ルーツな日記

ルーツっぽい音楽をルーズに語るブログ。
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マリア・マッキーに愛を込めて その2

2013-02-28 20:38:05 | SSW
MARIA McKEE / MARIA McKEE

性懲りも無くラヴレターのようなタイトルで書き始めてみましたが、たんなる来日直前予習の続きです。

さて、ローン・ジャズティス解散後から2年後となる89年にリリースされた、マリア・マッキーの初ソロ作「MARIA McKEE」(写真)。これをCDショップで見つけたときは嬉しかったですね~。即購入しワクワクしながら帰宅して聴いたのを覚えています。ですがローン・ジャスティスのような気合いたっぷりのマリア・マッキーを期待していた当時の私にとっては思いのほかソフトな内容で、ちょっと物足りない印象でした。ですがマリア・マッキーの歌が聴けるだけで充分でしたし、その歌声の持つ美しいエモーションは聴けば聴くほど私の胸に染み込んでくるのでした。ソフトと言っても「Can't Pull The Wool Down (Over The Little Lamb's Eyes)」や「Drinkin' In My Sunday Dress」のようなローン・ジャスティスの1枚目を思い起こされるカントリー・ロックもちゃんと入ってますしね。ですが個人的には美しいメロディーと麗らかなカントリー・テイスト溢れる「Am I The Only One (Who's Ever Felt This Way?)」が一番好きでした。この曲は名曲ですよ。明るく暖かな中にも独特の憂いを含んだマリアの歌声がまた素晴らしい! そして彼女の歌声が素晴らしいと言えば「Nobody's Child」、「Panic Beach」、「Breathe」などのスロー・ナンバーです。この辺りのマリアの感情表現にはただただ聴き惚れるしか無かったですね。

で、このアルバム、あの頃はまだどうしても“元ローン・ジャスティス”の作品というイメージで聴いていましたが、あらためて今聴き返してみると、これはカントリー/ルーツ系の女性シンガー・ソング・ライターの作品として傑作の部類に入る逸品ですよ! 先の楽曲に加え、開放感溢れる良質のフォーク・ロック「I've Forgotten What It Was In You (That Put The Need In Me)」、ゴスペル・フレイバー香るソウル・バラード「More Than A Heart Can Hold」。何処か退廃的なムードを醸す「This Property Is Condemned」、ピアノ弾き語りによる「Has He Got A Friend For Me?」など、色彩豊かな曲が並びつつもマリアの類い稀な歌声が一つの大きな流れを感じさせる。良いアルバムですね~。

プロデュースはミッチェル・フルーム。バックにはマーク・リボー(g)、リチャード・トンプソン(g、mandolin)、トニー・レヴィン(b)、ジム・ケルトナー(ds)など、今見るとこんな人達が参加してたの!?とびっくりするような名前がクレジットされています。もちろん元ローン・ジャスティスのメンバーも加わっています。特にブルース・ブロディは准プロデューサー的な立場で深く関わっていたようです。



MARIA McKEE / YOU GOTTA SIN TO GET SAVED
ソロ・デビュー作から4年の月日を経た93年にリリースされた2ndソロ作。当時ブラック・クロウズやジェイホークスを手掛けていたジョージ・ドラクリアスがプロデュースを手掛け、乾いた質感と立体的且つ芯のあるサウンドが印象的。 特に、南部ソウルからの影響が感じられる「My Girlhood Among The Outlaws」や「Why Wasn't I More Grateful (When Life Was Sweet)」辺りが抜群に格好良い! 他にもダスティ・スプリングフィールドのメンフィス録音のカヴァーがあったり、このころマリアのベクトルは南部ソウルに向いてたのかな?何て思ったり。ホーン隊にメンフィス・ホーンズを招いているのもしかり。だからと言ってマリアのヴォーカルが突然いなたくなったりする訳ではありません。マリアはあくまでもマリア! 彼女らしい美しいカントリー調もちゃんとありますし、ヴァン・モリソンのカヴァーもあるなど、聴かせどころも多いです。また前作から引き続きのブルース・ブロディはもちろん、ローン・ジャスティスの初期メンバーであるドン・ヘフィントン(ds)とマーヴィン・エツィオーニ(b)が参加しているのも嬉しいところ。

