2017年10月3日(火) 7:00pm 小ホール、武蔵野市民文化会館
モーツァルト ピアノ・ソナタ第18番ニ長調K.576 5-5-4′
ベートーヴェン ピアノ・ソナタ第32番ハ短調op.111 9-17′
Int
シューマン 暁の歌op.133 3+2+2+3-3′
リスト ピアノ・ソナタ ロ短調S.178 30′
(encore)
プーランク 即興曲 ロ短調 2′
ショパン ノクターン第20番嬰ハ短調 遺作 3′
プロコフィエフ ピアノ・ソナタ第7番 第3楽章 4′
ピアノ、藤田真央
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藤田さんはこの3月に一度聴いておりまして今回二度目となります。
2289- 藤田真央 ピアノリサイタル、2017.3.10
前回が3月10日、今回10月3日のリサイタル。
今日のプログラムは本編が4曲、ともに違う作曲家のもの。アンコール3曲も合わせると全部違う作曲家。
お試し版なのかどうかわかりませんけれども、そんなこととは関係なくどれもこれも素晴らしいものでした。特に本編後半2曲、暁の歌、ロ短調、これらには惹かれました。グイッと。
リストのロ短調は形がわからないけれどもファウスト・シンフォニーのように聴き終わったら何やら主題は一個しかなくてそれの使いまわしで一見、無骨なテイスト。でも何故か魅力的。わざと粗野に見せているのではないのかと勘繰ってしまう。
藤田ロ短調は入りが自然でああ得意そうだなと直ぐに思う。下降する音形の流れがとても自然。リストのやや乾いた情感、そこにウェットな水滴をちりばめていく。ときに粒立ちのいい水切りの輪のような模様が浮かんでくる。少し埃っぽい隙間に水を差していくような気配。
同じようなフレーズが全部表情を変えて流れる。素晴らしい表現。振幅も大きい。申し分ないダイナミクス、曲が生き物のように動いている。
曲想の変わり目のギリギリ手前のあたりでテンポを落として、指を全部広げて掌返しのような形、小指一本でささえてなにやらマジシャン風な音が鍵盤から出てくる。あれは何という技ですかね。あの動きで音がナチュラルに奏でられるのだから練習の積み具合も山のようなんだろうねと思っちまう。
ロ短調の巨大さに感服。思えば前半のベトソナ32、激しい演奏でしたけれどもこのリストの前触れだったのかと。ユラユラと揺れ動くようなところがあった32。ざわつきとストレートな推進力。
一服休憩してロ短調の前に、暁の歌。
ベートーヴェンとリストに挟まれたシューマン。ジャストフィット。物憂げな中になだらかな野原を上り下るような呼吸。曲想とプレイが見事に一致にしていて伸縮もいい。何かを考えさせてくれるシューマンの5ピース。新鮮でした。
最初の曲、モーツァルトはこうやって並べて聴くとものすごくデリケートで神経を使う曲なんだろうなあとは思うけれども、これは肩の力を抜いて楽しめましたね。ピアノ・ソナタ全開で、全部聴きたくなった。魅力的なモーツァルト。
アンコール3曲含め、楽しめました。印象的なリサイタルでした。ありがとうございました。
おわり