴史小説アンソロジー『決戦!大坂城』(講談社)を読む。



『決戦!関ヶ原』に続くシリーズ第2弾です。


葉室麟「鳳凰記」は、大坂の陣を豊臣家の視点で描いた作品です。

朝廷を支配下に置くべく圧力を強める家康。

帝の外戚として豊臣家をしのぐ存在となるため、
家康の孫娘・和子の入内が行われようとしていた。

禁裏の守護を第一としていた秀吉の遺志を継ぎ、
茶々と秀頼は朝廷を守るための戦いを開始する…

大坂の陣は、徳川家と豊臣家が戦うことで、
和子入内を遅らせるための時間稼ぎの戦いであった、
とする解釈です。

家康の寿命が尽きるのが先か、大坂城が落ちるのが先か。

結末はわかっているものの、最後まで緊張感が保たれています。


木下昌輝『日ノ本一の兵』は、真田「左衛門佐」信繁が主人公。

「左衛門佐」と呼ぶところがポイントになります。

「日の本一の兵の頸を取りたい」との思いから、
徳川家康の頸を取ることを目論む左衛門佐。

「幸村」を使った左衛門佐の秘策が始まる…

皮肉な形で左衛門佐の願いは実現するのですが、
それは読んでのお楽しみです。


富樫倫太郎「十万両を食う」は、大坂の商人、近江屋伊三郎が主役。

大坂での長期戦を当て込んで、九州で買い込んだ粗悪な米で
一儲けを企んだ近江屋伊三郎。

ところが冬の陣はあっさり和睦となり、
大量の在庫を抱え込んだ伊三郎は破産の危機にあった。

夏の陣を前にして、徳川方は粗悪な米を買おうともせず、
包囲された大坂方に粗悪な米を売るすべもない。

そんなとき、抜け穴を通じて大坂城内に米を運び入れ、
高値で売りさばこうという話が持ち込まれて…

大坂の大商人・淀屋から受けた屈辱を晴らすため、
伊三郎が「十万両を食う」までの展開は、先が読めません。


乾緑郎「五霊戦鬼」は、徳川の家臣・水野勝成が主役。

忍術を使う僧・法雲との対決が描かれる剣豪小説のようなお話です。

大坂の陣に徳川方の一員として参加した勝成。
その命を狙わんとする法雲。

宮本武蔵も登場してバトルを盛り上げます。

映画『五条霊戦記 GOJOE』を思わせるタイトル。
そのノリで楽しめばいいでしょう。

Gojoe / 五条霊戦記 (2000)


天野純希「忠直の檻」は松平忠直を描いた作品。

家康の二男・秀康の子でありながら、父子二代にわたって冷遇される忠直。

徳川家という巨大な檻の中で活きることを余儀なくされる忠直は、
次第に屈託を抱えるようになります。

そんな忠直の心が安らぐのは、側室お蘭の側にいるときだけ。

忠直は大坂冬の陣で真田丸の戦いで大敗を喫し、
夏の陣で大坂城への一番乗りを果たします。

結局、忠直は暴君の汚名を着せられて配流されることになりますが、
なぜか救いのあるラストになっています。


冲方丁「黄金児」は、豊臣秀頼が主役。

文武の才能に恵まれた秀頼は、透徹した見識によって、
家康の野心を見抜き、巧みにその魔手から逃れる。

家康との間に名人同士の棋譜を見るような駆け引きを繰り広げ、
あくまで達観した視点で自らの最期を迎える秀頼。

『決戦!関ヶ原』の「真紅の米」で小早川秀秋の評価を一変させたことに続き、
豊臣秀頼を神の視点を持つ人物として描いています。

 
伊東潤「男が立たぬ」は、福島正則の弟・正守が主役。

坂崎出羽守直盛の切腹を見届ける使者として、
柳生宗矩が訪れるところから話が始まります。

坂崎は、なぜ切腹を迫られたのか。

柳生宗矩は、坂崎に何を求めたのか。

豊臣方として福島正守が大坂城に入る経緯とともに、
その謎が明かされていきます。

「男が立たぬ」ゆえに大坂城での死を選んだ秀頼と正守。

「男が立たぬ」ゆえに秀忠の要求を拒否した直盛。

そして、宗矩は…

意地を通す武士の生き方は、大坂城と共に滅びてしまったのでしょう。


なかなかバラエティに富んだアンソロジーでした。

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