本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

地頭力を鍛える

2017-09-02 06:09:36 | Weblog
■本
68 地頭力を鍛える/細谷 功
69 大いなる眠り/レイモンド・チャンドラー

68 「フェルミ推定」(「日本全国に電柱は何本あるか?」など、すぐに把握することが難しい数値について、手持ちの知識を元に何らかの推定ロジックによって短時間で概数を求める方法)を例にして、「地頭力とは何か?」、「どのように地頭力を鍛えるか?」について解説してくれる本です。とかく、概念的にや技法的になりがちな「地頭力」について、「フェルミ推定」を実際に体験しながら、具体的にイメージすることができる点が、この本を類似書と異なるユニークなものにしていると思います。その一方で、「地頭力」の定義を冒頭に明確にし、その構成要素や支えるベースの力についても丁寧に解説してくれていてロジカルにも理解できます。「地頭力」について、理論的にも肌感覚としても実感でき、自分に何が欠けていてそれをどのように鍛えていけばよいか、がイメージができるとても良い本だと思います。

69 引き続き、村上春樹さん翻訳によるレイモンド・チャンドラー作品を読んでいます。村上春樹さんが翻訳された順番に読んでいこうと思いましたが(順番通りなら「リトル・シスター」です)、村上さんによるチャンドラー作品の評価としては、これまでに私が読んだ、「ロング・グッドバイ」、「さよなら、愛しい人」の次にこの作品が位置しているように思いましたので、先に読みました。「ロング・グッドバイ」と「さよなら、愛しい人」は先に映画版を観てある程度ストーリーが記憶にあったのに対し、この作品は初めて触れるものだったので、予想がつかないストーリー展開自体に引き込まれました。この作品がフィリップ・マーロウを主人公とする長編シリーズの第1作目ということもあってか、フィリップ・マーロウというキャラクターを理解する上で必要な要素(権力に媚びない、仕事に美学がある、金や女に汚くない、など)が分かりやすく散りばめられている点も楽しめました。村上春樹さんら多くの作家が、レイモンド・チャンドラーを賞賛する意味が、この作品を読んでやっと理解できた気がします。魅力的なキャラクターやストーリー展開を超えた、「思想」のようなものが評価されているのだと思いました。


■映画
50 ペット/監督 クリス・ルノー、ヤーロー・チーニー
51 ワンダーウーマン/監督 パティ・ジェンキンス
52 スローターハウス5/監督 ジョージ・ロイ・ヒル

50 「怪盗グルー」シリーズのイルミネーション・エンターテインメントによるペットを題材にしたCGアニメ作品です。ミニオンが大好きなのと、今年観た「シング」もよかったので観ました。一見、動物を擬人化したよくあるヒューマンドラマですが、さすがイルミネーション・エンターテインメントだけ合って、一筋縄ではいかない毒の効き方が絶妙のアクセントになっています。完全に目がイッテいる、悪役ウサギの人格破綻ぶりは少し引くほどですし、隙あらば肉食の欲望が表れる鷹や車いすに乗った老犬など、仲間のキャラクターも単なる可愛いペットに留まりません。王道の友情冒険ストーリーに、少し壊れたキャラクター設定がうまく噛み合って、子どもだけでなく大人も楽しめるユニークな作品に仕上がっていると思います。

51 こちらもよくあるアメコミヒーローものと思っていましたが、多様性をテーマにした硬派な要素も込められていて、なかなか見応えのある作品でした。女神だけが住む島で育てられたヒロインという設定をうまく活用しながら、神と人間、女性と男性、隔離された島と開かれた世界、白人と有色人種、などなど、いろんな差異に翻弄されつつも、自分とは異なる他者を受け入れるようになる、主人公の成長物語としてもよくできています。監督が女性ということもありますが、露出の多いコスチュームに包まれた魅力的なヒロインにも関わらず、性的側面に過度に注目が集まらないのは、このようなバックボーンがあるからだと思います。このような志の高い作品にも関わらず、コメディやアクション要素のバランスもよく、ストーリー展開もハリウッドのフォーマットに則ったどんでん返しもあり、エンターテイメントとしても楽しめる作品です。いい意味で期待が裏切られました。

52 カート・ヴォネガットの原作を、「明日に向って撃て!」、「スティング」の巨匠ジョージ・ロイ・ヒルが監督した作品ということでずっと気になっていました。自分の人生の過去や未来にランダムに行き来する主人公の体験を通じて、第二次世界大戦のドイツや戦後のアメリカの生活を描いた作品です。細かいエピソードが重なりあう展開と一見陽気なアメリカ社会に潜む澱のようなものが描かれている点で、同じジョージ・ロイ・ヒル監督作品の「ガープの世界」と似ている印象を持ちました。ドレスデン爆撃が広島の原爆と並んで語られるほど、多くの民間人が被害にあったことを、私は恥ずかしながらこの作品を観て初めて詳しく知りました。日本以外の人の原爆についの認識が、私のドレスデン爆撃のそれと同じ程度である可能性を実感として理解できたことが、この映画を観た一番の収穫でした。もっと、歴史について学ばないといけないと猛省しました。
コメント
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