6月4日、すみだトリフォニーホールにて、フィリップ・グラス&パティ・スミスによる『THE POET SPEAKS ギンズバーグへのオマージュ』を観て参りました。こちらはビート文学を代表する詩人アレン・ギンズバーグの生誕90周年を記念して行われたもので、フィリップ・グラスのピアノをバックに、パティ・スミスがギンズバーグの詩を朗読するという、スペシャルなコンサートでした。
フィリップ・グラスは、ミニマル・ミュージックの大家として知られ、現代音楽最高の巨匠とも賞される作曲家でありピアニスト。そしてパティ・スミスはニューヨーク・パンクの女王と呼ばれる、言わずと知れた生きる伝説。
私、こう見えてパティ・スミス、大好きなんですよ!ライヴは97年の初来日以来、来日する度に欠かさず観に行っています。いつ観てもパティは素晴らしかったです。パティのライヴに外れなしです!ですが、詩の朗読となると、なかなか生で聴くことができなかったんです。唯一聴けたのは02年のフジロック、アヴァロンでサプライズ的にやったアコースティック・ライヴぐらいですかね。もちろん他にもイベントなどで、散発的に詩を読んでくれたことはあったかもしれませんが。もちろん私はパティの歌、特にパンキッシュなものが好きなんですが、彼女の原点ともいえる詩の朗読も大好きなんです。ですがなかなか日本では見れない。08年にケヴィン・シールズとの「THE CORAL SEA」がリリースされた時、こういうのを何とかして日本で見れないものかと悔しい思いもしたものです。ですがついに、今回の『THE POET SPEAKS ギンズバーグへのオマージュ』ですよ!こういうスペシャルな企画は海外でしかやらないものと思っていましたが、よくぞ日本でやってくれました!!
私が観たのはこの日の14時の回で、日本での初演。前から3列目、パティの正面という素晴らしい席で堪能させていただきました!
コンサートは、まずオープニング・アクトのジェシー・パリス・スミス&テンジン・チョーギャルのパフォーマンスに始まりました。
ジェシー・パリス・スミスはパティ・スミスの娘さん。父上はもちろん今は亡きMC5のフレッド・スミス。ジェシーはピアノを弾き、詩の朗読もする。とても物静かな雰囲気で。そこにテンジン・チョーギャルの歌が乗る。この方はチベット人の歌手だそうですが、まるでヒマラヤの山にこだまする様な素晴らしい歌声に圧倒されましたね。その民族的な響きと、ジェシーのピアノや朗読との不思議な調和が醸す、何とも言えないオルタナ的な空間に引き込まれました。
二人が3曲ほど披露したあと、いよいよフィリップ・グラスとパティ・スミスが登場。舞台にはフィリップとパティの2人だけ。後ろには大きなヴィジョンにアレン・ギンズバーグの写真が映し出されている。そしてフィリップのピアノをバックにパティが詩を朗読する。まずパティの作で「LAND」に収められていた「Notes To The Future」から始まり、ギンズバーグの「Wichita Vortex Sutra」、パティの「The Blue Thangka」、そしてギンズバーグの「Sunflower Sutra」、という合わせて4編。
美しさの中にどこか不安感を掻き立てられるようなフィリップのピアノ、ゆっくりと、言葉に魂を宿していくようなパティの声。パティの紡ぐ言葉はいつしか生き物のように脈打っていく。時に優しく、時に激しく。
圧巻は「Wichita Vortex Sutra」。中盤から徐々に荒々しく抑揚していくパティ・スミスの声。それはまるでギンズバーグの言葉とパティの衝動がシンクロするかのようであり、フィリップ・グラスの反復するピアノ・フレーズがパティの内なる宇宙を引き出していくかのようでもある。パティは腕を上げ「The end of the War!」「The end of the War!」と繰り返し、おもむろに、ぺっと唾を吐く。
この「Wichita Vortex Sutra」とか「Sunflower Sutra」などは、フィリップのピアノもパティの朗読も躍動感に溢れていてゾクゾクしましたね。これはパンクですよ!バックがピアノだけにデビュー・シングルの「Piss Factory」のような雰囲気も感じられたり。年輪を重ねた含蓄の深さを感じさせつつ、研ぎすまされた緊張感によるリアルな詩表現に痺れました。
