鈍想愚感

何にでも興味を持つ一介の市井人。40年間をサラリーマンとして過ごしてきた経験を元に身の回りの出来事を勝手気ままに切る

我が国裁判史上、あまり例のないことかもしれない。風営法、および暴力団排除条例違反の被告3人の刑事裁判で公判開始から判決までが1日で行われてしまって、驚いた

2022-03-16 | Weblog

 16日は東京・霞が関の東京地裁へ裁判の傍聴に出かけた。午前10時から722号法廷で、東京・池袋で個室マッサージ店でいかがわしいサービスを提供し風俗営業法違反、そして板橋区小学校の禁止区域内に暴力団事務所を設置し、暴力団排除条例違反の2つの罪に問われた男性3人の刑事裁判を傍聴した。3人のうち2人は神戸山口組系の組長と若頭、それに個室マッサージ店の経営者で、3人はつるんでいかがわしいサービスを提供し、4年間で4億6千万円も稼いでいて、組の事務所は周囲から苦情が、持ち込まれていた、という。

 裁判はまず検事が起訴状を読み立て、罪状を述べ立てた。3人とも素直に罪を認め、それぞれ反省を口にした。もちろん、弁護人も争う姿勢はみせず、事実関係は直ちに立証された。続いて証人尋問に移り、どういうわけか、若頭の妻が登場し、弁護人の質問に答える形で、事件の概要を知った経緯から夫が暴力団員であることを初めて知ったことなどを打ち明け、暴力団員を辞めてもらうよう、話し合いを進めていることや、子供が来月に小学校に入学することなどを打ち明けた。そして、「今後、こうした罪を犯さないようにし、もし犯したら自首するように勧める」とも語った。

 続いて被告尋問に移り、弁護人、検事、裁判長が順次尋問に入り、事件の経過、今後の事態の収拾などについて聞いていった。個室マッサージ店については閉鎖することとし、主犯格の経営者は「もう風俗業には関わらず、今後は実家に戻り、家業を手伝いたい」と語り、もうひとつの暴力団事務所については撤収し、周囲に迷惑をかけたことをお詫びする、と口にした。3人とも今回の2つの犯罪について、裁判長の問いに答える形で、「認識が甘かった。近隣に迷惑をかけた」と反省を示した。

 そして検察官意見として「再犯の可能性はあるものの、反省の態度もうかがえる」として、個室マッサージ店を経営していたMG1社に対して罰金200万円、経営者には懲役8カ月、組長には懲役8カ月、わか若頭には懲役1年を求刑した。これに対し、弁護人は本来略式起訴にするのが妥当としながらも3人とも大いに反省の姿勢を見せているとして、寛大な処置をお願いしたい、と述べた。

 で、本日の公判はこれで終わり、裁判長から判決を言い渡す期日が伝えられる段取りかな、と思ったら、なんと裁判長はやおら用意していた判決を申し渡すと宣言し、判決として「MG1社には罰金200万円、経営者には懲役8カ月、組頭には懲役8カ月、若頭には懲役1年」と検事の求刑通りに言い渡したうえ、「経営者と若頭には未決拘留日数の各30日を参入すること」、および「3人に対し、3年間の執行猶予も申し渡す」と宣告した。

 刑事裁判で万引きのような軽犯罪しついて公判と判決を1日で即断して行うような例はこれまで見たことはあるが、こうした重罪に相当するような事犯で、公判と判決が1日で行われるのを見たのは初めてで、裁判長の大英断といえる。とかく日本の裁判は長いと言われてきたが、こんなに早く判決が下される裁判もあるのだ、ということを初めて目にした画期的な裁判といえるのではないだろうか。

 裁判中に弁護人が「執行猶予で被告が釈放された場合‥‥」と口走るようなことが2回ばかりあり、まだ執行猶予がつくと決まったわけではないのに、と違和感を感じた場面があった。まさか、事前に裁判長と打ち合わせていることはないと思われるが、そんな感触を得ていたとしたら、問題ではないだろうか、とも思った。予めの公判時間は2時間とされていたが、判決を申し渡す段階ですでにその2時間は過ぎており、公判中に裁判長がしきりに「時間がないので急ぐように」と弁護、検事双方に促していたのも判決を言い渡す積もりだったからだったのだろう。ひょっとしたら、我が国裁判の歴史の凄い場面に遭遇したのかもしれない、と思ったら、一瞬胸がワクワクとしてきた。これだから、裁判の傍聴はやめられない、と強く思った次第である。

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