そして翌94年だったかな? ついにマリア・マッキーが初来日したんです。もちろん私も行きましたよ! 初めて生で観るマリア・マッキーの姿とその歌声に感無量でした。ですが内容についてはほとんど覚えていません。「East Of Eden」で始まり「You Gotta Sin To Get Saved」で終わったようなおぼろげな記憶がありますが、 何分昔の話なのでかなり曖昧です。ただ「You Gotta Sin To Get Saved」はスタジオ録音ではゆったりとした南部臭を感じさせるナンバーなのですが、ライヴではアップテンポなカウ・パンク・スタイルで演奏され、えらく盛り上がったのを覚えています。



MARIA McKEE / LIVE AT THE BBC
08年にリリースされた、91年と93年のライヴを収録したライヴ盤。91年の方は「MARIA McKEE」からの楽曲を中心にローン・ジャスティス時代の曲やサントラ収録曲も含め7曲。私の大好きな「Am I The Only One (Who's Ever Felt This Way?)」のライヴ・ヴァージョンが聴けたのが何よりの収穫。そして93年の方。こちらは来日公演と近いので、おそらく日本でのライヴもこれと似た感じだったのではと想像したり。「East Of Eden」で始まり、ハイライトが「You Gotta Sin To Get Saved」のカントリー・パンク・ヴァージョンという展開にもあの日のライヴを彷彿とさせるものがあり、あの時の興奮が甦りました。



MARIA McKEE / LIFE IS SWEET
95年にアラニス・モリセットが世界デビューし、彼女のグランジを背景にした激情型ヴォーカルはセンセーショナルを巻き起こしました。かく言う私もアラニス・モリセットは大好きでした。ですが彼女の成功には嫉妬心を抱いたりもしました。マリア・マッキーのファンの方は多かれ少なかれ皆さんそういう気持ちを持たれたのではないでしょうか?いや、私だけですか? そこへマリア・マッキーの新譜が届きました。これが完全にグランジ化した強力盤。これまでのカントリーもソウルも全部どこかへ吹っ飛んでしまった感じです。マリア・マッキー・ファンの間では流石にここまでの変化には賛否両論だったかもしれませんが、私は大歓迎でした。マリア自身が轟音ギターを弾き、さらに激情ヴォーカルで染め上げる。その感情表現は痛々しいまでに美しい。そして楽曲がまた良い! アラニスに限らず90年代以降に台頭した女性シンガーに対し勝手に嫉妬心を燃やしていた私にとって、これこそ本家だ!と、この作品の素晴らしさはどうだ!と溜飲が下がる思いでしたね。ですが残念ながら一般的にはさほど話題にならなかったようで、それもマリアらしい…。


この「LIFE IS SWEET」は96年のリリースですが、同年、このアルバムを引っさげての再来日が叶いました。もちろん私も行きました。この時は渋谷ON-AIRでした。新作で披露されたマリアの世界をライヴでどっぷりと堪能しました。なんかこの時のマリアはほとんど別世界の人のような雰囲気で、その鬼気迫る歌唱に圧倒された記憶があります。とは言え、これも昔の話なので、ほとんど覚えてないんですけどね。




