読書な日々

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『定本ビル・エヴァンス』

2015年02月11日 | ジャズ
『定本ビル・エヴァンス』(ジャズ批評ブックス、2003年)

またまたビル・エヴァンス本です。定本というだけあって、巻末にはかなり徹底したディスコグラフィーがある。ただ中山康樹の『エヴァンスを聴け』を読んだ後なので、とくに感銘はないが、これだけを見る人は、その徹底ぶりに感銘を受けるだろう。たんにタイトルと演奏者などのデータが書いてあるだけではなくて、数名の批評家によるコメントもあって、これだけでもずいぶんと価値のあるものになっている。

このディスコグラフィーが全体の後半を占めており、残りの前半はビル・エヴァンスの思い出や音楽批評になっている。思い出だから、そこに音楽批評を書かれていることを期待するべきではないけど、日本にきたビル・エヴァンスがどこでどうしたなどという話はどうでもいいことのように思うのは私だけだろうか。

音楽批評のほうも、似たり寄ったりで、最悪なのは『「ポートレート・イン・ジャズ」を「読む」』という批評。Portrait In jazzの詳細な音楽批評が読めるのかと思いきや、当て外れもいいところで、この有名なアルバムの音楽のことは一言も触れられていない。そこに至るまでのトリオのことや、ビル・エヴァンスに影響を与えた音楽家のことばかりが書かれている。

概して、ジャズ評論家というのは、音楽批評が下手なのではないだろうか。そんなにたくさんの批評を読んでいるわけではないので、ずいぶんと早計な判断かもしれないが。もちろんジャズ批評家が、ジャズをこよなく愛していることも、また優れたジャズ演奏を聞き分ける鑑識眼ももっていることを否定するものではないけれども、ジャズの音楽を素人にも分かるように書く、つまりご自分が感じている曲をきちんと音楽分析して書くという修練ができていない人が多いのではないかと思う。

確かに私たち素人はただ感性のままに聞いていい作品か悪い作品かを判断している。私の知り合いのジャズ歴の長い人がいて、私は最近ジャズを聴き始めたばかりなのでいろいろ教えて下さいねと言ったら、別に教えることなんかないよ、ジャズは波長が合うか合わないかだけだから、と言われたことがあったが、それはその通りであるけれども、それは素人のレベルであって、ジャズ評論家たるものは、それをきちんと音楽の言葉で分析してみせることができなければいけないのではないだろうか。

多くの批評家の書いていることは、私には訳が分からないことが多い。いっそ、上の人みたいに、波長が合うか合わないかだけだよ、と言ってくれるほうが気が楽だ。



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