河童メソッド。極度の美化は滅亡をまねく。心にばい菌を。

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2258- スカルラッティ、武満、ベートーヴェン32、ショパン24前、河村尚子、2017.1.13

2017-01-13 23:12:23 | リサイタル

2017年1月13日(金) ヤマハホール、銀座

スカルラッティ ソナタ変ホ長調K.253、ヘ長調K.17、イ短調K.3  5′3′4′
武満徹 雨の樹素描Ⅱ オリヴィエ・メシアンの追憶に  4′
ベートーヴェン ピアノ・ソナタ第32番ハ短調Op.111 9+15′
Int
ショパン 24の前奏曲Op.28  15′24′
(encore)
モーツァルト ピアノ・ソナタ第12番K.332 第2楽章  5′

ピアノ、河村尚子


全体的な印象としては、ショパンが圧倒的な構成感、ベートーヴェンにヘヴィーな幻想感。真逆ありかなという気はしますが、率直な印象です。

プログラム冊子にご本人のメッセージが1枚はさんであって、ごつごつと角の多いベートーヴェンの音楽を遠回しに避けていた、最近はしつこいほどエッジのきいた音楽に共感できるようになった。とある。

30番31番32番、一番重い開始は最後の32番でモロに短調だなぁという感じ、よりによってといってはなんですが、河村さんが選んだのはこの作品。重い開始の響きを一音聴いただけで、もう、立ち向かうか、避けるか、気持ちの選択をどちらかに決めろと言われたような気になる。
エッジがかかったというより神懸かった演奏、ベートーヴェンのソナタの形式が昇華していきついた先の湯気の出るような幻想感。ベートーヴェンと一体化した作品演奏。彼が人前で演奏しいたらこうなっていたかもしれない、望んでいたかもしれない。河村さん弾くベートーヴェンには、そのベートーヴェンを感じた。凄い作曲家だったとあらためて思わせてくれた。パーフェクトな様式の先にあるものがなんなのか、うっすらと感じることが出来た。響きの連鎖、パッセージが次々とつながっていくさまは見事というほかない。そして呼吸。息をしながら山を作りながら音楽が連続していく。スバラシイ。

そして後半のショパン。大変にメリハリのきいたもの、24調が滑らかにつながる、滑らかなんだがきっちりと次の調へ推移する河村さんの腕の切れ味。凄いもんです。新しい調で次が展開されると前のピースを思い出す、このイメージが自然に出てくる。きっと強い構成感を意識したプレイのせいなのだろう。そしてこういったアトモスフィアが、進むにつれて累積されていく。聴き手の気持ちの累積のようなものなのかもしれないが、要はこのような様式の音楽の独特な盛り上がりをジワジワ感じることになる。何か建築物が一つ出来上がったような聴後感。山を越えたような達成感。ベートーヴェンに感じた湯煙の世界とはだいぶ違った。

このホールはピアノを持て余すというか、大きな響きを芯をもってとらえられないフヤフヤ感を少し感じる(2階)。傾向としてはサントリーホールと似ている気がする。ヤマハのほうがキャパが無い分、マイナス印象も少ないというところはある。河村さんは冴えた技巧をことさら前面に出すことがまるで無い。自然です。鋭角的な響きが山谷を作るように蛇腹につながって音楽が出来上がっていくさまは圧倒的です。響きが拡散的になるホールだと思いますが、河村さんのコンセントレーションに、そのようなことも忘れました。
すばらしいリサイタル、ありがとうございました。
おわり




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