それって手塚治虫氏に甘すぎると思う

今日は手塚氏の84回目の誕生日なので、氏についての記事を書きます。本多勝一氏の「貧困なる精神第21集」という本を読んで、「おや」と思ったことがあります。

つまり本多氏が、「吉永小百合さんはなぜ『西武ライオンズ』が好きか」という記事を書いたとき、それに関してある読者が、では手塚氏は？　と問いかけたわけです。

その読者いわく。

＞（前略）手塚氏は西武ライオンズに対して、自作「ジャングル大帝」の主人公・レオの肖像を使用することを認められているのです。（中略）このことを私や本多さんは、どう解釈したらよいのでしょうか。（p.168）

で、本多氏は次のように書いています。

＞私はプロ野球にうといので、西武ライオンズがレオの肖像を使っていることを知りませんでした。もはや故人となられたわが”恩師”たる手塚氏が、もし生きておられたらもちろん直接たずねるところです。おそらく手塚氏は、レオの使用を認めた当時は、この会社（国土計画）がこれほどひどい日本列島破壊会社だということを御存じなかっただろうと思います。そして今これに気付かれたら、使用許可をとりけすかもしれません。（同上）

これ読んで、どうもなあと私は思いました。なぜ手塚氏が、西武ライオンズの旗にそのキャラクターの使用を許可したのか、私はもちろんその事情は知りません。たぶん本多氏の言うように、彼、あるいは手塚プロの担当者（たぶん後者）がたいした考えもなく使用を承諾したのでしょう。で、私が引っかかるのは、本多氏の手塚氏への甘さです。

＞おそらく手塚氏は、レオの使用を認めた当時は、この会社（国土計画）がこれほどひどい日本列島破壊会社だということを御存じなかっただろうと思います。そして今これに気付かれたら、使用許可をとりけすかもしれません。

本多氏の立場としてはそんなことくらいしかコメントできないということでしょうが、それ、ちょっと手塚さんに甘すぎるんじゃないんですかね？

手塚氏を本多氏は尊敬しているし、亡くなってから知ったから問い質すこともできなかった、っていうことですけど、大江健三郎氏にあそこまで厳しい態度に出て手塚氏に対してこれはちょっとどうかと思います。少なくても

「手塚氏がその使用を許したのは、理由はともかく大変よくない。いまからでも遅くないから、手塚プロはその使用契約を破棄してほしい」

くらいの発言はすべきではないでしょうか。こういっちゃ何ですが、大江健三郎氏と手塚治虫氏とでは、すくなくとも本多氏がこの記事を書いたときでは手塚氏のほうが社会に影響力はあったのではないかいなという気もするし。当時大江氏はノーベル文学賞受賞前ですから。

＞そして今これに気付かれたら、使用許可をとりけすかもしれません。

たぶん使用契約が破棄されることはないでしょうが、本多氏は手塚プロにそのような話はされていないでしょうね、たぶん。

手塚氏は尊敬しているから甘いが、大江氏には厳しいというのは、世の中そんなものだとは思いますが、しかしやはり「どうもなあ」です。

いうまでもなく私も凡人なので甘い人間には徹底的に甘いですが、でも本多氏は私みたいな人間よりはるかに社会的にも重要な立場にあるんだから、それくらいはきっちりとした対応をしてほしいなと思います。

そういえば、私の知る限り本多氏は、例の「大江岩波訴訟」にも言及していないような…。本多氏も同趣旨の百人斬り訴訟で迷惑を受けたんだから、大江氏との過去のいきさつは別として、これは大江氏を積極的に支援すべきではないかな。まさか本多氏だって「大江はいい気味だ」とは思っちゃいないでしょう。いや、もしかしたら思っているの？

あ、すいません、ずいぶん昔の話ですし、お前は本多氏に期待しすぎているというご意見も多いでしょうが、これはやはり書いておきたいことだったので記事にしました。