世界変動展望

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白紙・STAP論文:/2 増える疑義に当惑 理研調査委、追い切れず

2013-02-28 19:30:28 | 社会

毎日新聞 2014年07月04日 東京朝刊

理化学研究所のSTAP細胞論文に関する調査委員会メンバーだった岩間厚志・千葉大教授は3月初めごろ、「レター」と呼ばれる2本目の論文の画像に引っかかりを覚えた。「このデータ、おかしくないか?」

 STAP細胞を培養した幹細胞に胎盤になる性質があることを示す画像だった。だが撮影に使った装置の操 作に慣れている岩間氏は、必要な補正がされていないことに気付いた。補正するとデータの示す意味が変わり論文の前提が崩れるのでは−−。そんな危惧が頭を よぎり、委員会で取り上げることにした。

 調査委は、論文発表から約半月後の2月18日に設置された。当初、理研が判定を求めた疑義は3項目だけで、論文撤回に至るような深刻さはなかったという。

 だが、調査を始めてみると違った。小保方(おぼかた)晴子・理研研究ユニットリーダーの実験ノートの記 載はメモ書き程度で、実験データを追えない。小保方氏の研究室には、共用のデスクトップパソコンが1台もなく、私有のノートパソコンに残る論文は上書きが 繰り返され、論文の作成過程が記録されていなかった。ずさんなデータ管理が「不正」の実態を見えにくくしていた。

 岩間氏が気付いた画像の疑義は結局、調査対象にはならなかった。新たな調査項目の不正を判定するには、 基になったデータを一から解析し、小保方氏に改めて聞き取りする必要があった。それらに積極的な協力を得られる保証はなく、早い結論を求める社会の重圧を 感じていた委員に、「あまり時間はかけられない」という認識があったためだ。

 また、調査委の結論は関係者の懲戒処分に直結し、裁判になる可能性もある。不正認定は自然と慎重になっ た。論文の疑義が増え続ける中、調査委の対象は6項目にとどまった。調査委最終報告後の4月15日、理研研究者だけを集めた調査委の報告会では、他の疑義 を取り上げない調査委の姿勢に疑問の声が上がった。石井俊輔委員長(当時)は「訴訟で逆転されると『何をやっていたのか』ということになる」と説明、対象 など絞ったことへの理解を求めた。

 調査委は5月7日、小保方氏の不服申し立てを退け、調査を終えた。「幕引きを急いだ」との批判も出た。 だが、関係者によると、調査終了後に理研理事会で報告した際、委員の一人が調査対象以外の疑義について「自ら調べるべきだ」と要望したという。それに川合 真紀理事は「対処したい」と応じたものの、進言は2カ月近く放置された。

 調査委メンバーには今、全容解明への期待と、対応が後手に回り続ける理研への失望が入り交じる。残され た疑義に関し、新たな調査委が組織される可能性が出てきた。外部識者として調査委員を務めた3人は、いずれも周囲に「もう(調査委員は)引き受けたくな い」と語っている。=つづく