世界変動展望

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激震・STAP細胞:/下 ネットの検証、高度化 告発、科学誌査読を補完

2013-02-28 21:08:54 | 社会

2月5日。世界を驚かせたSTAP細胞(刺激惹起(じゃっき)性多能性獲得細胞)の論文発表から1週間後、科学者向けの海外の論文検証サイト「PubPeer(パブピア)」に、1枚の画像が匿名で投稿された。STAP細胞論文に掲載された細胞の遺伝子に関する画像の明るさを変えたもので、切り張りしたような不自然な跡がくっきり浮かんでいた。

 理化学研究所は今月14日に開いた記者会見で、この画像の改ざんを認め、不正について調査を続けると発表した。ノーベル化学賞受賞者の野依(のより)良治理事長は「ITの革新は10年前からは考えられず、良い部分も影の部分も大きくなっている。研究社会もついていけていない」と語り、インターネットに多くの疑惑が広がり、その確認に追われたことへの当惑をにじませた。

 国内では2月13日、匿名のブログでパブピアの指摘が紹介され、他の画像の使い回しの疑いも含めてツイッターなどで一気に情報が広がった。14日には安倍晋三首相の意向で、STAP細胞実験で中心となった小保方(おぼかた)晴子・理研研究ユニットリーダーが政府の総合科学技術会議に出席する予定だったが、急きょキャンセルに。政府側にも疑惑の情報が届いていた。

 研究の不正疑惑を追及する検証サイトやブログは、国内外に複数ある。STAP細胞問題以前からさまざまな不正疑惑が告発され、降圧剤バルサルタンの臨床試験問題も取り上げられた。画像編集ソフトが普及し、不正が起きやすくなった一方、同様のソフトで専門家以外でも簡単に不正をチェックできるようになったことが背景にある。

 国内の研究不正について調べる大学非常勤講師の菊地重秋さん(科学史)によると、ネットでの疑惑の指摘は2000年代後半から活発化。10年にはネットの告発からトルコ国籍の東京大助教(当時)の博士論文に盗用が判明し、博士号が取り消された。「検証サイトは不自然な画像などを見つけるノウハウを蓄積しているとみられ、内部告発も集まる。この流れは続くだろう」と菊地さんは言う。

 STAP細胞論文の疑惑も、ツイッターなどのソーシャルメディアで実名、匿名を問わず分析や議論が飛び交い、「可視化」された。さらに、今回は大々的に発表された分、これまでにないスピードで疑惑の指摘が広がった。新聞など一般メディアは、後追いする形で報道することになった。

 一方、ネットには裏付けのない虚偽の情報もあり、うのみにすると「魔女狩り」になる恐れもある。今月に入って、理研に迅速な対応を求める声明を出した日本分子生物学会の中山敬一副理事長(九州大教授)は「当初は慎重に見ていたが、指摘を確認したところ、改ざんの客観的な証拠が集まり、声明を出すべきだと考えた」と説明する。

 一流科学誌の査読(審査)を経て、世界中の科学者が称賛した論文だったが、科学誌による論文の「品質保証」が最低限でしかないことを再認識させることになった。八代嘉美・京都大特定准教授(科学技術社会論)は言う。「科学誌の査読の限界を、ソーシャルメディアが中核となった世界的なネットワークが補完した。科学から距離がある人たちも議論に加わり、研究者だけが特権的に科学を論じる時代が変わろうとしているのかもしれない」【八田浩輔】

毎日新聞 2014年03月17日 東京朝刊

http://mainichi.jp/shimen/news/20140317ddm002040099000c.html

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