ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)

映画、旅、その他について語らせていただきます。
タイトルの由来は、ライプツィヒが私の1番好きな街だからです。

産経新聞には、別の真実がある

2009-01-17 21:56:25 | 社会時評
世の中、どうもあまりにお粗末過ぎて、これホントと眼を疑うことがあります。産経新聞という極右新聞の報道には、ほんとにおどろかされます。

産経新聞は、2008年12月17日付で次のような記事を配信しました。

<南京大虐殺記念館、信憑性乏しい写真3枚撤去

中国・南京市にある南京大虐殺記念館が、信憑(しんぴょう)性が乏しいと指摘されていた写真3枚の展示を取りやめたことが17日、政府関係者の話で明らかになった。「連行される慰安婦たち」「日本兵に惨殺された幼児たち」「置き去りにされ泣く赤ん坊」の3枚で、日本の研究者らは南京事件と無関係だと指摘していた。中国が同館の展示について“是正”に応じたのは初めて。ただ、30万人という犠牲者数の掲示や“百人斬(ぎ)り”など事実関係の疑わしい展示多数はそのままになっている。

 撤去された3枚の1枚は、南京攻略戦の前に撮られ、「アサヒグラフ」(1937年11月10日号)に掲載された写真で、農作業を終えたあと、兵士に守られて帰宅する女性や子供が写っている。これを中国側は旧日本軍が女性らを連行する場面と紹介し、「農村婦女は連れ去られ陵辱、輪姦、銃殺された」と説明していた。この写真は戦後、朝日新聞記者、本多勝一氏の著した『中国の日本軍』や中国系米国人作家のアイリス・チャン氏の著書『ザ・レイプ・オブ・南京』でも、残虐行為と関連づけて紹介されるなど、国内外で繰り返し誤用されてきたことで知られる。

 また、幼児たちの写真は、朝鮮現代史の学術書に掲載されたもので、匪賊(ひぞく)(盗賊集団)に殺された朝鮮の子供たちの遺体。赤ん坊の写真は米誌「ライフ」に掲載された報道写真で、撮影地は上海。いずれも南京の旧日本軍とは関係ないが、愛国主義教育の“模範基地”と指定される同館は「悲惨な史実」と紹介してきた。

 日本側は、事実無根だったと判明している“百人斬り”関係の展示品のほか、誤用や合成と指摘されている写真について、さまざまなルートを通じて撤去を求めてきたが、これまで同館は応じていなかった。

 85年に開館してからの同館の参観者の累計は1897万人。日本の修学旅行生らも訪問している。>



この記事の内容が100%事実だとして、こんな記事書くかーと思わず失笑しちゃいますが、ともかく鬼の首を取ったかのようなとは、この記事のようなものを言うんでしょうね。いやあ、記者の喜びはよく理解できます。

しかし、やや不審な点のある記事でもあります。

というのは、中国側の談話がないのです。普通、このような記事を書く場合、当然相手側の談話をとりますよね。というより、とらなければ怖くて、こんな記事書けません。撤去してあるのが事実だとして、その事情を取材するのは当然です。たとえば、しばらくしたらまた写真を展示する予定だということも十分考えられるわけです。なぜこの記事は、中国側のコメントがないのでしょうか。

さらによく読むと、写真を是正したって、どうしてわかるんですかね。そもそも、中国側が(いいとか悪いとかという問題ではなく)そんなにおいそれと日本側の要求で写真を是正するなんて思えないんですけど。

それ以前の問題として、この記事は、いつから写真の展示をやめたのかという基本的なことすら書いていません。非常に不備の多い記事です。

この記事を書いた記者は、基本的な取材をしたのかとすら疑えます。

で、産経は、よせばいいものを、次のような社説にまでしました。12月19日付けです。

<中国・南京市の南京大虐殺記念館に展示されていた3枚の写真が撤去されていることが分かった。いずれも、南京事件とは無関係であることがはっきりと証明されている写真である。

 例えば、「連行される慰安婦たち」とされる写真は、南京戦の前に発売された「アサヒグラフ」に「兵士に守られて帰宅する女性や子供」として掲載されていたものだ。また「日本軍の空爆を受けて泣き叫ぶ赤ん坊」とされる写真は、中国側が反日宣伝のために演出して撮影し、米誌「ライフ」に載せた写真である。

