2016年2月19日(金) 7:00pm サントリー
ブルックナー 交響曲第8番ハ短調WAB108 16′15′26′23′
(ハース版)
ダニエル・バレンボイム 指揮
ベルリン国立歌劇場管弦楽団
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ああ、、なんというか、もう、確信に満ち溢れた音がホールに充満。言葉にならない。声が出ない。
コーダ、ハイテンポにチェンジ、思いっきりハイテンション。重戦車が軽々と前進前進。指揮者のオーラ全開。
チェロとベースは一体化し、強靭、強烈。圧倒するもの凄いサウンドでユラユラと揺れ動くさまは醍醐味どころの話ではない。高弦は水を切る美しさと束ねられた強靭な手応えでブラスをも押し黙らせる勢い。このバランス感覚。そしてウィンドの空中に弧を描くような冷静にして美しいハーモニー。
猛速コーダで全主題を絡めて奏するさまは驚天動地の作品だというのがよく分かった。音色同一のホルン軍がスケルツォのふしを奏でる中、トランペットとトロンボーンが刻み、そのあまりの速度に圧縮して極端に短くなったトランペットの瞬間高音2個はあっという間、コーダ頭の上昇フレーズはここで一気に下降ラインを描きはじめ、執拗な下降フレーズを繰り返しつつ、バレンボイムが足を広げ、両腕を前に垂らしながらブルブル震える。そして少しテンポを緩め圧倒的な沈黙へ。
光り輝くブラスセクション、磨かれたガラスのようにきれいな音で太く強く。ブルックナー狂喜のスペシャル・サウンド。全楽章の圧力がここにきて開放、極致です。
バレンボイムのうなり声は6番のときが一番でかかったが、この日も負けじと、アダージョ楽章後半、クライマックスに向けてうなる、うなる。響きバランス越えの重力マックス、そしてホルンの静寂コーダへ、どれもこれも美しすぎる音楽のため息が次から次へと現れてくる、もう、バレンボイムの神業か。
終楽章もよくうなった。第1、3主題のブラスの咆哮、圧倒的。弦の克明な刻み。核心を感じさせる力強さ。そんな中、ううーう、うなり音楽をさらに燃焼させていくさまは、これまた圧倒的。もう、やっぱり、言葉にならない。
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この日の演奏は、前日の川崎の公演と比べると全体で約5分ほど速くなった。場所の響きとテンポの関係もあると思いますが、1番からずっとサントリーホールで聴いてきたので、この日の8番のほうが落ち着くし、指揮者やオーケストラも公演通してなじんでいると思う。昨日の今日、両方とも凄いもんですが、全集としての一体感ということではサントリー公演。
昨日との違いを感じたのは、即興性とまではいかないかもしれませんが、例えばこのオーケストラと長年リハ等でバレンボイムの出す信号、例えば唇に指をあてた時の静寂指示といったことが、メンバーの身体に皮膚感覚としてしみついていて、リハで無かった指示にも正確に反応できるということ。このようなことはどこのオケでも指揮者でも仕事上の保有スキルとしてあるものだとは思いますけれど、さすがに同曲で前の日と違ったりすると戸惑いの反応あってもおかしくないと思います。
アダージョ楽章でのバレンボイムのコントロールは濃淡を極めていて、前日以上にそうとうディープ。信号を完全に理解して奏するオーケストラの能力が大したもんです。指示が前の日と違っていても、まぁ、聴くほうはハッとするわけですが、何事も当たり前のように反応していく。音楽が生きていることを実感させる瞬間が多くありました。
あまりの素晴らしさに声にもならない。
ありがとうございました。
おわり
メモ
この日はほぼ満員の入り。一般参賀1回あり。パラパラは少しありましたがフライングは無し。強烈なブラボーは静寂のあとで。
8番の保有音源は95個です。