ルーツな日記

ルーツっぽい音楽をルーズに語るブログ。
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レイ・ラモンターニュ

2011-02-24 19:09:00 | SSW
RAY LAMONTAGNE AND THE PARIAH DOGS / GOD WILLIN' & THE CREEK DON'T RISE

グラミー賞『Best Contemporary Folk Album』部門を受賞したレイ・ラモンターニュの「God Willin' & The Creek Don't Rise」。先日当ブログで取り上げたキャロライナ・チョコレート・ドロップスはトラディショナル・フォーク部門でしたが、こちらはコンテンポラリー・フォーク部門です。

ニューハンプシャー出身の孤高のシンガー・ソング・ライター、レイ・ラモンターニュ。生まれて間もない頃に両親が離婚し、住む場所を転々とする生活を余儀なくされる。喧嘩ばかりしていたと言う学校生活を卒業すると、あてもないまま家族のもとを離れて行く。それから数年後、靴工場で働いていたある朝、目覚めた時にラジオから流れていたスティーヴン・スティルスの「Treetop Flyer」に感銘を受け、彼は仕事を辞め、自ら歌うことを志す。こんなバイオからも彼の持つ特別な何かを感じさせられますよね。そしてアルバム・デビューは04年の「TROUBLE」。今作「GOD WILLIN' & THE CREEK DON'T RISE」は4作目のスタジオ・アルバムです。

彼の歌声は良いですよね~。暖かい声質の中に繊細な感情表現と張りつめた緊張感があります。それでいて荒々しくもあり、モワッとした熱気がある。デビュー以来変わらないそんな彼の魅力が今作ではさらに研ぎ澄まされている印象。前3作でプロデューサーを務めたイーサン・ジョーンズと分かれ、セルフ・プロデュースで臨んだのも良かったのかもしれません。前作のようなオーセンティックなソウルとかブルースを感じさせる派手さはないものの、よりパーソナルな深みとピュアなエモーションに貫かれています。また“~AND THE PARIAH DOGS”というバンド名義となっているところも肝。骨格としてレイのアコギ弾き語りを感じさせながら、聴き進めていくうちにシンプル且つナチュラルなバンド・サウンドがレイの歌心に溶け込んでいきます。

とにかくこのバンド・サウンドが良いんですよ! ちなみにエンジニアはライアン・フリーランド。この人、かのジョー・ヘンリーが携わった作品の多くでその手腕を発揮している人。(もちろんジョー・ヘンリーがプロデュースしたキャロライナ・チョコレート・ドロップスの「GENUINE NEGRO JIG」でもこの人がエンジニアを務めています)。しかも今回のバンド、THE PARIAH DOGSのメンツは何らかの形でジョー・ヘンリー作品に参加した人達で固められているという、なかなか興味深い人脈。(ジョー・ヘンリー本人は参加してないようですけどね。)

まず1曲目の「Repo Man」が格好良い! 土っぽくざらついたファンキーなリズムにやられます。 その核となるドコドコと跳ねるドラムはジェイ・ベルローズ!! T・ボーン・バーネットやジョー・ヘンリー関連の名作の影にこの人ありってドラマーですね。私この人大好きなんですよ! そしてベースは前作にも参加していた女性、ジェニファー・コンドス。彼女はジェイ・ベルローズと一緒に矢野顕子のバックを務めたりもしていましたね。さらにギターはグレッグ・リーズ! この人もジョー・ヘンリー周辺でよく名前を見かける名手ですね。そしてもう一人のギタリストがサン・ヴォルトなどで知られるエリック・ヘイウッド。この二人のギターの絡みが良いんですよ! 両者ともスティール・ギターなどスライドを得意とする方達ですが、その辺のバランスも保ちながら見事に噛み合っています。

例えば「New York City's Killing Me」でのグレックの揺れるようなエレキ・ギターと、後半から入ってくるエリックのスライド! アメリカーナな郷愁を感じさせられますね~。優し気なレイの歌声も滲みます。そしてグレッグとエリックの両者がペダル・スティールを弾くタイトル曲「God Willin' & The Creek Don't Rise」。ゆったりとした大陸の空気のように重なるスライドのうねり。そして重くタメの効いたジェイ・ベルローズのドラムも秀逸。さらにレイのヴォーカルもソウルフル!やっぱりレイの歌声には特別な響きがありますね。ブルージーな「This Love Is Over」で聴かせる情感の揺れなんかはかなり深い。

フォーキー且つ独特の浮遊感を持つ「Are We Really Through」も印象的。 トロっとしたレイの歌声に引き込まれます。これ良い曲なんですよね~。そして良い曲と言えば、朗らかなカントリー・テイスト香る「Beg Steal Or Borrow」を忘れてはなりません。この曲は今回のグラミーで主要部門である『Song Of The Year』にノミネートされてたんですよね~。残念ながら受賞は逃しましたけど。これはシンプルなメロディーゆえに普遍的な魅力を持った曲ですね。サビの「Young man ~ 」というフレーズが妙に心に残ります。

この「Beg Steal Or Borrow」もそうなんですが、グレッグがバンジョーを弾く「Old Before Your Time」や、カントリー・ロックな「Devil's In The Jukebox」などの土っぽいフレイバーが、全体的なしっとりとした緊張感に爽やかな風を吹き込んでるようで、良いんですよね~。レイ一人による「Like Rock & Roll And Radio」の素朴さもしかり。いやはや、素晴らしいアルバムですよ!



ちなみに『Best Contemporary Folk Album』部門にノミネートされていた5作品は以下の通りです。

Ray LaMontagne And The Pariah Dogs / God Willin' & The Creek Don't Rise
Jackson Browne & David Lindley / Love Is Strange - En Vivo Con Tino
Mary Chapin Carpenter / The Age Of Miracles
Guy Clark / Somedays The Song Writes You
Richard Thompson / Dream Attic


ちなみにこのアルバム、ライアン・フリーランドの手腕が『Best Engineered Album, Non-Classical』にノミネートされていました。


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