4編の熱演を終え、一旦ステージを後にしたフィリップ・グラスとパティ・スミス。そして再びパティが、今度はジェシー・パリス・スミスとレニー・ケイを伴って登場。パティ・スミスのアコースティック・ライヴも数曲あるとは聞いてましたが、まさかレニー・ケイも来てくれるとは!これは嬉しいサプライズ。盟友レニーのアコギと、愛娘ジェシーのピアノをバックにパティが歌う。曲は「Dnacing Barefoot」、「Wing」、「Pissing In A River」の3曲。ポエトリー・リーディングに比べると、大分リラックスした雰囲気で、パティの人懐っこい柔らかい笑顔も印象的。「Wing」では珍しくパティが展開を間違え、照れ臭そうに観客に謝る場面もあったり、その仕草と笑顔がちょっと可愛かったです。
鳴りやまない拍手の中、パティがフィリップ・グラスを紹介し、続いてフィリップによるピアノ・ソロ。フィリップの曲、ピアノには独特の陶酔感があり、先のポエトリー・リーディングでも、フィリップのピアノが果たした役割というのは相当大きかったということを、ソロを聴いて改めて実感させられましたね。反復フレーズが流れるように紡がれる、もの悲しくも抒情的な音世界は、まるで大河のような1曲に聞こえましたが、後から発表されたセットリストによりますと、「Metamorphosis」と「Closing」の2曲とのことでした。
最後は再びフィリップ・グラスとパティ・スミス、2人によるパフォーマス。「On Cremation of Chogyam Trungpa,Vidyadhara」、「Magic Psalm」、「Footnotes To Howl」というギンズバーグの3編。語り掛けるようであり、歌うようでもあるパティの朗読。身振りを交え、何かを演じるようでもある。そのパティの声と、フィリップのピアノにただただ耳を傾ける。アレン・ギンズバーグの詩情とニューヨークの臭いを感じながら。
そしてラストを飾った「Footnotes To Howl」の高揚感は半端なかったですね!「Holy!Holy!Holy!Holy!Holy!Holy!…」と”聖なる”ものを繰り替えすこの詩。足でリズムをとりながら畳みかけるように、叩き付けるように言葉を発していくパティ・スミス。途中、ニューヨークやサンフランシスコが出てくるところへ、東京!と加えて盛り上がったり。いや~、格好良かった! この詩はパティのファンにとってもお馴染みの詩ですしね。1997年の「PEACE AND NOISE」に収録された「Spell」は、パティがこの詩に曲をつけたものでしたから。ちなみに1997年はアレン・ギンズバーグが亡くなった年でもありました。いやはや、生で聴けて良かった!!
さらにアンコールは出演者総出で「People Have The Power」。観客も手拍子したり、サビを一緒に歌ったりの一体感で盛り上がりました。やっぱりこれをやらないとね。
盛り沢山のおよそ2時間でしたが、やはりパティのポエトリー・リーディングの素晴らしさに打ちのめされました。そしてそれはフィリップ・グラスのピアノの素晴らしさでもありました。あと今回は、パティの朗読と同時に、村上春樹さんと柴田元幸さんによる和訳がヴィジョンに映し出されたのですが、それも英語が分からない私にとって、とてもありがたかったです。日本語を読むことで、パティが次々に言葉を畳み掛けるスリルを一層感じることが出来ました。(際どい言葉をそのまま訳されてるところも雰囲気が伝わって良かったです)。
とにもかくにも、フィリップ・グラスとパティ・スミス、お二人の共演をここ日本で観れたことに感謝します!
終演後、会場出口付近に張り出されたセットリストは以下の通り。残念ながらジェシー・パリス・スミス&テンジン・チョーギャルのリストはありませんでした。
01. Notes To The Future
02. Wichita Vortex Sutra
03. The Blue Thangka
04. Sunflower Sutra
05. Dancing Barefoot
06. Wing
07. Pissing In A River
08. Metamorphosis
09. Closing
10. On Cremation Of Chogyam Trungpa,Vidyadhara
11. Magic Psalm
12. Footnotes To Howl
13. People Have The Power
この後パティ・スミスは、ビルボードライヴにて、ジェシー・パリス・スミスとレニー・ケイを伴ったプレミアムなライヴも行ったんですよね。私は残念ながら行けませんでしたけど…。嗚呼、ビルボードにも行きたかった!
