ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)

映画、旅、その他について語らせていただきます。
タイトルの由来は、ライプツィヒが私の1番好きな街だからです。

伊藤律について、ちょっと勉強してみようかなと考える

2016-07-28 23:59:59 | 書評ほか書籍関係

ここ最近、ちょっとこの本が一部で話題になっているようですね。もちろん話題といっても、ベストセラーなんてこともない、一部の人間の興味を引いているということでしょうが。

父・伊藤律 ある家族の「戦後」

伊藤律なんて私は、架空会見記の人というイメージしかありません。つまり共産党の幹部だった伊藤が、1950年に逮捕状が出て地下に潜行した後、朝日新聞の記者が伊藤との会見に成功したと称する捏造記事を書いたというお粗末な話ですが、記事自体は伊藤の写真すらなく(当たり前)、朝日の編集幹部も相当怪しいと思ったようですが、けっきょく紙面に掲載してしまい、デタラメ記事であることが数日にして発覚したという、どうしようもないにもほどがある事件です。

伊藤自身は、その後(1951年の模様)中国に密航、53年に野坂参三らによって党を除名されまた中国で軟禁状態になり、55年の第6回全国協議会で除名が再確認されます。このあたりの過程は、私の能力ではまとめるのが困難なので、興味のある方は、伊藤のWikipedia記事でも読んでいただき、さらに興味をお持ちなら、適宜書物を参照してください。

その後伊藤の消息はさっぱり聞かれなくなりますが、80年にようやく日本への帰国が実現します。伊藤はその後回想記などを執筆しましたが、89年に亡くなります。76歳でした。

それで2013年、伊藤がスパイである、という説を書いた松本清張の『日本の黒い霧』の該当話数の出版取りやめを伊藤の遺族(上の本の著者である伊藤淳氏らです)が出版元の文藝春秋に申し入れたという報道がされました。たまたま、bogus-simotukareさんが拙記事のコメント欄でご紹介してくれましたので、それを引用します。

時代の流れで清張本に注釈 (bogus-simotukare)2013-04-28 20:48:18

朝日新聞『「日本の黒い霧」清張の説を事実上修正 スパイ説に注釈』
http://www.asahi.com/culture/update/0427/TKY201304270127.html(引用者注・リンク切れ)

なんかねえ、こういうのも時代の変化の一つなんでしょうかね。
伊藤律の遺族からすればいろいろ言いたいことはあるんでしょうが、清張は故人だから当然了解はとれてないし、なんかもやもやしますね。
そして文春も伊東(ママ)律の遺族の遺族感情に配慮して注釈というなら遺族感情を傷つける南京事件否定論本とか出すのはやめて欲しいですけどね。

>bogus-simotukareさん (Bill McCreary)2013-04-29 06:50:05 

これは面白い記事のご紹介ありがとうございます。

 

>2013年4月28日12時49分「日本の黒い霧」清張の説を事実上修正 スパイ説に注釈

【中村真理子】松本清張(1909~92)の代表的なノンフィクション「日本の黒い霧」の記述を巡り、登場人物の遺族から抗議を受け、出版元の文芸春秋は、清張の説を事実上修正する文を注釈として文庫の末尾に付けることを決めた。出版社としては異例の対応だ。

 問題になったのは「革命を売る男・伊藤律」の章。元共産党幹部の伊藤律(1913~89)が「当局に情報を提供したことは事実であると見ていい」などとして、伊藤を特高警察や連合国軍総司令部(GHQ)のスパイとして描いた。伊藤の遺族は「根拠がない」として出版取りやめを求めたが、「問題点を指摘する注釈が付くなら、誤りが認められたことになる」と文春の提案を受け入れた。早ければ来月にも3ページ分の注釈付きの文庫が出るという。

想像ですが、伊藤律の遺族が最悪訴訟を起こすくらいの話をして、それで文藝春秋側も、訴訟になったら負ける可能性が高いという結論になってこうなったかなと思います。とうぜん松本側も、著作権継承者は了承しているのでしょうが、いかんせん非常に有名な本だし、古典と行 (ママ)ってもいいくらいですから、伊藤側も強硬な態度で出たのでしょう。もっともそんなことを言いだせば、南京事件否定本も、裁判で負けていますけどね。

 

過日この文庫を立ち読みして注釈を確認しました。

 

 

>革命を売る男・伊藤律

というのが、問題となったくだりです。

正直、伊藤自身は除名されたのが60年以上前だし、亡くなったのも四半世紀を超える前ですので、文字通り全くの過去の人だし、逆にだから講談社も、上のような本を出版したのでしょうが、私も戦後~六全協までの共産党の歴史なんてろくに知識がないので、そういう点もふくめて、ちょっと勉強しようかなという気がします。共産党というのもいろいろ功罪さまざまでしょうが、何はともあれ現在にいたるまで日本で国政から地方政治にいたるまで、それなりの勢力を保っています。私も共産党については勉強不足ですから、いろいろ面白そうです。

で、Wikipediaには参考文献として、次のような書物が紹介されています。面倒なので、Amazonとかへのリンクはしませんので、興味のある方はご自分でお調べください。

>伊藤律『伊藤律回想録―北京幽閉二七年』文藝春秋社、1993年

伊藤律書簡集刊行委員会『生還者の証言―伊藤律書簡集』五月書房、1999年

加藤哲郎『ゾルゲ事件 覆された神話』平凡社〈平凡社新書〉、2014年

藤井冠次『遠い稲妻 伊藤律事件』驢馬出版、1986年

藤井冠次『挽歌 昭和暗黒事件』驢馬出版、1991年

渡部富哉『偽りの烙印―伊藤律・スパイ説の崩壊』五月書房、1993年(1998年に新装版刊行)

とりあえず、清張の本は読むことにしました。ほかの本も、読んで面白ければ記事にします。なおすでに7月29日の0時を回っていますが、28日の記事として更新します。

 

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2 コメント

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Unknown (bogus-simotukare)
2017-02-01 06:24:48
■ちきゅう座『自著を語る:伊藤淳著『父・伊藤律 ある家族の「戦後」』(2017年 2月 1日) 伊藤淳
http://chikyuza.net/archives/69721

 正直そんなに中身はないと思います(日本共産党への否定的な認識や今後、父・伊藤律の未公開書簡を刊行したいだの言うのは予想の範囲内であり特に目新しくもないでしょう)
 が、一応ご紹介しておきます。
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>bogus-simotukareさん (Bill McCreary)
2017-02-04 20:33:07
どうも情報ありがとうございます。仰せの通り、そんなに大した中身ではありませんね。1980年と現在では、党の幹部も入れ替わっているし、野坂参三などは除名されてしまったわけですから、あんまりこぶしを上げるというのも意味がない部分もあるのでしょう。
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