松口徹也(Tetsuya Matsuguchi)鹿児島大学大学院教授は米国ダナ・ファーバー癌研究所研究員時代に所内研究セミナー発表や論文でデータ改ざんを行ったことがORI(米国研究公正局)の調査で判明し、米国で自発的に3年間の排除契約を結んだ。現在の松口の所属は鹿児島大学大学院医歯学総合研究科発生発達成育学講座口腔分子生物学分野。
NIHの公式公告によると
『Tetsuya Matsuguchi, M.D., Ph.D., Dana-Farber Cancer Institute: On November 3, 1995, ORI found that Tetsuya Matsuguchi, M.D., Ph.D., formerly a Harvard Medical School Research Fellow at the Dana-Farber Cancer Institute, committed scientific misconduct by intentionally falsifying data by artificially darkening one band each on two autoradiographs in figures that he had prepared for a presentation at an intramural research seminar and by altering three bands on the print of an immunoblot included in Figure 2A of a paper published in the EMBO Journal. This research was supported by a Public Health Service grant.
Dr. Matsuguchi has entered into a Voluntary Exclusion Agreement with ORI in which he has accepted ORI's finding and has agreed to exclude himself voluntarily, for the three year period beginning November 3, 1995:[1]』
最近下川宏明東北大循環器内科教授がアイオワ大時代にデータ改ざんで罰を受けた記事を紹介したが、下川や松口のように非常に悪い研究不正を行っても不正実施国から他国に行けば研究者を続けられ、教授にもなれるのだろう。経歴によると松口は不正発覚後にアラバマ大学医学部研究員になり、名大医学系助教授も務めている。
あくまで私見だが、下川も松口もよく雇われたと思う。日本も米国も医学・歯学系は捏造・改ざん犯でも気にせず教授や准教授として雇うのだろうか。
加藤茂明事件で東大から別機関に移った武山健一らを見ると、不正行為の実行者らは別機関や他国の研究機関に移って研究者を続けようとするのかもしれない。私は処分を受ける前に別機関に移って懲戒処分等を免れるのは責任逃れだと思うが、別機関や他国への脱出は場合によってはそういうこともあるだろう。
現在筑波大学で加藤事件とは別件の柳澤純研究室の論文データ捏造等が本調査されており、村山明子元講師や立石幸代国立環境研究所ポスドク(2012年2月時)は現所属を確認できない。筑波大に質問すると規定で定められている調査期間をなぜか例外的に超過していると回答されたが、加藤事件も含めて不当に長い調査といわざるを得ない。調査の長さを悪用して村山や立石は不利益から逃げるために別機関へ脱出したのだろうか。
まさかとは思うが、不当に長い調査は被疑者が別機関に脱出する時間稼ぎの意味もあるのだろうか。
現在研究不正調査制度の改善を文科省等で検討しているが、逃げ得を許さない制度にする必要がある。
参考
[1]NIHの公式公告、FINDINGS OF SCIENTIFIC MISCONDUCT NIH GUIDE, Volume 24, Number 42, December 8, 1995、写し。
[2]東大分子細胞生物学研究所の助手を務めた人物は北川造史(群馬大教授、経歴)、柳澤純(筑波大教授)、武山健一(ハーバード歯科医学校客員准教授、2012年8月31日で東大分生研准教授を辞職(ここのp17)、経歴、その他)、高田伊知郎(慶應義塾大学医学部助教(有期)、2009~2011年度まで同大医学部講師だったので降格、経歴)、大竹史明(国立医薬品食品衛生研究所研究員、2012年6月30日で東大分生研講師を辞職(ここのp17)、事実上の降格、経歴)など。その他の東大分生研の人事異動(p29)。
フライデーの報道によると予備調査の結果13名が加藤事件の不正行為の実行者で、上昌広(東大医科学研究所特任教授)の記事によると加藤事件は「多くの場合、論文の筆頭著者と、不正を働いた研究者は別人だった。不正の大部分は、当時、助手を務めた一部の研究者によって行われていた[3]」という。
[3]上昌広:"加藤茂明教授のこと" Yahoo ニュース 2013.9.4
どちらも国庫から給与と研究費を支払い続けているわけで、「泥棒に追い銭」を与えている責任は誰かがとらなくてはなりませんね。
当該研究機関の責任の多寡は、彼らが採用される際の手段が正当であったのかが大きなカギとなるでしょう。