フィリップ・グラスは、ミニマル・ミュージックの大家として知られ、現代音楽最高の巨匠とも賞される作曲家でありピアニスト。そしてパティ・スミスはニューヨーク・パンクの女王と呼ばれる、言わずと知れた生きる伝説。
私、こう見えてパティ・スミス、大好きなんですよ!ライヴは97年の初来日以来、来日する度に欠かさず観に行っています。いつ観てもパティは素晴らしかったです。パティのライヴに外れなしです!ですが、詩の朗読となると、なかなか生で聴くことができなかったんです。唯一聴けたのは02年のフジロック、アヴァロンでサプライズ的にやったアコースティック・ライヴぐらいですかね。もちろん他にもイベントなどで、散発的に詩を読んでくれたことはあったかもしれませんが。もちろん私はパティの歌、特にパンキッシュなものが好きなんですが、彼女の原点ともいえる詩の朗読も大好きなんです。ですがなかなか日本では見れない。08年にケヴィン・シールズとの「THE CORAL SEA」がリリースされた時、こういうのを何とかして日本で見れないものかと悔しい思いもしたものです。ですがついに、今回の『THE POET SPEAKS ギンズバーグへのオマージュ』ですよ!こういうスペシャルな企画は海外でしかやらないものと思っていましたが、よくぞ日本でやってくれました!!
私が観たのはこの日の14時の回で、日本での初演。前から3列目、パティの正面という素晴らしい席で堪能させていただきました!
コンサートは、まずオープニング・アクトのジェシー・パリス・スミス&テンジン・チョーギャルのパフォーマンスに始まりました。
ジェシー・パリス・スミスはパティ・スミスの娘さん。父上はもちろん今は亡きMC5のフレッド・スミス。ジェシーはピアノを弾き、詩の朗読もする。とても物静かな雰囲気で。そこにテンジン・チョーギャルの歌が乗る。この方はチベット人の歌手だそうですが、まるでヒマラヤの山にこだまする様な素晴らしい歌声に圧倒されましたね。その民族的な響きと、ジェシーのピアノや朗読との不思議な調和が醸す、何とも言えないオルタナ的な空間に引き込まれました。
二人が3曲ほど披露したあと、いよいよフィリップ・グラスとパティ・スミスが登場。舞台にはフィリップとパティの2人だけ。後ろには大きなヴィジョンにアレン・ギンズバーグの写真が映し出されている。そしてフィリップのピアノをバックにパティが詩を朗読する。まずパティの作で「LAND」に収められていた「Notes To The Future」から始まり、ギンズバーグの「Wichita Vortex Sutra」、パティの「The Blue Thangka」、そしてギンズバーグの「Sunflower Sutra」、という合わせて4編。
美しさの中にどこか不安感を掻き立てられるようなフィリップのピアノ、ゆっくりと、言葉に魂を宿していくようなパティの声。パティの紡ぐ言葉はいつしか生き物のように脈打っていく。時に優しく、時に激しく。
圧巻は「Wichita Vortex Sutra」。中盤から徐々に荒々しく抑揚していくパティ・スミスの声。それはまるでギンズバーグの言葉とパティの衝動がシンクロするかのようであり、フィリップ・グラスの反復するピアノ・フレーズがパティの内なる宇宙を引き出していくかのようでもある。パティは腕を上げ「The end of the War!」「The end of the War!」と繰り返し、おもむろに、ぺっと唾を吐く。
この「Wichita Vortex Sutra」とか「Sunflower Sutra」などは、フィリップのピアノもパティの朗読も躍動感に溢れていてゾクゾクしましたね。これはパンクですよ!バックがピアノだけにデビュー・シングルの「Piss Factory」のような雰囲気も感じられたり。年輪を重ねた含蓄の深さを感じさせつつ、研ぎすまされた緊張感によるリアルな詩表現に痺れました。
4編の熱演を終え、一旦ステージを後にしたフィリップ・グラスとパティ・スミス。そして再びパティが、今度はジェシー・パリス・スミスとレニー・ケイを伴って登場。パティ・スミスのアコースティック・ライヴも数曲あるとは聞いてましたが、まさかレニー・ケイも来てくれるとは!これは嬉しいサプライズ。盟友レニーのアコギと、愛娘ジェシーのピアノをバックにパティが歌う。曲は「Dnacing Barefoot」、「Wing」、「Pissing In A River」の3曲。ポエトリー・リーディングに比べると、大分リラックスした雰囲気で、パティの人懐っこい柔らかい笑顔も印象的。「Wing」では珍しくパティが展開を間違え、照れ臭そうに観客に謝る場面もあったり、その仕草と笑顔がちょっと可愛かったです。
