本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

伝えることから始めよう

2017-09-09 06:57:48 | Weblog
■本
70 伝えることから始めよう/高田 明
71 「司馬遼太郎」で学ぶ日本史/磯田 道史

70 誰もが知っている、ジャパネットたかた創業者、高田明さんによるビジネス本です。高田さんが一地方のカメラ店から年商1000億を軽く超える通販会社にまで育てたビジネス成功ストーリーとしても、また、その成功を支えた「伝える」ことに徹底的にこだわったコミュニケーション論としても読めるお得な本です。学問として学ばなくても、地頭の良さと情熱があれば、実経験から有益な知見を見いだせるということを示すお手本のような本です。基本的には、ラジオやテレビといった大人数にリーチするメディアを通じて、高齢者など比較的製品に対する知識の少ない生活者に、その製品がいかに自身の生活を豊かにするかについてのイメージを徹底的にわかりやすく情熱的に伝え、購買意欲を喚起する、というのがこの会社の成功ストーリーだと理解したのですが、言葉にするとシンプルなこのストーリーを実現するために、自前の撮影スタジオや現場で鍛えられたMCなど他社が簡単に真似できないスキルやスタイルを蓄積されている点が素晴らしいと思います。創業者が書かれた本にありがちな教祖的な要素は多少感じるものの、それを中和するやわらかで誠実な文体がいかにも高田さんっぽいです。

71 司馬遼太郎さんの作品を通じて細かい日本史の歴史的事実を学ぶというよりも、その作品が日本人の歴史観にどのような影響を与えたかという観点で書かれた作品です。ですので、司馬遼太郎作品の入門書というよりも、戦国時代や幕末を舞台にした司馬作品が、その作品が連載されていた、高度経済成長期の人々にいかに共感され、その考え方に影響を与えたかということが解説されています。同時に、幕末の変革期後、その当初の高い志を失い、勝ち目のない戦争へと暴走した日本に対する反省を続けた司馬遼太郎さんの姿勢を通じて、右肩上がりの成長が終わった日本人が重視すべきもの(司馬さんのエッセイを引用し「共感性」と「自己の確立」を重要な要素として強調されています)についても考察されている点に、いろいろと考えさせられました。


■映画
53 シンプル・プラン/監督 サム・ライミ

 登場人物が少しバカ過ぎますが、ひょんなことから大金を入手した人々が破滅していく姿をシニカルに描いた作品です。「スパイダーン」シリーズのサム・ライミ監督の出世作だったと記憶しています。雪に埋もれた殺風景な描写が印象的で、現代日本にも通じる地方都市の疲弊や閉塞感が巧みに描かれています。当初良心的な存在と思われた主人公やその妻が、その閉塞感から逃れるために小賢しい知恵を出しては、悪い方に展開してくストーリーは、どこかコミカルでありながら救いがないです。冒頭に結末が予想されるモノローグを挿入しながらも、最後まで緊迫感が続く演出は見事です。主人公のダメ兄を演じたビリー・ボブ・ソーントンは、単なるバカ兄貴で終わらない、愚かさと不気味さと繊細さを合わせ持つ役を印象的に演じています。監督の強い作家性が感じられる好ましい作品です。
コメント
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