 日本の外務省は同記念館が南京事件から70年にあたる昨年12月に再オープンして以降、この3枚を含む複数の写真について、史実に反するなどとする日本の学問状況を非公式に中国に伝えてきた。3枚の問題写真の撤去は、こうした外交努力の成果といえる。

 外務省が歴史問題で中国にこのような働きかけを行ったことは極めて異例だ。当然とはいえ、その努力を評価したい。

 だが、同記念館には、大虐殺の象徴的な事件として誤り伝えられている日本軍将校による“百人斬(ぎ)り”の記事など、事実関係の疑わしい展示が数多く残されている。“百人斬り”は戦意高揚のための作り話と判明している。「30万人虐殺」の掲示もそのままだ。

 このほか、中国には北京・盧溝橋の抗日戦争記念館など多くの戦争博物館があり、南京と同様、日本の修学旅行生らの見学コースになっている。

 外務省は引き続きこれらの疑わしい写真や記述にも目を配り、中国に是正を求めてほしい。

 今回、中国が3枚の写真を撤去したのは、明らかな誤りだけを認めたにすぎず、歴史問題で軟化したとみるのは早計である。

 「連行される慰安婦たち」とされる写真は、日本でも“大虐殺”派の学者の著書に使われたことがある。大阪市の「ピースおおさか」など日本の戦争博物館でも、南京事件の“残虐写真”などに疑問点が指摘され、誤用がはっきりしたものは撤去された。

 写真も歴史学習の重要な教材の一つである。時代の雰囲気や世相を視覚的に分かりやすく伝える効果がある。だが、使い方を誤ると、間違ったイメージを刷り込むことになる。歴史写真や戦争展示を子供の教材として使う場合は慎重な扱いが求められる。>

いやあ、なんだか書いている筆者の得意満面の表情が想像できそうです。




ところが、中国側が次のような反論記事を出してきたのです。

<今天,日本《产经新闻》在其“主张”栏目中称:“2007年12月13日南京大屠杀70周年纪念日时,这些照片被再次展出,日本学者通过日本外务省向中国通报了其研究结果,侵华日军南京大屠杀遇难同胞纪念馆随后撤去了这三张图片”。

对此,本馆严正申明:自去年12月13日本馆新馆扩建开展后,没有撤换任何一张照片。对《产经新闻》别有用心捏造事实,诋毁本馆声誉,表示强烈抗议!

(今日、日本の《産経新聞》はその「主張」欄にて「2007年12月13日の南京大虐殺70周年記念日の時に再展示されていた写真について、日本の研究者らが日本外務省を通して中国側に彼らの研究を伝え、その結果、南京大虐殺記念館はそれら3枚の写真を撤去した』と報じた。

 これに対して、当館は、去年12月13日の当館の新館開設後、1枚の写真の入れ替えも行っていないと、厳正に明らかにする。下心を持って事実を捏造する《産経新聞》が、当館の名誉を貶める事に対し、強く抗議を表す!)



侵华日军南京大屠杀遇难同胞纪念馆
2008年12月19日>


なお、日本語訳は、こちらからお借りしました。

・・・・(笑)

中国側の抗議が社説に対してのみなのは、最初の記事の政府関係者というのに気をつかっているのでしょう。

産経は、いまのところこの抗議には反応していないようです。

しかしいったいこの騒動、真相はどこにあるのでしょうか。

真相は、次の3つのうちのどれかでしょう。

①産経新聞の記者と編集幹部が馬鹿だった
②産経新聞が、会社ぐるみで確信的にインチキ記事を書いた
③中国側が嘘をついている

③だったら、産経側の反論は、ちょっとやそっとではすみませんから、これはやっぱり①か②なのでしょうね。普通の新聞社なら、懲戒ものの不祥事です。

実は私、この件を知ってからも、産経がクロだという確信がもてなかったのです。あまりに愚かでお粗末過ぎるので。いくら産経新聞でも、これはひどすぎないかと。だから、このことについて記事を書くのを控えていました。が、どうやら産経新聞の本領発揮というところでしょうね。

それにしても、これはひどすぎませんかね。この記事を書いたのは、牛田久美という記者です。この人、新聞記者が記事を書く際のイロハのイでめちゃくちゃなことをしました。そして編集幹部がそれに乗っかった・・・。

産経新聞が確信的な嘘つき新聞であることくらい知っています。それにしてもこの一連の不祥事は、正気の世界ではないと思います。ほんとにどうしようもないクズ新聞です。

やっぱり産経新聞には、何か違った真実がある・・・ようです。
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