「中央区を、子育て日本一の区へ」こども元気クリニック・病児保育室  小児科医 小坂和輝のblog

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福島原発事故放射線被曝時の妊娠婦人・授乳婦人へのヨウ化カリウム投与(甲状腺がん発症予防)について

2011-03-16 09:06:42 | 防災・減災
産婦人科医師の先生方の学術学会から以下の文章が出されています。

 ご参考までに。

****以下、転載*****

福島原子力発電所(福島原発)事故における放射線被曝時の妊娠婦人・授乳婦
人へのヨウ化カリウム投与(甲状腺がん発症予防)について

平成23 年3 月15 日
日本産科婦人科学会

被曝を受けた妊娠婦人ならびに授乳婦人には以下1〜4 を勧める。
1. 被曝線量が計50,000 マイクロシーベルト(1.0 sievert [Sv] は1.0 Gy に相当
する。1,000 マイクロシーベルトは1mGy に相当,文献1)以上の場合、50mg
ヨウ化カリウム錠2 錠(計100mg)を1 回服用する(文献2 では5cGy 以
上で服用とある、すなわち50mGy 以上の被曝で服用する)。ただし、40 歳
以上の妊婦では服用による利益(甲状腺がん発症危険の低減化)が見込めな
い可能性がある。若いほど、甲状腺がん発症危険が高くなり、ヨウ化カリウ
ム服用による利益を受けやすい。またヨウ素過敏症や、造影剤でアナフィラ
キシー反応既往がある妊婦は服用しない。
2. 被曝したが、既に安全な場所(大気の放射能汚染がない)に移動し、安全な
水と食物(放射能汚染がない水と食物)を摂取している場合には上記の1
回服用で十分である。
3. 引き続き、50,000 マイクロシーベルト(例えば、1 時間当たり2,000 マイ
クロシーベルトの線量を25 時間受け続ける)以上の被曝を受けている場合
には、1 日1 回計100mg のヨウ化カリウムを服用する。100mg のヨウ化カ
リウムが有する放射能活性を有したヨウ素取り込み防止効果持続時間は24
時間である。
4. 上記治療を受けた妊娠・授乳婦人の新生児・乳児については甲状腺機能異常
が懸念されるので、新生児においては生後ただちに、乳児においては適切な
時期に甲状腺機能について精査する。TSH, free T4 等を測定し、必要であ
れば甲状腺ホルモン補充療法等を行なう。
5. 妊婦には優先的避難が考慮される(次世代への影響を最小限とするため)。
6. ヨードチンキ、ルゴール液などは内服薬ではなく、またヨウ素含量が少なく
効果がないのでヨウ化カリウムの代替として飲んではならない。わかめ等の
海藻などを食べても十分な効果がない可能性がある(文献3)。

解説
チェルノブイリ原子力発電所事故後の疫学調査において、被曝と甲状腺がん発
症との関連が明らかとなった。ヨウ素は甲状腺ホルモン原料として使用され、
放射能活性を有したヨウ素(今回、その飛散が懸念されている)も安定ヨウ素
(食物などから日常摂取しているヨウ素)と同様に甲状腺に取り込まれ、甲状
腺がん発症危険を増大させる。余分なヨウ素は速やかに体外に排泄されるので、
安定ヨウ素(製剤としてはヨウ化カリウムがある)を服用することにより、放
射能活性を有したヨウ素の甲状腺への取り込み減少を図ることができ、甲状腺
がん予防にも効果的であることが証明されている。しかし、安定ヨウ素の過剰
摂取は胎児(母親が摂取した場合)、新生児、小児においては甲状腺機能低下(脳
の発達に負の影響あり)が副作用として懸念される。したがって、妊娠婦人や
授乳婦人にヨウ化カリウムを投与した場合、新生児、乳児の甲状腺機能につい
て、注視しフォローアップする必要がある。なお、被曝線量の多寡の比較につ
いては「産婦人科ガイドライン—産科編2008」CQ103 を参照されたい。例えば、
腰椎エックス線や尿路造影での最大被曝量は10,000 マイクロシーベルト
(10mGy)であり、腹部CT 検査での最大被曝量は49,000 マイクロシーベルト
(49mGy)と記載されている。なお、これら検査における被曝線量は当該部位
の最大被曝線量であり、甲状腺への被曝はこれらより、極めて低い数字となる。

参考文献
1. Health effects of the Chernobyl accident: an overview. WHO, Fact sheet N
303 (http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs303/en/)
2. Guidance: Potassium iodide as a thyroid blocking agent in radiation
emergencies. U.S. Department of Health and Human Services, Food and
Drug Administration, Center for Drug Evaluation and Research (CDER),
December 2001, Procedural
3. ヨウ素を含む消毒剤などを飲んではいけません--インターネット等に流れて
いる根拠のない情報に注意--。独立行政法人放射線医学総合研究所 平成23
年3 月14 日。 http://www.nirs.go.jp/index.shtml
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