駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

大空祐飛『Live Mojica』

2016年09月13日 | 観劇記/タイトルや・ら・わ行
 ヤマハホール、2016年9月7日19時(初日)。

 綴る「文字」と奏でる「MUSICA(音楽)」を融合した造語をタイトルにしたライブステージ。構成・演出・脚本/北條馨梨、音楽/北條馨梨、竹内大輔、楯直己。

 大空さんは金のラインが入ったアシンメトリーのカッティングの黒のドレスに黒のショートブーツ、ポニーテールに赤い口紅。
 最初の三曲が「My Favorite Things」「You’d Be So Nice To Come Home To」「You And The Night And The Music」というおなじみのもので、気だるく優しく味がある感じで始まり、今の大空さんはこういう音楽をこういうふうに歌い届けたいんだな、というのがよくわかる気がしました。
 ただ、その後に日本語の歌詞の歌になると、大空さんの技量のせいもあるのかもしれませんが(^^;)、ものすごくいいホールだったためかすごく響いてかえって歌詞が聴き取りづらく、ちょっと残念に感じました。英語の歌詞の歌もそうですが、言葉と旋律、みたいなものにこだわるライブだというなら、歌詞を映像に出してもよかったのかもしれません。歌詞そのものでなくても歌の世界観がわかる詩なり、写真なりを映してもおもしろかったと思います。もちろんそういうものなしで、歌と音楽のみでそういうものを観客の脳裏に現せてこそ、なのかもしれませんけれどね。
 でも大好きだという「あしながのサルヴァドール」なんか特に不安定な音程の歌で、私はけっこうヒヤヒヤしてしまい、世界観を堪能するどころではなかった気がしました…やっぱり「こう歌いたい」というイメージに追いついていないところがあるのではなかろうか…まあそこが大空さんの可愛いところでもありますが。
 そしてLive on Act「旅人-タビビト-」という、朗読劇みたいなものを挟むのですが、ひとり芝居としてすごくおもしろかった面がある一方で、中二感がたまらなく恥ずかしく、古臭く感じられる面もあったと私は思いました。設定はともかく、あの映像とか、ベタでわかりやすいかもしれないけどダサくてつらい…通信文とかも文字に対するこだわりを標榜しているにしてはザルい…もうちょっとプロの仕事が見たかったです、私はね。
 元は人間ならアンドロイドではなくサイボーグだろう、とか、生体部分が残っているなら何百年も延命なんかできるはずなくて駄目になるのは充電機能ではなくその生体部分だろう、とか、通信文が日本語なんだからDの本名はサンディではなくサクラとかヒカリとかの日本の名前であるべきなんじゃないの?とか、そういうことが気になっちゃう人間なんですよ私は!
 ライブというのはファンサービスなのかもしれません。ファンで埋まる程度のキャパのハコだろうし、アーティストひとりがいればなんとか構成できるものなのかもしれないし、興行としては収支が立てやすいのかもしれません。くわしくないのでテキトーなこと言っていますが。大空さん自身が今こういうものをやりたい気分なんだろうし、こういう歌での発信もしていきたいのでしょう。
 でもファンが増やせるほどちゃんとしたものになっているかというと疑問に感じたし、だからこれはファンサービスみたいなものとしての興行でもいいんだけれど、やっぱりもっと作りこまれたちゃんとした戯曲のちゃんとした舞台に出ていい芝居をして女優として活躍してもらいたいし、宝塚時代を知らない人にも新たにファンになってもらいたいな、そういう芸能活動をしていってもらいたいな、とちょっと考えさせられてしまったのでした。
 やっぱりいい声で、いいお芝居なんですよね。だからちょっと、こういうものでは、もったいなく感じられてしまったのです。私には、ですが。望みすぎなのかもしれませんが。
 単なるファンとしてむやみやたらと盲目的に活動することは私自身がもうつらくなってきている、というのもあるのかもしれません。現役に贔屓がいて、そっちの方が忙しいし楽しいからね。だから単なる「わりと好きな外部の女優さん」なら、初日にむりくり駆けつけたりむやみにリピートしたりはせず、中日すぎたくらいの舞台がおちついたところあたりでちゃんと一回観る、というので十分な気もしているのです。というか今後そういうふうに観ていきたいので、そういう作品に出てくれるといいなという、まあこれは単なる私のわがままです。
 でも要するに『テアトル・ド・ユウヒ 2』をやってくれたらいいってことですよ。大空さんのイメージをきちんと具現化してくれる力量のある、そして倍増させてくれる才能のある演出家と組んで、しっかりした舞台を構築していただきたいのですよ。そうしたらもっと、世界を広げていける、ファンを増やしていけると思います。私たち古くからのファンももっと新しいものが見せてもらえると思いますしね。
 後半の歌も素敵でしたし、アンコールの選曲も素晴らしかったし、ツアーTシャツとデニムになってマフラータオルを恥ずかしそうに手にしている大空さんは激カワでした。あとバンドメンバーの男性と並んでも誰よりも長身なのもラブリー! 癒やされましたし、楽しかったからこそ、欲が出るのでした。

 年末のお芝居も楽しみにしています。初日は宙組全ツ千秋楽とかぶったので現役を取りました、すみません!



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