河童メソッド。極度の美化は滅亡をまねく。心にばい菌を。

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OCNから2014/12引越。タイトルや本文が途中で切れているものがあります。

2261- ブルックナー8番、インキネン、日フィル、2017.1.20

2017-01-20 23:39:06 | コンサート

2017年1月20日(金) 7:00pm サントリー

ブルックナー 交響曲第8番ハ短調 ノヴァーク版 18′16′29′25′

ピエタリ・インキネン 指揮 日本フィルハーモニー交響楽団

(elapsed time)
1st mvt. ex6 de5 re5 co2     18′
2nd mvt. sc6 tr4 sc6       16′
3rd mvt. A6 B4 A4 B5 A6 Co4    29′
4th mvt. ex6 de9 re7 co3            25′


頭の主題のテンポが最後まで全部を覆う。この主題のテンポ感は通常の運びと思うがこのまま最後までいく、フィナーレ再現部の3つ目の主題はコーダモードの鳴りになるのでさてどうなるかと耳をすませばここも頭のテンポがそのまま継続、結局コーダもこのまま押し切った。結果、90分におよぶ静止画像のようなもので、ぶれない音作りがひとつのブルックナー像を作り上げたという話ですね。この8番の造形はお見事、静止する巨大構築物が出来上がりました。もう10分かかるようならチェリビダッケの世界にはまり込む様相を呈するかと思いきや、インキネン方針はディテールに光をあてるやり方というよりも、飽くまでも全体バランスに目配り。ブルックナー音楽の進め方を魅せてくれました。
若いインキネンがこのようなブルックナー解釈をするとは驚きですけれども、作品の素晴らしさを今更ながら再認識できた。作品ファーストの立ち向かいですね、これは振るほうも、ましてや聴くほうも立ち止まり一考するに値する。演奏の出来っこ比べをやっていてもしょうがねぇだろうという感じ。

尋常ならざるスーパー・インテンポ。ブルックナーのフォルムが出来ていく。8番は流れていく音楽でもなくて、アメリカ摩天楼ではなくヨーロッパ横広な建築物が構築されていく様を見ているような臨場感。横長の直方体建屋が出来上がりました。スバラシイ創造。
両端ソナタ楽章のブラスセクションをメインにすえた第3主題が律動主体ではなく、スーパー・インテンポで押し切ることにより作品はより強固になる。最高峰の作品と実感。
そして耳を傾けるべきはフィナーレコーダでの主要主題の同時出現があのテンポで出てくる、圧巻です。形式音楽の織りなすアヤ、オーケストラ作品を聴く醍醐味です。

第1楽章。モロに短調ワールドなれども、このオーケストラ独特の柔らかいサウンドが暗さをマイルドにする。聴きやすさ、これが前に出てきます。ささくれ立つことのないブラスの咆哮、1拍目のオタマ四分の一ほど進んだあたりのところに力点があってそこにザッツが揃うような具合で人工味ではない自然な呼吸を感じさせてくれます。また、ソリスティックな出でのホルンはきっちりと出てくる。ちょっと早めの入りと思えるぐらいですけれども、信号ですから、このやりかたは作品に適している。弦の押しはナチュラルでオタマ四分の一めざしてズッシーン、生きた演奏です。それやこれや、インキネンのなせる技とオーケストラの伝統サウンドが綯い交ぜになった、息の合った表現で演奏が進んでいく。
提示部3主題ほぼ同速、そのまま展開部へ、主題絡み合いというよりも順番に陳列されていく雰囲気の中、インテンポで音色変化、ダイナミック濃淡、色々なフレーバーで聴かせてくれる。今流行りのこととは逆のことをしている。こちらが真実だろう。真実の展開部。
同じやり方で再現部も進める。ぶれないテンポで出し入れしてくれる表現の多様性を感じます。まぁ、あっというまにこの楽章は終わる。

スケルツォ楽章。この楽章は次のアダージョ楽章の先取り感が濃厚です。動きはまるで違いますけれどもメロディーラインはよく似ていますね。と言ったあたりの事に気づかせてくれる。チェロやベースが雄弁に語るからかもしれない。これらアンサンブルはふくよかで美しいラインですね。ここでもオーケストラの柔らかい響きが心地よい。

アダージョ楽章。AからBへの推移にテンポ変化は殆どつけない。ブルックナーの滑らかな呼吸、深い呼吸にオケのさらなるビルドアップが望まれますが、緊張の緒が切れないでABABACとつながっていくさまは美しいもの。コーダのあたりでブルックナーもため息が漏れたかもしれない。

フィナーレ楽章。両端楽章はモロにソナタで両方ともに目立つ主題間経過句、速度変化の味付けをせずに色を付けていく。これはインキネンの技かと思います。
悠然としたテンポ、さすがにブラスセクションには堪えるのだろう。第1,3主題での吹奏には息は切れずともぶれは出てきますね。演奏回数を重ねるごとに揃ってくるような話ではあるかと思いますが。
ということで、最初のテンポをコーダまで貫き通したコーダでの全主題ヴェール脱ぎ、悠揚迫らざる音作りで、感動の音圧。

インキネンはパルジファルを先に見据えていると思われます。


オケ配置は対向16型、ホルンとワグナーチューバがユニーク。かみてに2列。聴衆に近い方から1234番、1番アシはさらに聴衆よりに。
この配置だとアサガオは聴衆向きにならないのでプリンシパルさん外側で響きが広がりますね。正解と思います。
おわり

 


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