本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

いまモリッシーを聴くということ

2024-03-10 06:48:05 | Weblog
■本
20 いまモリッシーを聴くということ/ブレイディみかこ
21 ボクたちはみんな大人になれなかった/燃え殻

20 引き続き音楽に関する本を。絶版のためかなかなか入手できなかったのですが、たまたま在庫を見つけることができたので読みました。ザ・スミスとモリッシーの各アルバムに対するブレイディみかこさんのディスクガイドを通じて、1980年代中盤から2010年代中盤くらいまでのイギリスの文化や政治が振り返られています。イギリスでの新自由主義の台頭が、いかに多くの人の心や生活に傷を残したか(そして日本も同様の道を進んできたということが)よく理解できます。ソロとしてのキャリアの方が長いので当然ですが、ソロ作品についての詳しい解説は、ザ・スミスの熱心なファンではあったが、モリッシーのソロ活動にさほど興味のなかった私にとってはとても新鮮でした。サブスクで各作品を聴きながら楽しく読みました。世間的な評価と異なり、ソロ活動中期の作品についてもブレイディみかこさんが一定の評価をされている点が興味深かったです。やはり、モリッシーのことを理解するためには、音楽だけでなくその歌詞もきちんと理解する必要があると改めて思いました。この本で紹介されている歌詞を読むだけでも、ポップ・ミュージックにあるまじき、ポリティカルコレクトネスを無視した表現が唯一無二であることがよくわかります。「We hate it when our friends become successful」や「World peace is none of your business」というタイトルだけを見ても、引いてしまうと同時にその露悪的なユーモアに思わず微笑んでしまいます。ザ・スミスの名曲「There is a light that never goes out」は引きこもりの人の夜いつまでも消えない部屋の灯という解釈もあるということを知って、若いころに熱狂したこの曲と自分の息子とを重ねて切ない気持ちになるという思いもよらぬ体験をしました。名曲は実に多義的であるということにも不思議な感動を覚えました。

21 吉岡里帆さんのラジオにゲストとして出演されていた際のトークが印象に残っていたので読みました。世代が近いので小沢健二さんを筆頭に、登場する固有名詞がツボでした。西村賢太さんの愛読者としては、私小説として読むとあまりにも薄っぺらいですし、フィクションとして読んでも、しずるさんの雰囲気はあるが内容がない映画をパロディにしたコントのような読後感でした。というわけで、けなそうと思えばいくらでもけなせるのですが、一方で、不思議と惹きつけられるところもある不思議な作品です。スタイリッシュさのみに特化した文体と、この内容のなさが、失われた30年のロスジェネ世代を象徴しているかのような深読みもできます。結構売れた作品だそうですが、タイトルにあるように、成熟できないダメな自分たちを、やさしく肯定してくれる点に理由があると思います。また、団塊の世代やバブル世代のような「成熟」なら必要がないという、それ以降の世代のささやかな抵抗のようにも感じられる点が、この作品を私自身が完全に否定できない理由だと思います。あと、「ふつうのブス」に「自分より好きになった」ことを書いた点はなかなかの発明だと思いました。村上春樹さんの小説とかだと、なんだかんだ言って不安定な部分はありつつも、容姿的に魅力的な女性が登場することが多いですから。


■映画 
21 セインツ -約束の果て-/監督 デヴィッド・ロウリー
22 映画ドラえもん のび太と空の理想郷/監督 堂山 卓見

21 以前に観た「A GHOST STORY」という作品の前に、デヴィッド・ロウリー監督が、同じメインキャスト(ケイシー・アフレック、ルーニー・マーラ)で、撮っていたクライム・ムービーです。銀行強盗で捕まった男が、妻と収監後に生まれた娘の元に返ろうと脱獄したところから話が展開していきます。デヴィッド・ロウリー監督作品はストーリーよりも映像が優先される傾向があると思っていましたが、この作品は映像とストーリー(そして、メインキャスト二人の演技)のバランスが絶妙です。野外での冒頭の二人の喧嘩とその仲直りシーンから一気に引き込まれてしまいました。テキサスの自然と素朴な街並みの美しさ、不器用な人間を演じさせたら抜群のケイシー・アフレック、諦念を含んだ凛とした美しさが印象的なルーニー・マーラ、そして、真っ当な善人がほとんど登場しないのになぜか感動的なストーリー、が完璧に調和しています。いつも通り100分以内に収める手際の良さも見事です。「生きにくさ」を抱えている人間を描いている点で、燃え殻さんの小説と似たような狙いの作品だと思いますが、そちらよりも人生に対するポジティブさと開放的な印象が残ります。観終わった後に、じわっとした温かみが残る素晴らしい作品です。

22 「自分らしさ」の大切さをド直球で子どもたちに伝える素晴らしい作品です。中盤でこのメッセージ性の強さが少し気になりましたが、最後は見事にエンターテインメントとして成立させている点も見事です。全体主義国家や新興宗教の影響下にある人たちに是非観てもらいたいです。映画版になると妙にいい人になる、ジャイアンとスネ夫を逆手に取った展開にも感心しました。この映画独自のひみつ道具やキャラクターも魅力的です。時間移動による伏線回収にも唸らされました。テレビ放送で観たのでカットされていたのかもしれませんが、虫に変身させられていた主要キャラが、なぜか知らぬ間に元に戻っていた点だけは不自然に感じました。とはいえ、ドラえもんの映画版の中では、かなり好きな作品です。楽しみながら大切なことを学べる素敵な作品だと思います。
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