VA / EVANGELINE MADE: A TRIBUTE TO CAJUN MUSIC
さて、マリア・マッキーは自身のアルバム以外にも、色々なところで録音を残しています。何せ公式デビューはソロで参加した84年の映画「ストリート・オブ・ファイヤー」のサントラですからね。あとサントラですと「パルプ・フィクション」とか、「デイズ・オブ・サンダー」とか。特に「デイズ・オブ・サンダー」に提供した「Show Me Heaven」は全英1位を記録するマリア・マッキー最大のヒット曲になりました。その他コンピや客演(ロビー・ロバートソン「Somewhere Down The Crazy River」のPVには参りましたけど…)など探せば色々出てきますが、個人的にはなんだかんだ言ってカントリーを歌うマリアが好きなので、映画「ソングキャッチャー」から誕生した名コンピ「SONGCATCHER」に収録された「Wayfarin' Stranger」とか、ドワイト・ヨーカムに客演した「Bury Me」なんか良いですね。

でもそんな中で私が最も面白いと思ったのは02年にリリースされたコンピ盤「EVANGELINE MADE: A TRIBUTE TO CAJUN MUSIC」(写真)。タイトル通りルイジアナのケイジャン・ミュージックをトリビュートした作品。ルイジアナが誇るサヴォイ・ファミリーやボーソレイユのメンバーを中心に、カントリー、ポップ、ロック界からゲストを招いて製作され、グラミー賞にもノミネートされた名盤です。マリア・マッキーは「Ma Blonde Est Partie」と「Tout Un Beau Soir En Me Promenant」という2曲のトラディショナルを歌っています。マリア・マッキーとケイジャンって結びつきませんが、マリアはケイジャンが好きで、CLEOMA BREAUXによる「Ma Blonde Est Partie」のオリジナル・ヴァージョンをいつも聴いてたとライナーで語っています。他にはジョン・フォガティ、リチャード&リンダ・トンプソン、パティ・グリフィン、ロドニー・クロウェル、ニック・ロウなどが参加しています。

ちなみに、Wikiによりますと、この作品でマリア・マッキーはこ写真家/ミュージシャンのジム・エイキンと知り合い、結婚することになったそうです。以降、二人三脚による活動になる訳ですが、今回の文章、既にここまでで異様に長くなってしまっているので、ここからは駆け足で。



MARIA McKEE / LIVE IN HAMBURG
03年リリースの4作目「HIGH DIVE」を挟み04年にリリースされたライヴ盤。03年ドイツで収録。個人的に「LIFE IS SWEET」直後のライヴが残されていないというのが残念でならないのですが、こちらのライヴ盤には「LIFE IS SWEET」と「HIGH DIVE」収録曲が半々ぐらいで構成されています。オフィシャルにしては録音状態があまり良く無いですが、妖気めいた迫力で迫るゴシックなマリア・マッキーを堪能できます。でもMCのしゃべり声はちょっと可愛い。ま、ルーツっぽさはほぼありませんけどね。



MARIA McKEE / PEDDLLIN' DEAMS
そして05年に発表されたスタジオ作としては5枚目となる「PEDDLLIN' DEAMS」。これはアメリカーナ! やっぱりマリアにはこっちが良く似合う。昔のようにはち切れんばかりのエネルギッシュな歌ではなく、いい具合に年齢を重ねた“苦み”を含んだ歌声が味わい深い。プロデュースはジム・エイキン。彼は作曲にも携わり、ベース、ギター、キーボードなど演奏でも貢献。さらにジャケ写他のアートワークでもその才能を発揮しています。マリアの信頼振りが伺えますね。マリアとジムの他 Jerry Andrews(g)とTom Dunne(ds)を加えた4人だけで作られた、シンプルな中にもフォーク/カントリーの豊かな香りと、何処かノスタルジックな味わいを感じさせる傑作です。ニール・ヤングのカヴァー「Barstool Bluse」も秀逸。