鳴りやまない拍手の中、パティがフィリップ・グラスを紹介し、続いてフィリップによるピアノ・ソロ。フィリップの曲、ピアノには独特の陶酔感があり、先のポエトリー・リーディングでも、フィリップのピアノが果たした役割というのは相当大きかったということを、ソロを聴いて改めて実感させられましたね。反復フレーズが流れるように紡がれる、もの悲しくも抒情的な音世界は、まるで大河のような1曲に聞こえましたが、後から発表されたセットリストによりますと、「Metamorphosis」と「Closing」の2曲とのことでした。
最後は再びフィリップ・グラスとパティ・スミス、2人によるパフォーマス。「On Cremation of Chogyam Trungpa,Vidyadhara」、「Magic Psalm」、「Footnotes To Howl」というギンズバーグの3編。語り掛けるようであり、歌うようでもあるパティの朗読。身振りを交え、何かを演じるようでもある。そのパティの声と、フィリップのピアノにただただ耳を傾ける。アレン・ギンズバーグの詩情とニューヨークの臭いを感じながら。
そしてラストを飾った「Footnotes To Howl」の高揚感は半端なかったですね!「Holy!Holy!Holy!Holy!Holy!Holy!…」と”聖なる”ものを繰り替えすこの詩。足でリズムをとりながら畳みかけるように、叩き付けるように言葉を発していくパティ・スミス。途中、ニューヨークやサンフランシスコが出てくるところへ、東京!と加えて盛り上がったり。いや~、格好良かった! この詩はパティのファンにとってもお馴染みの詩ですしね。1997年の「PEACE AND NOISE」に収録された「Spell」は、パティがこの詩に曲をつけたものでしたから。ちなみに1997年はアレン・ギンズバーグが亡くなった年でもありました。いやはや、生で聴けて良かった!!
さらにアンコールは出演者総出で「People Have The Power」。観客も手拍子したり、サビを一緒に歌ったりの一体感で盛り上がりました。やっぱりこれをやらないとね。
盛り沢山のおよそ2時間でしたが、やはりパティのポエトリー・リーディングの素晴らしさに打ちのめされました。そしてそれはフィリップ・グラスのピアノの素晴らしさでもありました。あと今回は、パティの朗読と同時に、村上春樹さんと柴田元幸さんによる和訳がヴィジョンに映し出されたのですが、それも英語が分からない私にとって、とてもありがたかったです。日本語を読むことで、パティが次々に言葉を畳み掛けるスリルを一層感じることが出来ました。(際どい言葉をそのまま訳されてるところも雰囲気が伝わって良かったです)。
とにもかくにも、フィリップ・グラスとパティ・スミス、お二人の共演をここ日本で観れたことに感謝します!
終演後、会場出口付近に張り出されたセットリストは以下の通り。残念ながらジェシー・パリス・スミス&テンジン・チョーギャルのリストはありませんでした。
01. Notes To The Future
02. Wichita Vortex Sutra
03. The Blue Thangka
04. Sunflower Sutra
05. Dancing Barefoot
06. Wing
07. Pissing In A River
08. Metamorphosis
09. Closing
10. On Cremation Of Chogyam Trungpa,Vidyadhara
11. Magic Psalm
12. Footnotes To Howl
13. People Have The Power
この後パティ・スミスは、ビルボードライヴにて、ジェシー・パリス・スミスとレニー・ケイを伴ったプレミアムなライヴも行ったんですよね。私は残念ながら行けませんでしたけど…。嗚呼、ビルボードにも行きたかった!
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