MARIA McKEE / LATE DECEMBER
07年リリースの現在最新作。「PEDDLLIN' DEAMS」の次のアルバムと言うことでその延長を期待していたんですが、見事に裏切られました。(ま、前作の延長のような作品を作ったことなんて今まで無いんですけどね)。今作は前作の幾分枯れた味わいが嘘のようにポップ且つロックな瑞々しさ。若返ってます。ルーツ色は後退しましたが、懐かしいマリアの歌心を味わえるような作品です。プロデュースはマリア・マッキーとジム・エイキン。二人の共作曲も4曲納められるなど、二人のパートナーシップ振りが伺えます。


この「LATE DECEMBER」以降、今日までマリア・マッキー単独名義での純粋な新作は発表されていないのですが、昨年、ジム・エイキンと共同で「After the Triumph of Your Birth」という映画を製作し出演もしているそうで、そのサウンドトラックがTHE SHOOTISTというバンド名義でリリースされ、マリア・マッキーがフューチャリングされているそうなんですが、残念ながらそのCDは私の手元にはありません。前評判ではマリア・マッキーの実質的新譜だなんて言われたりしていましたが、とりあえずiTunesで試聴してみても、それ程マリアがフューチャーされているようには聴こえなかったんですけど、どうなんですかね?


さて、それでは長くなりましたが最後にいくつか動画をピックアップ。


http://www.youtube.com/watch?v=ystALTFm1t8
思いっきり南部ソウル路線の「Why Wasn't I More Grateful (When Life Was Sweet)」。って言うかバック・バンドが格好良過ぎるんですけど。この人達何者ですか? ちなみに初来日した時のマリアも髪型とか確かこんな雰囲気だったと思います。(バックはこんな大所帯ではありませんでした。)


http://www.youtube.com/watch?v=FwBlNlkIsuQ
おそらく2度目の来日公演に近い頃だと思われる「Absolutely Barking Stars」のライヴ映像。瞳孔開きっ放しのような表情がとにかく美し過ぎる。もうただただ見とれてしまう。そしてマリアの轟音ギターと刺すような歌声に徐々に胸を抉られていくよう。やはりこの時期のマリアは神がかってました。今から16~7年前ですかね。


http://www.youtube.com/watch?v=3kDuCK40vfE
昨年8月、映画「After the Triumph of Your Birth」のプレミアにおけるライヴ映像。いわゆるオーディエンス録りですが、直近のマリア・マッキーのライヴが約50分楽しめます。



さて、いよいよビルボードライヴ東京でマリア・マッキーに再会です。ビルボードのサイトによるインフォでは、バックにはヴォーカリストを一人連れてくるだけのようなので、ほとんど弾き語りでしょうか。「Am I The Only One (Who's Ever Felt This Way?)」とか歌ってくると嬉しいんですけど。あとぜひピアノも用意して頂いて、先の8月のライヴのように「Wheels」を演って欲しいんですね。とりあえず会場に行ってピアノがあったらガッツポーズです。まあ、何はともあれ楽しみでなりません。


(前回に引き続き、長~い文章にお付き合い頂きありがとうございました。)




~関連過去ブログ~ お時間有ったらぜひ!

 12.2.26 マリア・マッキーに愛を込めて その1


2 コメント

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ライブビデオを視聴しながら (ボン 大塚)
2013-03-01 13:38:26
気になったので、カセットのダンボール箱を
開けてみました。デビュー作とソロデビュー作
の2本だけは残っておりました。ただもう既に
劣化していて聴けないのが残念でしたが。
それから同じ並びに、同時期の女性ボーカルの
10'000マニアクスとコンクリート・ブロンドというのも
残っておりました。どんな風だったか思い出せない
のですが、あの時代も結構ユニークでうならせる
女性歌手バンドがあったと感慨深かったです。
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ありがとうございます! (moccho)
2013-03-03 12:06:34
ボン 大塚さん、コメントありがとうございます!

10'000マニアクスとコンクリート・ブロンド、
なんか聞いたこと有るような無いような…。
ちょっと懐かしい響きですね。

マリア・マッキーのライヴ、行ってきました。
あの時代を思い出させる素敵なライヴでした!
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